第57話 ショッピング中は肩身が狭い
「着いたよ。ここが日本最大のショッピングモール、アンプラー!」
「おぉ〜!デケェ!!」
騎士団本部から1時間程歩いた先にあったのは、元の時代に何度か目にした巨大ショッピングモールだった。
見たところとんでもなく高く、パッと見15階以上あるようだった。代わりに横幅はそこそこのようで、ビルに近い形状をしていた。
「俺の知ってるショッピングモールって、横幅がめちゃ長い印象だったんだけど……ここは高さ全振りなんだな」
「うん。横幅広げすぎると『ソルクティス』に巻き込まれるリスクが大きくなるから、あんまり広げられないんだ」
「あぁ〜、なるほど」
黎翔は、説明を聞いて深く納得した。
というのも、ショッピングモールのビルを中心として、足元に巨大な魔法陣が描かれていたのだ。
それの正体が何か分からなかったが……恐らく『ソルクティス』対策なのだろうと、今の説明を聞いて予想できた。
「大変なんだな、建物一つ建てんのも」
「まー昔よりかは考えること多いだろうね。その代わり、魔法があるから建てること自体は案外簡単なんだけど」
「便利なもんだな……」
この時代には『ソルクティス』という災禍だけでなく、『魔法』という文明を超越した未知の現象も存在する、実にいいバランスだな、と若干感心した。
「寮から大体20分ってとこかな。何か欲しいものがあったらここに買いに来てね」
「りょーかい」
それだけ説明すると、御織は満足したように頷いた。そして、妃と目線を交わした。
「さーて!そんじゃ早速買い物しちゃいましょー!」
「黎翔くんを案内するついでね、ついで」
御織と妃はノリノリでショッピングモールの中へと入って行った。
「やっぱりそっちがメインになってんじゃァねェーか」
「そんな気はしたけどな」
対して男二人組は、呆れたようにそう呟きながらついて行った。
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「わぁ〜っ!見てよ妃、このスカートすっごい可愛い!」
「ホントだ。こういうフリルついたスカートは御織によく似合うと思うよ」
「でしょ〜!?でも、妃も意外と似合うと思うよ?こういう可愛いの!」
「私には似合わないよ。それに、ちょっと恥ずかしいし……」
モール内を歩いて回りながら、何か目につけばすぐに足を止めて二人で吟味する。
それを繰り返すこと一時間……ようやく7階までたどり着いていた。
「な、なァ……そろそろ休憩しねェーか?」
ここまで買った様々な衣類のうち、妃のものを全て持っている紀章が、苦しげな声でそう2人に伝える。
「ん〜、まだ大丈夫かな」
「11時はお昼には早いよね」
そんな紀章の状況など知らんぷり、白白しく休憩の申し出を断った。
「黎翔はまだ大丈夫だもんね?」
「おぅ。まだ一時間しか歩いてないからな」
紀章の隣で御織の荷物持ちを担当している黎翔は、涼しい顔でそう言った。
ちなみに、荷物の量は黎翔の方が遥かに多い。二人とも比較的金使いは荒いが、御織は妃よりも更に買う判断が早かった。気に入ったものをポンポン買うせいで、黎翔の持つ荷物も凄いことになっていたのだ。
「……おめェーすげェーな」
「そうか?」
紀章は、紀章の2倍くらいの荷物を持たされ、荷物に埋もれている黎翔に対し、純粋な尊敬の眼差しを向けた。そんなことは露知らず、黎翔は涼しい顔をしているが。
「紀章くんも、もちろん大丈夫だもんね?」
「………ッ!!」
妃は、苦しそうな紀章に向けて笑顔でそう言った。
「お……おォ、当然だぜ!」
それを受けて、紀章はそう強がりを言った。
好きな人の前でカッコつけるというあまりにも分かりやすい態度に、黎翔と御織は吹き出しそうになった。
「うん。それじゃ、進もうか」
「だね〜。昼も近いしテンポあげてこっか」
「あ、ちょォ待っ……」
辛そうな紀章を無視して、2人は更に歩を早めた。
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「大丈夫か?紀章」
「……おォ、お前のお陰でなァ」
ベンチに座り、大量の荷物を傍に置いて、ぐったりと脱力する紀章と話す。
スピードを上げた2人は、歩く速度ではなく購入速度も上げてきた。ものすごいスピードで荷物が増えていき、紀章の限界はすぐに来た。
そのため、途中で紀章の(というか、妃の)荷物の一部を黎翔が代わりに持っていた。それでも尚黎翔より紀章の方がぐったりしているが。
御織も妃も紀章に対する遠慮が一ミリも無く、
『き、休憩をォ……』
と何度懇願しようとも聞き入れて貰えなかった。
『な、なぁ。さすがに休憩しねぇか?俺も疲れてきたし』
という黎翔の発言によって、2人はようやく黎翔と紀章を解放してくれた。そうでもしなければ、きっとあの2人はノンストップで歩き続けていただろう。
ちなみに今は、ベンチの前にある店で試着しながら二人で服を見ている。一体何着買う気なの?とか、こんなに買って着るのか?とか疑問は尽きないが、黎翔と紀章は好きな人に逆らえないタイプなため、大人しく付き従っていた。
「すげェーなお前。正直見くびってたぜェ……」
「肉体労働は俺の専門分野なんでな」
太い腕を見せびらかしながら、自慢げに言う。
「でも、お前も割とパワーある方だろ?昨日戦った時も俺より強かったし」
昨日の夕方の戦闘を思い出しながら質問する。
あの手合わせの感じから、紀章はどちらかというとパワー型だと予想していた。魔法を使わず近接戦を行い、しかも黎翔を上回る戦闘能力を披露した。一撃も中々重かったため、力はある方だと思っていたのだが……
今目の前にいる男は、明らかに黎翔より非力だった。そこに違和感を感じたのだ。
「そりゃァー昨日はマナ使って身体強化してたからだァ。魔力操作ッつって、体内のマナを全身に絶え間なく巡らせることでマナのエネルギーを細胞に取り込ませて無理やり身体能力を高めんだァ。俺ァ元々『POW』の値が低いから、見た目より力が弱ェーンだ。それをカバーするための魔力操作だからなァ」
「そ、そんなこと出来んのか……」
複雑な説明で途中からよく分からなかった黎翔だが、雰囲気で理解した気になっておいた。
「ンなもん基本技術だッつーの。出来なきゃァ話ンなんねェーぜ?まさか知らなかったのかァ?」
訝しむような目線で見られ、黎翔はようやく思い出した。
(やべ、俺が召喚者なの隠さなきゃダメなんだった……!)
動揺を必死に押し隠しつつ、取り繕う。
「ま、まぁ俺はまだ入学してないからな。仕方ない」
「いや、こンくらい義務教育で習うけどなァ?」
「い……ん、いや、俺不登校気味だったから、知らなかったんだよ、ハハハ」
「ふゥーん」
詰まり詰まりの言葉を吐く黎翔を、紀章は明らかに怪しんできていた。そそくさと視線を逸らしつつ、身体を縮める。
「なァ」
「はい」
「一個聞いてもいいかァ?」
「ダメです」
既に紀章に正体がバレている気しかしないが、それでも黎翔は抵抗しようとする。
「……おめェーよォ───」
「あー、んんっ!うぉっほん!!」
「うるせェーな急にィ!」
もうどうにも出来ず、ひたすら言葉を遮る。
(やばいやばいやばいやばい……!絶対バレてるじゃねーかこれ!!どうすんだよ!殺されるかもしれねーぞ!?)
黎翔にはもうどうにも出来ないラインまで来たため、目の前で服を見ている御織に必死に目線を送って助けを求める。
すると、御織はその熱烈な視線にすぐに気づき、黎翔の方を見た。
(!きた!!)
助けて───必死の口パクと目線を送り、メッセージを伝える。が、
「ふふっ」
それは何も伝わっておらず、御織はにこりと微笑みながら手を振ってきた。
(可愛い!けどそうじゃない……!!)
普段なら嬉しいファンサービスなのだが、この状況下では受け取っても何も起きることはない。
複雑な心境で御織を眺める黎翔の肩に、不意にポンと手が置かれた。驚きで黎翔の身体がビクリと跳ねる。
その大きな手の主は、当然……
「いい加減認めろ。おめェー、召喚者だろ?」
「………っ!!」
紀章のものだった。
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蒼井黎翔 ID: 137438691328
Lv.17
POW:1557+50 DEX:1232 DEF:1068
INT:0 MP:0 RES:0 Total:3858
職業:狩猟者ハンター 階級:特異
スキル:『狩人の心得』パッシブ
『狩猟者の勘』発動可能
『野性』パッシブ
『獣殺一閃』発動可能
ステータス補正:物理特化
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