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黒流星のハンター〜魔法がありふれた世界で、召喚者は石を投げる〜  作者: 鮫野鯨
第一章 召喚、異世界最初の日
38/63

第38話 悪戦苦闘の先で

注意:この話では、グロ描写がいくつかあります。

苦手な方・15歳未満の方はそっと閉じてあげてください。

「『ステータスウィンドウ・オープン』!!」


 迫り来る『ボス』を視界に入れながら、迷わず出現した青い板を左手で操作する。


(アイツを殺すには.....今持ってる『スキル』だけじゃ勝てねぇ。『あのスキル』がいる)


 瞬時に『スキルツリー』の中段、他のパネルより一際大きく目立つ部分をタップする。すると、


──────────────────

スキル:獣殺一閃.....相手に与えるダメージが100倍になる。発動条件:遠距離攻撃

オートスキル 消費MP:0 CT:60s


獲得しますか?

   はい(SP消費1)     いいえ

──────────────────────


 というメッセージが表示された。


(当然、『はい』だ)


 悩まずに選択する。


(他に取得できるスキルはステータスボーナスばっかりだが.....コイツなら、或いは.....!!)


 そのスキルは、さっき他のスキルを取得した時に内容を確認していた。

 ただし、遠距離攻撃が必須な点、地道に削れば倒せる点を踏まえ、取る必要が無いと判断していた。だから、SP温存のために取得していなかった。


(だが.....今回の場合は、コイツが無いと絶対勝てねぇからな。はぁ、ホントは貯めたかったんだけどなぁ.....)


 走ってくる『ボス』を恨めしく思い、睨みつける。


「ギギャァァァッ!!」


 『ボス』は『ボス』で、相当イラついているようだった。全力で叫びながら突っ込んでくる。


(さぁ、やるぞ.....!!)


 黎翔が『ステータスウィンドウ』をいじり始めてから、約3秒。逃走を試みて振り向いてから、約4秒。

 絶望から一転、一瞬の間に戦闘準備を整え.....

 目の前まで近づいてきた『ボス』に意識を集中し始めた。


「ギャギャッ!」


 まずは、『ボス』が右手を振り下ろす。


(何度見たか分からん攻撃だぜ!)


 攻撃が当たる直前に、当然のようにしゃがんで回避する。『ボス』の広い懐のうちに入った。

 更に.....


(コイツはバカだがアホじゃねぇ。考えて適応する頭は持ってる。それを踏まえれば.....)


 一瞬の逡巡の後、すぐさま飛び前転を左手一本で行い、『ボス』の懐から離れる。直後.....


 ズシャァァァン!!


「ギッ.....!!」

「っし、予想通り.....!!」


 元々黎翔がいた場所に、巨大な左腕が振り下ろされていた。

 空振りした左腕は、コンクリートの地面を抉り、大きなひび割れが広がる。細かく砕けたコンクリートの欠片が飛び散る。


(今回は綺麗に対応できた。おかげで攻撃できそうだな)


 自身の判断の正確さに少しだけ安心しつつ、即座に次の行動へ移る。


(『自己再生』がある以上、チマチマ削るのは悪手。一撃で殺すしかない。そのためには.....遠距離攻撃で、かつ右目の弱点に当てなきゃいけないだろう)


 そう判断した黎翔は、辺りをキョロキョロ見渡す。


(.....!これか!)


 そして、発見する。

 足元に飛んできた.....『ボス』が破壊した、コンクリートの欠片を。


 しゃがんで、即座に左手で持つ。


(痛っ.....!!)


 その瞬間、左手に激痛が走る。

 先の雑魚戦でモンスターを全力で殴ったせいで、黎翔の左手はボロボロだった。手の平は比較的傷が少ないが、手の甲は皮が破けて骨が剥き出しになっている。


 だから、握った途端に一気に痛みが来た。力が抜け、落としそうになる。


(ダメだ、我慢しろ.....!!)


 落とさないよう、少し力を緩めて手に持つ。そして、左腕を振り上げ.....


「喰らええええぇぇぇぇぇぇっ!!」


 全力で振り下ろし、『ボス』の右目めがけて投げる。


「ッ!?」


 『ボス』は、突然のその攻撃に少し驚いたような反応を示した。完全に出遅れていた。

 だが.....怪我でまともに投げられなかったその欠片は、大した速度も威力も出ていなかった。


 『ボス』は、右腕で右目を庇うようにガードする。本来なら間に合わないはずのタイミングだったのに.....


 ガキッ!


 それは、いとも容易く防がれた。


「.....っ!チィッ!」

「ギィ?ギャギャッ!」


 『ボス』は、それを受けてバカにするように嗤った。黎翔も舌打ちをし、不満を示す。


「ギャギャッ!」


 再び『ボス』が距離を詰めようと走り出す。今回はそこまで距離を取っていなかったため、すぐに詰められるだろう。

 それに対し、黎翔は.....


 再び、即座に左腕を振り上げた。

 その手には.....さっき投げたはずのコンクリートの破片が、弱々しく握られていた。


「ッ!?」


 『ボス』もかなり驚いている様子だった。さっきよりも更に焦っている。


(さっき2つ拾ったんだよな.....!1個隠し持っといて正解だったぜ!)


 黎翔は、防がれる、または一撃で倒せない可能性を考慮し、左手の小指でもう1つ破片を確保していた。そして、連続で投げる準備をしていたのだ。


 ニヤリと笑いながら、驚く『ボス』を見る。


(さっきは立ち止まってたから対応できたかもしれねぇ───が、その速度で近づいてきてるお前に、これを防げるかなぁ!?)


 猛スピードで近づいてきていた『ボス』に、再び破片をぶん投げる。


 速度的に今回は防御が間に合わない、そう確信していた。

 そして───


 ガンッ!!


「ギャッ!」


 予想通り、しっかり右目に命中した。


(よし、これでさすがに倒せたはず.....!!)


 そう思い、『ボス』の『ステータスウィンドウ』のHPを見る。

 その数値は.....


 『1842/2006』となっていた。


(はぁ!?全然減ってねぇじゃねぇか!!)


 驚き目を見開き、硬直する。


(なんで───)


 と原因を探るため思考しようとする。

 が、それはすぐに中断された。


「グギョォォォッ!!」

「っ!クソ.....!」


 『ボス』が、いつの間にか距離を詰めてきていた。もう既に目の前まで来ている。


(今は戦いに集中するしか.....!!)


 額を伝う汗を拭う間もなく、迫り来る拳に全神経を向ける。


(まずは.....頭!)


 豪速の拳を、再びその場でしゃがんで回避する。


(次はまた飛び前転で距離を取る)


 バッと前に飛び込む。

 その背中で、ビュッという音を聞く。それで左腕が空振ったのを理解し───


(っ!?ヤバい、次が来る!)


 嫌な予感を感じ、地面についていた左腕を突っ張って身体を横に流す。すると、


 ビュゴォッ!


「.....っ!!」

「グギギッ!!」


 黎翔の左耳を掠めるように、『ボス』の右腕が飛んできた。電撃が走ったかのように高速で流れた痛みに、思わず歯を食いしばる。


 何事かと『ボス』を見ると、またも左腕を振り上げていた。


(コイツ.....俺が何回も回避することを学習したんだ!だから追撃を.....!)


 一瞬考察をしたのち、すぐさま『ボス』の両手に全神経を向ける。


(右手、左手、左手、右フック、左ストレート.....!)


 直感的に、『ボス』の狙いを読む。


 ビュッビュッビュッ、チリッ

 ビュン、バッ!


 それに合わせて、身体を右に左にズラし、踊るように回避する。

 スレスレで回避しているものの、うち2発が黎翔の頬を掠める。


 少し掠っただけなのに、その切り傷から血が溢れる。肉が斬られた激痛が脳に届く。


(クソ、反撃の隙がない.....!!)


 今までの『ボス』の攻撃と違い、全身全霊の一撃ではない分、速度は落ちている。黎翔が連続回避できているのがその証拠だ。


 代わりに、隙間がない。攻撃と攻撃が全て繋がり、息をつく暇もない。


(次は、次はどこに来る.....!!)


 だんだん余裕が無くなる。次は回避できるのか?次は当たってしまうのではないか?と不安が湧き、集中力が落ちる。


 それを察したように、『ボス』は、


「ギャギャッ!!」


 邪悪に、嗤う。


(......っ!!クソっ!!)


 それに釣られ、ほんの一瞬苛立ちを感じた。その苛立ちは、僅かで、致命的な隙を生む。


 バキッ!


「っ!?」


 突然、『ボス』が右足で黎翔の足を払う。

 両手にしか集中してなかった黎翔は見事に引っかかり、ぐわんと頭から落ちる。


「ギャギャーッ!」

「っ!!」


 そうして、体勢が崩れた黎翔に.....

 『ボス』が、全力で右腕を振るう。


(死ぬ!!!!!)


 脳内に鳴り響くアラートは、本能的に黎翔の身体を動かせた。


 即座に、両足を『ボス』の右足目掛けて伸ばす。

 それは完全に黎翔の預かり知らぬ所で起きた思考バグであり、なんの意図も込められていない行動。


 その結果───


 バキバキッ!


「あ゛っ......」


 真っ先に、両足が折れる音がした。絶望的な痛みが響いた。

 その上、『ボス』の右拳の勢いは留まることを知らず.....黎翔の腹に向かって伸びる。


 そして.....


 ドゴッ───

 ズガァァァァァァン!!


「げぼっ...........」


 その一撃で、黎翔は100mほど吹き飛ばされ.....

 再び、近くの瓦礫に激突した。


──────────────────

蒼井黎翔 ID: 137438691328

Lv.7

POW:757+50 DEX:632 DEF:468

INT:0 MP:0 RES:0  Total:1858


職業:狩猟者ハンター 階級:特異

スキル:『狩人の心得』パッシブ

『狩猟者の勘』アクティブ化 550s

『野性』パッシブ

『獣殺一閃』発動可能


ステータス補正:物理特化

──────────────────

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