第38話 悪戦苦闘の先で
注意:この話では、グロ描写がいくつかあります。
苦手な方・15歳未満の方はそっと閉じてあげてください。
「『ステータスウィンドウ・オープン』!!」
迫り来る『ボス』を視界に入れながら、迷わず出現した青い板を左手で操作する。
(アイツを殺すには.....今持ってる『スキル』だけじゃ勝てねぇ。『あのスキル』がいる)
瞬時に『スキルツリー』の中段、他のパネルより一際大きく目立つ部分をタップする。すると、
──────────────────
スキル:獣殺一閃.....相手に与えるダメージが100倍になる。発動条件:遠距離攻撃
オートスキル 消費MP:0 CT:60s
獲得しますか?
はい(SP消費1) いいえ
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というメッセージが表示された。
(当然、『はい』だ)
悩まずに選択する。
(他に取得できるスキルはステータスボーナスばっかりだが.....コイツなら、或いは.....!!)
そのスキルは、さっき他のスキルを取得した時に内容を確認していた。
ただし、遠距離攻撃が必須な点、地道に削れば倒せる点を踏まえ、取る必要が無いと判断していた。だから、SP温存のために取得していなかった。
(だが.....今回の場合は、コイツが無いと絶対勝てねぇからな。はぁ、ホントは貯めたかったんだけどなぁ.....)
走ってくる『ボス』を恨めしく思い、睨みつける。
「ギギャァァァッ!!」
『ボス』は『ボス』で、相当イラついているようだった。全力で叫びながら突っ込んでくる。
(さぁ、やるぞ.....!!)
黎翔が『ステータスウィンドウ』をいじり始めてから、約3秒。逃走を試みて振り向いてから、約4秒。
絶望から一転、一瞬の間に戦闘準備を整え.....
目の前まで近づいてきた『ボス』に意識を集中し始めた。
「ギャギャッ!」
まずは、『ボス』が右手を振り下ろす。
(何度見たか分からん攻撃だぜ!)
攻撃が当たる直前に、当然のようにしゃがんで回避する。『ボス』の広い懐のうちに入った。
更に.....
(コイツはバカだがアホじゃねぇ。考えて適応する頭は持ってる。それを踏まえれば.....)
一瞬の逡巡の後、すぐさま飛び前転を左手一本で行い、『ボス』の懐から離れる。直後.....
ズシャァァァン!!
「ギッ.....!!」
「っし、予想通り.....!!」
元々黎翔がいた場所に、巨大な左腕が振り下ろされていた。
空振りした左腕は、コンクリートの地面を抉り、大きなひび割れが広がる。細かく砕けたコンクリートの欠片が飛び散る。
(今回は綺麗に対応できた。おかげで攻撃できそうだな)
自身の判断の正確さに少しだけ安心しつつ、即座に次の行動へ移る。
(『自己再生』がある以上、チマチマ削るのは悪手。一撃で殺すしかない。そのためには.....遠距離攻撃で、かつ右目の弱点に当てなきゃいけないだろう)
そう判断した黎翔は、辺りをキョロキョロ見渡す。
(.....!これか!)
そして、発見する。
足元に飛んできた.....『ボス』が破壊した、コンクリートの欠片を。
しゃがんで、即座に左手で持つ。
(痛っ.....!!)
その瞬間、左手に激痛が走る。
先の雑魚戦でモンスターを全力で殴ったせいで、黎翔の左手はボロボロだった。手の平は比較的傷が少ないが、手の甲は皮が破けて骨が剥き出しになっている。
だから、握った途端に一気に痛みが来た。力が抜け、落としそうになる。
(ダメだ、我慢しろ.....!!)
落とさないよう、少し力を緩めて手に持つ。そして、左腕を振り上げ.....
「喰らええええぇぇぇぇぇぇっ!!」
全力で振り下ろし、『ボス』の右目めがけて投げる。
「ッ!?」
『ボス』は、突然のその攻撃に少し驚いたような反応を示した。完全に出遅れていた。
だが.....怪我でまともに投げられなかったその欠片は、大した速度も威力も出ていなかった。
『ボス』は、右腕で右目を庇うようにガードする。本来なら間に合わないはずのタイミングだったのに.....
ガキッ!
それは、いとも容易く防がれた。
「.....っ!チィッ!」
「ギィ?ギャギャッ!」
『ボス』は、それを受けてバカにするように嗤った。黎翔も舌打ちをし、不満を示す。
「ギャギャッ!」
再び『ボス』が距離を詰めようと走り出す。今回はそこまで距離を取っていなかったため、すぐに詰められるだろう。
それに対し、黎翔は.....
再び、即座に左腕を振り上げた。
その手には.....さっき投げたはずのコンクリートの破片が、弱々しく握られていた。
「ッ!?」
『ボス』もかなり驚いている様子だった。さっきよりも更に焦っている。
(さっき2つ拾ったんだよな.....!1個隠し持っといて正解だったぜ!)
黎翔は、防がれる、または一撃で倒せない可能性を考慮し、左手の小指でもう1つ破片を確保していた。そして、連続で投げる準備をしていたのだ。
ニヤリと笑いながら、驚く『ボス』を見る。
(さっきは立ち止まってたから対応できたかもしれねぇ───が、その速度で近づいてきてるお前に、これを防げるかなぁ!?)
猛スピードで近づいてきていた『ボス』に、再び破片をぶん投げる。
速度的に今回は防御が間に合わない、そう確信していた。
そして───
ガンッ!!
「ギャッ!」
予想通り、しっかり右目に命中した。
(よし、これでさすがに倒せたはず.....!!)
そう思い、『ボス』の『ステータスウィンドウ』のHPを見る。
その数値は.....
『1842/2006』となっていた。
(はぁ!?全然減ってねぇじゃねぇか!!)
驚き目を見開き、硬直する。
(なんで───)
と原因を探るため思考しようとする。
が、それはすぐに中断された。
「グギョォォォッ!!」
「っ!クソ.....!」
『ボス』が、いつの間にか距離を詰めてきていた。もう既に目の前まで来ている。
(今は戦いに集中するしか.....!!)
額を伝う汗を拭う間もなく、迫り来る拳に全神経を向ける。
(まずは.....頭!)
豪速の拳を、再びその場でしゃがんで回避する。
(次はまた飛び前転で距離を取る)
バッと前に飛び込む。
その背中で、ビュッという音を聞く。それで左腕が空振ったのを理解し───
(っ!?ヤバい、次が来る!)
嫌な予感を感じ、地面についていた左腕を突っ張って身体を横に流す。すると、
ビュゴォッ!
「.....っ!!」
「グギギッ!!」
黎翔の左耳を掠めるように、『ボス』の右腕が飛んできた。電撃が走ったかのように高速で流れた痛みに、思わず歯を食いしばる。
何事かと『ボス』を見ると、またも左腕を振り上げていた。
(コイツ.....俺が何回も回避することを学習したんだ!だから追撃を.....!)
一瞬考察をしたのち、すぐさま『ボス』の両手に全神経を向ける。
(右手、左手、左手、右フック、左ストレート.....!)
直感的に、『ボス』の狙いを読む。
ビュッビュッビュッ、チリッ
ビュン、バッ!
それに合わせて、身体を右に左にズラし、踊るように回避する。
スレスレで回避しているものの、うち2発が黎翔の頬を掠める。
少し掠っただけなのに、その切り傷から血が溢れる。肉が斬られた激痛が脳に届く。
(クソ、反撃の隙がない.....!!)
今までの『ボス』の攻撃と違い、全身全霊の一撃ではない分、速度は落ちている。黎翔が連続回避できているのがその証拠だ。
代わりに、隙間がない。攻撃と攻撃が全て繋がり、息をつく暇もない。
(次は、次はどこに来る.....!!)
だんだん余裕が無くなる。次は回避できるのか?次は当たってしまうのではないか?と不安が湧き、集中力が落ちる。
それを察したように、『ボス』は、
「ギャギャッ!!」
邪悪に、嗤う。
(......っ!!クソっ!!)
それに釣られ、ほんの一瞬苛立ちを感じた。その苛立ちは、僅かで、致命的な隙を生む。
バキッ!
「っ!?」
突然、『ボス』が右足で黎翔の足を払う。
両手にしか集中してなかった黎翔は見事に引っかかり、ぐわんと頭から落ちる。
「ギャギャーッ!」
「っ!!」
そうして、体勢が崩れた黎翔に.....
『ボス』が、全力で右腕を振るう。
(死ぬ!!!!!)
脳内に鳴り響くアラートは、本能的に黎翔の身体を動かせた。
即座に、両足を『ボス』の右足目掛けて伸ばす。
それは完全に黎翔の預かり知らぬ所で起きた思考バグであり、なんの意図も込められていない行動。
その結果───
バキバキッ!
「あ゛っ......」
真っ先に、両足が折れる音がした。絶望的な痛みが響いた。
その上、『ボス』の右拳の勢いは留まることを知らず.....黎翔の腹に向かって伸びる。
そして.....
ドゴッ───
ズガァァァァァァン!!
「げぼっ...........」
その一撃で、黎翔は100mほど吹き飛ばされ.....
再び、近くの瓦礫に激突した。
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蒼井黎翔 ID: 137438691328
Lv.7
POW:757+50 DEX:632 DEF:468
INT:0 MP:0 RES:0 Total:1858
職業:狩猟者ハンター 階級:特異
スキル:『狩人の心得』パッシブ
『狩猟者の勘』アクティブ化 550s
『野性』パッシブ
『獣殺一閃』発動可能
ステータス補正:物理特化
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