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32 飢えている

一日遅れごめんね。


「遂に来たんですね。ウォーレアと戦う時が」


泥鱗魚と戦った日から五日たった土曜日、新しい装備に身を包んだリンが覚悟を決めた顔で僕の隣に立ち、そう言った。


「今のリンは初めて会った時とはまるで別人だね」

「……五日間あれほどハードな修行をしたらこうもなりますよ」

「ハード?普通じゃないかな?」


闘気をもっと使えるようになるように腰まで泥に埋めてフェルリアを使って魔法を大量に撃ち込んだり、捕まったら全力で殴ると言って鬼ごっこしたりしたくらいだけど。


「まぁおかげでかなり強くなれましたし進化もできたので感謝はしてますけど……(もう少し優しい訓練がよかった)」

「今何か言った?」

「何も言ってませんよ」

「そっかそれじゃあまずはウォーレアを探そうか」

「そうですね。まずは見つけ出さないと戦えませんしね」


僕とリンは水の中から襲いかかってくるモンスターを警戒しつつ湿地帯を歩き回ってウォーレアを探す。


「あっ、そういえば師匠!NPCからウォーレアの情報をいくつか手に入れられたので話しましょうか?」

「どんなの?」

「わかりました!ウォーレアは元々は湿地帯を西にずっと進んでいくとある火山の地下に生息している蜥蜴(とかげ)型モンスターの特殊個体らしいです。湿地帯のどこかに火山と繋がる通路があるらしくてそこから迷い込んで来たと推測されているらしいです」

「火山から来たのか。環境結構違うと思うけどよく生きられるな」

「その問題ですが特殊個体っていうのが関係しているみたいです。どうやら環境への異常な適応能力を持っているらしくて湿地帯に適応した結果、生き続けることができ戦闘能力も向上して現在多くのプレイヤーを返り討ちにしている無敗の化け物となっているみたいです」


無敗の化け物と呼ばれていると言うことはまだ誰も倒せていないのか。


「そんなに強いんだ。わくわくするね」

「あとウォーレアは元々はガスを使うモンスターで毒ガスや睡眠ガスといった危険なガスを体から放出するらしいので状態異常対策は必須と……」

「……どうやら来たみたいだね」


リンと話していると空気が変わった。先程まで水の中に山ほどあったモンスターの気配が急に散っていき、一匹たりともいなくなった。


そして気付けば僕とリンの周りは白い霧に覆われていた。


「この霧はウォーレアとの戦闘中に他のプレイヤーの参戦や妨害を防ぐために発生する特殊なフィールドみたいですね」

「そうみたいだね」


僕も霧に【鑑定】を使うと同じようなことがわかった。


そして僕とリンが向かっていた方向の霧の奥からべちゃべちゃと泥を踏む音がし、霧の中からゆっくりとウォーレアが姿を表した。


現実世界の蜥蜴の頭の形にそっくりだが出目金のようにぎょろっと両目が飛び出ている奇怪な顔、四足歩行で鋭い爪が付いている四本の指に泳げるのか大きな水掻きがある大きな手、火山の火口みたいな穴がいくつもありガスを噴出している背中、そして途中で二つに分かれている、片方は先端が黒くハンマーのような形状、もう片方は鋭く磨かれている銀色の刀剣のような形状をしている尻尾。


全長は十六メートルくらいだろうか。首が長く頭が高いところにあり、僕とリンをその飛び出た両目で見下ろしている。


「湿地帯の王みたいな感じだね。その頭、落としてあげる」


僕はフェルリアを抜くと自分が想像したままの性能を持ったユニークスキルを発動させる。


「【飢えたる獣】」


――――――


ユニークスキル【飢えたる獣】


運営が僕の要望を聞いて作り出した僕だけのユニークスキル。その効果は二つあり、スキル発動時にどちらかを選んで使うという二つのスキルを一つにして使っているような特殊な構造をしたスキルになっている。


今回僕が使ったのは、格上との差が埋められるスキルが欲しいという要望を叶えるために運営が作ったと思われる【全てを噛みちぎる獣】という名前が付けられた効果。


この効果は至って単純。僕のステータスを限度はあるが相手と同等までに発動中は引き上げるというぶっ壊れ効果。しかしそれと同時に猛烈な飢餓感が付与され、相手を喰らい尽くすべき獲物としか思えなくなるという効果がセットになっている。


そのため、相手を冷静に分析するということが出来なくなると獲得した時に効果を【鑑定】して考えたが、そんなことはどうでもよかった。獣の前に全てはねじ伏せられるのだから。


――――――


その瞬間、僕のステータスが猛烈な飢餓感と共に大幅に引き上げられた。


「アハッ!」


湧き上がる力に思わず笑いが溢れる。


「満たして。満たして。戦って!殺して!喰らって!満たす!」

「し、師匠?テンション上がっているんですか?様子が少し変ですよ?」

「喰らい尽くしてやる」


目の前のウォーレアへの認識が圧倒的な格上から喰らい尽くすべき獲物へ自然と変わっていることに僕は気付かなかった。


僕は舌なめずりをするとウォーレアへ斬りかかった。


「アハッ!」

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