会談 3
楓がこの会談に出席している全員に向けて煽ってしまったため、一度は落ち着きかけていた空気がまた凍りついてしまった。
先ほどの楓の煽りにはルークやシェリンでさえも反応していたので、今や楓の味方はいないと言っても過言ではない。
まぁ、本人はそれを狙って煽ったのだが、バルバトスからしたらたまったものではなく、思わずため息をついて手で目を覆っていた。
それがまた、他の王からしたら余裕な態度ととられてしまい、結果的にバルバトスも自分で墓穴を掘ってしまっていた。
「ねぇ、カエデ。もしかして、喧嘩を売ってる?」
「あぁルーク。俺を含めてここに出席している全員に喧嘩を売っている。そもそも、先に喧嘩を売ってきたのは、お前たちの方だろ?」
「……どういうことかな?」
「知らないなんていわせないからな。毎日毎日飽きずに俺たちのことを狙ってきてただろ?」
楓の話を聞いて、ルークは自分の国の王を鋭い目で睨んだ。
他にもシェリンや他の国の護衛の数人が自分の国の王を非難するような目で見ていた。
「ごめん楓。もしかして、僕たちの国からも?」
「あぁ、一応倒した奴らの素性は掴んでるからな。途中からめんどくさくなってその辺に捨ててたりしたが、後で仲間に頼んでおいたから間違いない。ここにいる、全ての国の暗殺者や冒険者が絡んでた」
楓がそういうとルークは先ほどのバルバトスと同じように手を目にやって深いため息をついた。
どうやら、本当にルークは知らなかったようだ。
まぁ、最終の決定権はその国の王様にあるのだから、護衛が口出しするのもお門違いなのはルークたちも知っているのだろうが、それでも怒りを隠せないようで、楓の話を聞いて鋭い視線で睨んでいた。
「ねぇ、カエデ。僕のところも?」
「あぁ、全ての国がって言っただろ?」
ルークに続いてシェリンも確認のためかそう聞いてきた。
それに楓が肯定すると、シェリンはルークと違い懐に潜めていた小型のナイフを自らの王の首元にやった。
その奇行としかいえない行動に楓を含め全員がいろんな意味で驚いた表情をしていたが、シェリンはかなり切れているようで、そんなのお構いなしに自国の王を問い詰め始めた。
「ねぇ、どういうこと? 僕も一応、忠告したはずなんだけどなぁ?」
「わ、私の情報ではまだ青二才児だと聞いていたんだ。それに、カエデを消すと有利に進められることも多い。ここにいる、ほぼ全ての王がそう考えていたからこその行動だろう」
「それで、僕の忠告を無視したと? 死にたいの?」
「す、すまない。まさか、ここまでの実力者だとは思わなかったのだ」
「シェリン。もういい。俺も水に流すから、その辺にしてやれ。これ以上やると、お前の立場が悪くなりそうだ」
「ごめんねカエデ。まさか、そんなバカなことをしてたなんて……カエデを倒すのは僕じゃないとダメなのに、本当にごめんね!」
「僕の方も謝るよ。本当にすまなかった。僕の方も後でキツく言っておくよ。後、シェリン君。彼を倒すのは君じゃなくて僕だよ?」
「お前たち、実は全く反省してないだろ……」
もう護衛と王のどちらの立場が上か分からなくなってきていたので、楓も仕方なしに止めに入ったが、どうもルークもシェリンも反省している様子はなかった。
「まぁいいか。そもそも、情報を流したのもこの都市の検問官みたいだしな」
「あれ、そこまで掴んでるの?」
「あぁ、この都市にきて初日に絡まれたよっと、議題がそれてるし、王様がみんな萎縮しちゃってるし、一旦俺たちは黙った方がいいな」
「その前にいいか? さっきから、お前たちが主導権を握ってるようだが、あんまり調子に乗らない方がいいんじゃないか?」
楓がバルバトスや参加している王たちの様子を見て、一旦ルークたちを本来いるべきところまで戻そうとしたのだが、その前に新たに横槍を入れてきた男がいた。
見たところ、身長は2メートルを超えているし、筋骨隆々としたその体は語らずとも強者であることがわかるほどであった。
ただ、それは一般的な話になる。
きっと、この場にいるほとんどのものが感じているはずである。
楓たちに喧嘩を売った相手がこの場では『中の中』くらいだということに……
ただし、楓やルークと言った一部のものはどこか険しい顔つきをしていたが……
「ふむ、強者が主導権を握るっているのは世の常だと思うんだが、そこのところどう思う? えーっと……」
「俺の名はガリュウだ。よっぽど殺されたいみたいだな?」
「今はやめといた方がいいと思うよ? それに、君じゃあカエデも僕も倒せないよ」
「そりゃ二対一の場合はそうなるだろうな。でも、今のやりとりに不満を感じてる奴がどれだけいるかって話なんだよな」
ガリュウがそういうと、先ほどまで話に入ってこなかった護衛たちもうんうんと頷いていつでも楓たちに襲い掛かれるように武器に手をかけていた。
「あ、じゃあ僕も参加しようかな」
「シェリンも? どっち側でやりたいんだお前は」
「もちろんカエデ側で。僕、他の有象無象と一緒になりたくないしね」
「おいチビ。ガキはさっさと帰ってママの乳でも吸ってろ……ッ⁉︎」
ガリュウがシェリンに向かってそう煽った瞬間、シェリンからとてつもない殺気が放たれた。
「誰がチビだって? ねぇ、誰が?」
「お、お前がだよ。チビをチビと言って何が悪い」
「あーあ、言っちゃった。まぁ、おかげで戦う意思がある人がガリュウくん一人になったから、これで良しとするか」
「ちょっとかわいそうだけどな。シェリンもほどほどにな」
「ごめん。やりすぎだと思ったら適当に止めてくれると助かるなー! じゃ! ちょっとボコボコにしてくる!」
シェリンは最後にそういうとガリュウに向かって走り出し、先ほどのように懐から何本ものナイフを取り出して駆けていくのであった。




