バルバトスの苦悩 1
「カエデよ。もう一度聞こうか。帝国を消滅させた?」
「え、えぇ、彼女がですが……」
「この馬鹿者がぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
先ほど騎士団長に怒鳴られた楓は再度今度はバルバトスに先ほど以上の怒気を含んだ怒声で怒鳴られてしまった。
正直先ほどの騎士団長の10倍はすごい怒声を発したバルバトスに改めて「王様だなぁ。すごいなぁ」と若干現実逃避気味になってしまったがそれも仕方のないことかもしれない。
「弁明のしようもありません。あ、でも気をつけてくださいね。彼女、創造神なので神界のトップなので、その隣にいるのもかなりランクの高い神なので……」
「……悪い、もう一度言ってくれるか? その女性二人が神?」
「えぇ、創造神のイリアと時空神のミーシャです」
「よろしく。人族の王」
楓の紹介に合わせてイリアがバルバトスにVサインをしながら挨拶をする。
一瞬バルバトスの頭の上にはてなマークが浮かんだ気がするが、イリアとミーシャが気を利かせて少しだけ神力を出してくれたおかげでバルバトスも楓が嘘を言っているわけではないと察してくれたのか態度を改めてデスハイム王国の王らしく片膝をついてイリアとミーシャに敬意を示した。
「そう言うのはいらない。それよりも、帝国を消滅させたのは私、だからカエデは何も悪くない」
「す、すまない。カエデ。なぜカエデは創造神様のことを知っているのだ? その辺の説明を一からしてもらえると非常に助かるのだが……」
「そうですね。イリアもその話は後にしよう。まず、俺とイリアが出会った経緯を説明しないと話が進まない」
「わかった」
と言うことで、楓は自分が転移者だと言うことも踏まえてもう一度最初からバルバトスにイリアと出会った事の成り行きを説明することにした。
楓はもともとバルバトスには自分は異世界人だと説明していたのでその辺はバルバトスも聞いて驚くことはなかったが、やはり転移する前にイリアと出会ったと話したところあたりから驚いたような顔をしていた。
日向も自分が転移した際のことを話してくれたのでより信憑性がましたのも楓的には助かっていた。
楓の話だけではどうしても説明の不備が出てしまう可能性もあったのでその辺を確認しながら説明できたのでバルバトスも色々と疲れている様子だったが、大方楓たちの話は納得することができたみたいだ。
「……と言うことで今現在に至るわけです」
「なるほどな。とりあえずカエデがかなりの体験をしてこの世界に渡ってきたのはわかった。創造神様と出会ったこともな」
「わかってもらえてよかったです」
「あぁ、大変頭が痛い話ではあるが、その辺の話は一旦この辺にしておくとしよう。それよりも、だ。先ほどチラッと嫌なことを言っていた気がするが……」
「うん。多分、あなたの想像通り。私がやった」
「な、なるほど……」
イリアの躊躇ない返事を聞いてバルバトスも思わず項垂れてしまう。
もし、帝国を誤って消滅させてしまったのが楓であるならば最低限怒ることもできたのだが、今回楓は全く悪くない。
バルバトスも他国に責任を追及されても楓を連れて一から説明をし謝罪をするしかないと思っていたのだが、帝国を消滅させた真犯人が創造神となると誰もそれを否定することができなくなってしまったのだ。
唯一、楓だけはイリアを注意したりすることができるのだが、これは例外中の例外だ。
普通、そんなことをしようものなら一瞬で存在そのものが消滅させられてしまい魂すらも残らないようになってしまうだろう。
しかも、もし仮にバルバトスが他国ものたちに本当のことを話してもこの世界が信仰している神がイリアではないため「何を言っているんだこいつ?」状態に陥ってしまう。
最悪、神に仇なす不届き者として王国が滅びかねないのだ。
「だから、一つ案を用意した」
対処に困っているバルバトスの心を読んだのかイリアがバルバトスに向かってそう言って人差し指を立てながら先ほど話していた案を伝える。
イリアの言葉を聞いた瞬間にバルバトスは一瞬身構えていたが、バルバトスが覚悟を決めるよりも前にイリアが
「案ですか……それは一体?」
「この世界の神に王国の潔白を証明してもらう」
「な、なるほど? すまない楓、助けてくれ」
「ごめんなさい。僕もそれが一番手っ取り早いと思います。イリアや僕の元ではこの世界の神も逆らえないようなので、うまく利用させてもらいましょう。本人には悪いですけどね」
イリアに続き楓も苦笑いを浮かべながらそういうのでバルバトスも諦めたような顔をして「わかった」と頷いた。
頷いたというよりはもうなるようになれと言った感じだったが、今回は楓も悪いといえば悪いので王国に迷惑をかけないようにイリアに頼んでこの場でこの世界の神を呼んでもらう事にしたのであった。




