様子見 2
楓の夕食を食べ終えた日向たちはそのまま全員で温泉で今日の疲れ? を癒すことにした。
ちなみに、楓は食器類の片付けを理由にして今回は不参加である。その代わり、お風呂上がりに一人ずつ10分程度のマッサージを命令されたが、楓はそれを快く了承してしまい日向たちもそれ以上楓を無理に誘うことはしなかった。
「はぁ〜やっぱり楓くんの料理はいつ食べても美味しかったねー」
「ですね。いつか私も旦那様のように美味しい料理を作ってみたいです!」
「何がすごいってカエデの場合どこで作っても変わらずに美味しいのがすごいわよね。普通、こんなところで料理なんてできないし、できたとしてもあそこまでのクオリティーは絶対に無理よ」
「私たちもカエデ様に負けないように頑張っていかないといけませんね」
話は先ほどの楓の夕食のことらしく、話しているメンバー以外も全員その言葉に頷いている。
まぁ、楓の料理の後は毎回こんな感じでしばらくは楓の料理の話題が出てくるのだが、やはりすぐそこが戦場だと言うのにも関わらずいつもと変わらないクオリティーの料理が出てくるのは日向たちにとって非常にありがたいことなのだろう。
「楓くん、大丈夫かなー?」
「さっきのことですか? マスターのことですから、戦場に立ったらちゃんと勇者たちも倒してくれますよ。終わってからしばらくは一人でウジウジしてそうですけど」
「あー、ありそうね。あれだけ強いんだから、もっと威張っていればいいのに、無駄にお人好しなんだから……」
「ほんとにねー、さっきも突然突っかかってきた冒険者にお金と武器を無料であげてたしね」
ルミナはちょっと冷たい感じで楓のことを責めつつも、頰を赤くしており楓のことを思って言っている事くらい全員がわかっている。
だからこそ、日向たちも少し戯けた口調でルミナに同調するように、ここにはいない楓のプチ悪口大会が始まるのであった。
なお、しばらくすると悪口大会が暴露大会へと変わっていき『無限の伝説』ではないアインにもこの後楓は色々とからかわれる始末になるのであった。
「ようやくぶつかったみたいだね」
一方、お風呂の中で自分の悪口を言われているとは露とも思っていない楓はモニターを見ながら男性陣で色々と話し合っていた。
ちなみに、一時的にではあるがセバスには戻ってきてもらい、情報交換に参加してもらうことにした。
ここでセバスにも参加してもらうことによって、いちいち楓がバルバトスに報告しに行く必要がなくなるので手間が省けて楽なのである。
「あぁ、言ってもまだお互い様子見の範囲を超えないけどな。まだ勇者たちですら参加してこないだろうから前哨戦ってところだ」
「あれ? それって僕たちのはカウントされないの?」
「あれは前哨戦じゃなくて殲滅戦だったろ? ただのアップみたいなものだ」
「まぁ、どこも質が悪かったみたいだしね」
アルも流石に先ほど自分たちが戦ったのが味気なかったためか苦笑いになりながらそんなことを言っている。
あそこで死んでしまった兵士や魔族には悪いが、誰がどう見てもあれは捨て石以上の役割を見出せなかった。仮に楓たちが遭遇する前に冒険者たちと当たったとしても一時間もせずに壊滅させることができただろう。
兵士は並程度の力はあったが、指揮官が無能といっても差し支えないほど能力がなかったので、楓たちもだいぶ楽に壊滅させることができた。
「セバスの方はどうだった?」
「特に動きはありませんでした。王の護衛には私と一応のためにと宮廷魔術師長が残り、騎士団長が兵士を引き連れて一足先に戦場へと向かった様子です。何かあったら宮廷魔術師長が私に用件を伝えてカエデ様へとご連絡をすることになりました」
どうやら、すでにセバスたちで連絡網的なものができているようで、できるだけ早く楓たちに出陣を伝える用意ができているようだった。
楓的にはそんな面倒なことをせずにさっさと出陣させろと言いたいところだが、意外とバルバトスも頑固で楓を使うのは最終手段だと断言して滅多なこと以外では動かすつもりがないらしい。
「なるほど、確かにそっちの方が早いしな。ありがとうセバス」
「いえ、あとカナンさんから伝言を預かっています。『カエデさん、敵だけじゃなくて仲間も見張ってた方がいいよ〜』とのことでした」
「仲間? それって冒険者たちのことかな?」
「さて、そこまでは言っていませんでしたが、彼の専門は暗殺なので、当然情報収集にも長けているのでしょう。私も探っておきましょうか?」
「お願いできるかな? 俺がやるとまた怒られそうだし……」
今回楓たちは一応『バルバトス』に雇われてここにきている。
なので一度バルバトスにやりすぎだと言われた以上、少し自重しないと意図的にクライアントの意思に背くことになるので、ここは楓が出るのではなくセバスに頼むことにした。
正直結構気になるので楓本人がささっと調べたいことではあるが、セバスも一日もあれば完璧に調べてくれるので楓もそれまで我慢することにする。
そんなわけでまたまた不安が残ることになったが、あまり悩んでもいられないのでセバスにはすぐにそれを探ってもらうことにして楓たちは日向たちがお風呂から上がってくるまで引き続きモニターで監視を続けるのであった。




