開戦 4
「カエデ、私たちの目標は?」
ルーナは各々パーティーごとに距離をとってから楓に作戦の再確認をしてきた。
それにミリアたちも楓の作戦を聞き逃すまいと走りながら楓の方に耳を傾けている。
「だからさっきも言っただろ? 安全第一だ」
「いや、そうじゃなくて……って、これから戦うんだぞ。ふざけている場合ではない」
楓のコメントにルーナが不貞腐れたように頰を膨らませながら楓に向かってそう言う。
このパーティーではルーナが副リーダーを務めることになっており、最近まで騎士団長として王国を守ってきただけあって気の引き締め方が他のメンバーたちとは一味違った様子であった。
「ごめんごめん。俺、ルーナ、ミリア、あとアインさんには前線で戦ってもらって俺たちが逃した敵をユニルを筆頭に護衛の二人で対処してもらいたい。ただ、数も数だからだんだん下がりながらこっちの本体の合流を待つって感じだな」
あくまでも楓たちの仕事は『数を減らす』なのであって全滅させることではないのでそのくらいでちょうどいいのだ。
アルたちにも下がるタイミングなんかを楓が念話で指示を出していくつもりなので、一つのパーティーだけが前に出過ぎて全滅したなんてことにはならないだろう。
「わかりました。後ろは任せてください!」
「あぁ、頼んだ。っと、敵が待ち構えてるな。ユニルたちはスピードを落として敵の攻撃が当たらない程度のところで待機! 他の三人は俺と一緒に数を減らしていくぞ!」
楓の指示に後衛代表のユニルが元気よく返事をしてそのまま他の2人を連れてスピードをゆっくり落としていき楓たちと距離をとっていく。
楓はそれを確認するとルーナたちを見ながら手で合図を出して先頭を駆け上がり、敵の集団と一気に距離を縮めていく。
「きたぞ! 敵は……探知魔法でだいたい300ほどだ。斥候のつもりか知らないが、全滅させるぞ!」
「「「了解!」」」
楓たちでも目視できるところに敵が現れたところで楓は『人間のできる』範囲で探知魔法を発動させだいたいの敵の戦力を探った。
あくまでも今回は死ぬ危険性がない時以外は楓も人としての壁を越えるようなことをするつもりはなかったのでこれで問題ない。まぁ、たった七人で300もの魔物や魔族、そして帝国軍と戦うと言っている時点で普通におかしいのだが、今の楓たちは一種の興奮状態でそんな野暮なことを考えるようなことはなかった。
「敵襲! 相手はたった四人だ! 袋叩きにするぞ!」
「相手も俺たちに気がついたようだ。それぞれ死なないようにしながらさっさと片付けよう」
敵の指揮官はなんと魔族のようで、楓たちの姿を見た瞬間怪訝そうな顔をしながらもしっかりと他の兵士たちに指示を出し、楓たちに向かって一斉に魔法や弓で遠距離攻撃を仕掛けてきた。
とはいえ、日向やミルたちの攻撃に比べて段違いに威力や、飛距離が落ちるので楓はもちろんのことルーナやミリアたちも難なく魔法や弓を無力化していき、だんだんと敵の本陣に近づいていく。
敵の指揮官も楓たちに一向に遠距離攻撃が当たらないことに焦りを感じているのか、近くにいる兵士を殺したりして必死に楓たちに攻撃を当てようとしているが、そんなことをしてもただただ兵士たちが焦って士気が無駄に落ちてしまうだけである。
おかげで楓たちはさらに楽に敵の本陣へとたどり着くことができた。
「まず一匹!」
「ギャ!」
本陣へとたどり着いた楓は手に持っていた剣を魔物へと突き刺して一気に命を刈り取った。
それを皮切りにルーナやミリア、アインたちも相手の魔物や魔族、帝国軍の兵士を無差別にどんどん倒していく。
急にたった四人ぽっちで自陣を攻めてくるバカがいるとは微塵も考えていなかった帝国軍は、楓たちの奇襲によって陣形が崩れ、始めからあったかわからない統率力がさらになくなってしまい転々バラバラに逃げたり、楓たちに仇を取ろうと剣を持って歯向かってきたりと場は混沌と化してしまった。
逃げた兵士もそれなりにいるのだが、そいつらは全員ユニルや護衛の二人に倒される結果となり、指揮官の魔族ですら頭を抱えながら発狂していた。
「こうなると、一番面倒なのが魔物ってわけだな」
「魔族も人族も焦るとそれだけ思考力が落ちてろくに戦えなくなるが、魔物は自由に動けたほうが強いからな」
「カー君、私とアインで残りの人族と魔族を片付けてくるから、魔物たちを頼んでいい?」
「あぁ、そっちもよろしく頼む」
「うん! カー君たちに言うのはおかしいかもしれないけど、一応気をつけて頑張ってね!」
ミリアの応援に楓とルーナは手を振って答えるとそのまま二人は暴れて敵味方関係なく殺している魔物の処理に向かった。
ちなみに、先ほどの会話でミリアたちは楽をしたいがために楓たちに魔物を倒すようにいったのではなく、楓たちの精神面を心配したが故の判断なのである。
楓とルーナレベルになると正直、魔物も人族も魔族も全員同じようなものである。
ただ、人族と魔族は感情がある分、殺すときも魔物のようにサクッと殺せるわけではない。それを心配してミリアは人族と魔族の処理に名乗り出たのだろう。
まぁ、楓たちもこれから大量の人族や魔族を殺さなくてはいけないのだが、少しでも負担に感じないようにと言うミリアの親切心というわけである。
「ミリア、ありがとな」
楓はミリアの姿が見えなくなってからボソッと自分にだけ聞こえるように、でもミリアの気持ちに届くように感謝の気持ちを呟くのであった。




