神龍 2
「それで、アルはカレンさんとはどういう関係なんだ?」
「それ、今聞くかい?」
日向たちのいるテントに戻っている最中に、楓がタイミングを見計らって聞いてきたその質問にアルは苦笑いになりながらも言葉を続けていく。
「彼女は……僕の目標だよ」
「なるほど、アルはカレンさんのことが好きってことだな」
「うむ。実に初々しいな」
「ちょっと話を聞いてた? 彼女は僕の目標なんだって! 決して好きなんかじゃ……参ったな」
楓とルシフェルの息のあったからかいにアルはまんまと乗せられてしまい、結局頭をかきながら苦笑いをするしかなかった。
まぁ、アルから話を聞かなくても楓とルシフェルはアルがカレンのことが好きだというのは見た瞬間にわかったので今のは確信を基にしたからかいだったのでアルが白状しようがしまいがどっちでもよかった。
ルシフェルからすれば日々楓のことをからかっている側なのでアルをからかうのも同じようなノリでやっているが、楓はいつもいじられる側だったのでアルのをことをいじっている今現在、非常に面白そうにニヤニヤしながらアルのことを眺めている。
「カエデ、その腹の立つ笑みをやめてもらえないかな?」
「嫌だね。二人はいつも俺をからかっているんだから、たまには立場逆転しないとな。それにしても、アルがねぇ……」
「アルも立派な雄なんだ。わかってやれカエデ」
「だな。さて、アルよ。さっさとカレンさんのことを好きになった経緯を話していくがよい」
「はぁ、まぁいいか。端的に言えば、僕が幼くてまだ力がなかった頃によく世話を焼いてくれてね。当時は僕も色々と荒れてたから恋心なんてものはなくてただただ鬱陶しい奴としか思ってなかったんだけど、だんだん周りが見られるようになってからはカレン姉さんのことが好きになってたんだ」
アルは当時のことを思い出しているのか少し恥ずかしそうに、それでも過去にカレンと過ごしていた日々が幸せだったのだろう。アルが今浮かべているのはいつもとは違う、恋をしている男の笑顔だった。
ただ次の瞬間アルは儚げで、何かを諦めるような笑みを浮かべ楓たちに続きを話していく。
「でも、僕はカレン姉さんに気持ちを伝えることができなかった。当時僕は成龍でカレン姉さんが伝説龍だった。僕は無理やり今みたいにカエデたちといるけど本来伝説龍って言えばドラゴン界の王子様、王女様的な立場なんだ。それに加えてカレン姉さんはドラゴンの姿も人族の姿もどっちも綺麗だったから、めちゃくちゃ人気だったんだ」
「やっぱり、ライバルが多かったのか?」
「それはね。でも、それはどうでもよかったんだ。ライバルたちは多かったけど、負ける気はさらさらなかった。そうじゃないんだ。それ以上に、僕がカレン姉さんに想いを伝える前に、先代の神龍が死んで。彼女が神龍へとなってしまったんだ」
「何か不都合でもあったのか?」
楓は話が読めずに、アルにそんな質問をしていた。
正直、楓は先ほどのアルの気持ちならたとえ二人の間のレベル差が大きかろうとも諦めないだろうと思っていたのだが、どうやらそうでもなさそうなのでそれが不思議に感じたのだ。
ルシフェルも同じなのか、首を傾けている。
「神龍になった瞬間、カレン姉さんの力は僕たちではどうしても敵わない、隣にいるだけでも神気にやられてしんどくなってしまったんだ。もともと神龍は僕たちとは別の場所に住んでいて、何か世界に異常があれば地上に姿を表すんだ。そして、それはカレン姉さんも例外ではなかった」
「なるほど、アルが告白する前にカレンさんがアルの前から姿を消したってことか」
「そういうこと。どれだけ探しても見つからないし、諦めて少しばかり休眠していたら迷宮の中に閉じ込められる始末だよ。カエデ達が見つけてくれなければ、僕はあの結界のせいで外に出ることはできなかった」
「なるほどなぁ……」
楓もルシフェルも「ならなぜ冒険者ギルドのギルド長をしているのか?」と聞きたいところではあるが、それはアルにもわからないのだろう。
楓的には最初に会った時、何やら魔法を使用しているような感じだったので自分で新しく魔法を開発して自分で自分に制限をかけているのかもしれない。
楓もスキルで自分に制限をかけて普段はステータスをかなり抑えているのでカレンがやっていることはわかるのだが、それを知らなかったアルはまさか好きだった人がギルド長なんかやっているとは思いもよらなかったのだろう。
気づけという方が酷というやつである。
「でもまぁ、やっと会えたんだし思い切って告白してみれば?」
「たぶん無理だよ。カレン姉さんは神龍だし、せめて僕が彼女より強くなってからじゃないとね」
「そうか。なら、頑張らないとな」
「だね。目標もできたことだし、二人とも僕の修行を手伝ってくれると嬉しいな」
「任せろ。我もカレンに負けたままではいたくないからな。それに友の頼みだ。いやというわけがないだろう」
「何しろいつも世話になってるやつからの頼みだしな。俺もアルの気が済むまで手伝ってやる」
楓とルシフェルは拳をアルに向けながらそういうとアルは嬉しそうに笑いながら自分の拳を二人の拳に合わせて少々ベタではあるがそのまま三人とも拳を天に掲げて全力で叫ぶのであった。
ちなみに、戦争とは? となりかけている三人は帰ってから日向とナビにきっちりと怒られるのであった。




