初対面 2
明日でテスト一週間前になります。
ということで、更新がかなり不安定になります。ご了承ください。
7月5日までは基本的に更新できないと思います。
もし更新できるようであればツイッターでご報告させていただきます。
楽しみにしてくださっている方、本当に申し訳ありません。
テスト頑張ります。
「どけ」
「「「……⁉︎」」」
楓の先ほどの威圧が可愛く思えるほどの殺気を受けて楓のクランに入りたいと言っていた八人の冒険者は思わず楓に道を譲りたくなってしまうが、彼らも彼らで信念があるのかなんとか踏みとどまって楓の殺気に必死に耐えていた。
「この程度でビビっているようでは話にならないぞ? なんども言うようだが、我らのクランのメイドでももっと鋭い殺気を受けてなお怖がらずに我らに攻撃を仕掛けてくる。その覚悟もないのであれば、カエデの言う通りさっさと去れ。邪魔だ」
「ち、ちょっと強いからって威張ってんじゃねぇぞ。そりゃお前はいいよな。才能もあって、美人な奥さんをたくさん娶って。俺たちの苦労も知らないで……⁉︎」
「いいたいことはそれだけかな? 悪いけど、彼は僕たちの主人を悪く言うのはやめてもらっていいかな? 君たちに悩みがあるように彼にも、もちろん僕にも大なり小なり悩みはあるんだよ」
Bランク冒険者のリーダーが楓のことを罵倒し始めたところで、アルが楓の元から一瞬でその冒険者の元まで向かい胸ぐらを掴んで宙に浮かす。
身長も楓より小さく、おそらく体重もめちゃくちゃ重いわけではないが、それでも青年というだけあってだいたい60キロは超えているだろう。
そんな青年を軽々と片手で持ち上げて、少し苛立った様子で青年にいいたいことを伝えるアルは恐ろしく冷淡で楓でも結構本気でキレていることがわかった。
「ありがとうアル。だが、大丈夫だ。もう言われなれている」
「カエデが良くても僕たちが納得できないんだよ。殺さなかっただけマシだと思ってほしいな。あと数秒遅かったらルシフェルが確実に魔眼で彼の頭を飛ばしてたからね」
「当たり前だ。我らを前に調子に乗るのも甚だしい」
「じょ、冗談だよな? 流石に絡まれただけで殺すのはやめてくれよ。めんどくさいことになるから」
もし仮に楓たち以外が今のセリフを言おうものなら誰であってもキレてやり返そうという気になるのだが、それを言っているのが楓たちであること、そして先ほどのアルの行動を見て本当にやりかねないと思ったのか、Bランク冒険者たちは顔を青くしながら震えている。
完全に怖がらせてしまっており、事情を知らないものが今楓たちの付近を通ったら楓たちが通報されかねないだろうが、周囲の冒険者たちも迂闊なことをすると殺されかねないと思っているのか誰も動こうとはせずにただただ楓たちのことを眺めているだけだった。
「もうわかっただろ? 悪いが他を当たってくれ」
「ま、待ってくれ……」
「どうしてそこまでして強くなりたい? それに、俺のクランに入ったところで強くなれるかどうかはわからないぞ?」
「そんなことはない。現に、箱入り娘で有名だったミルテイラ様でさえ今では『無限の伝説』として最前線で魔物たちを屠っている」
「あー、そういうことか」
そう、ミルの場合楓が色々とスキルを付与してかつ毎晩のようにみんなで模擬戦をしているから嫌でも強くなってしまったのだ。
ただそんなことを知らない他の冒険者たちからしたら『無限の伝説』に入るだけで強くなることができる。あのミルテイラ王女でも今では最強クランで戦えているのだからとこうしてクランに入りたいというものが増えてきているのだ。
楓たちからしたらそんなわけあるかと叫んでやりたい気持ちでいっぱいだが、楓がしたことを公言することはできないので思わず今日何度目かわからないため息をついてしまう。
「俺たちは強くなって、金が必要なんだ! だから頼む! 『無限の伝説』に入れてくれ!」
「今でも十分強いだろ? 見たところBランクくらいありそうだし、金もかなり稼げているはずだが?」
「それでも足りないんだ! 俺たち八人が全力で稼いでせいぜい月に1000万弱だ。対して俺たちが必要な額はあと半年までに3億とちょっと。圧倒的に金が足りないんだ」
「それで俺たちのクランに入れば強くなれてなおかつお金も大量に稼ぐことができると? 舐めるなよ?」
キレる予定のなかった楓でさえ、目の前の青年の言葉に思わずステータスを制限した中ではあるが本気で殺気を飛ばしてしまう。
自分がバカにされるくらいならめんどくさいが一瞬で倒しておしまいにするつもりだった。
だが、クランまで軽く見られたままにするのは、楓としてもどうしても耐えることは出来なかった。
ーーーなぜなら、『無限の伝説』は楓を救ってくれた場所だから
ーーーなぜなら、『無限の伝説』は楓と他のメンバーを繋いでくれた大切なものだから
ーーーなぜなら、『無限の伝説』は家族の『証』だから
「楓くん、落ち着いて」
「日向?」
気がつけば楓は日向の胸の中で抱きかかえられており、日向にその頭を撫でられていた。
どうやら、楓の異変に気がついた日向は一瞬で楓の元まで転移をしてきたらしく、まだ魔法陣が日向のそばに浮かんでいた。
「もう! アルたちがついてるから安心して送り出したのに、楓くんの殺気が伝わってきたんだもん。びっくりしたよ」
「え、そっちまでいってたのか?」
「楓くんだからだよ。楓くんのことなら世界の裏側でも、ううん。世界が違ったって分かっちゃうんだよ。ミルたちも心配してたよ?」
「そっか。心配かけたな。俺は大丈夫だから、戻って俺たちの帰りを待っていてくれ」
「うん! じゃあね!」
楓は日向のほおに軽くキスをすると日向は嬉しそうに笑いながら再度魔法陣の中へと消えていった。
アルとルシフェルは「ヒナタたちには敵わないな」と笑っていたが、Bランク冒険者を含め他の冒険者は一瞬で日向が現れたことに、そしてそれ以上に先ほどの楓の殺気に当てられて怯えるように震えていた。
「こ、これは?」
「中に光金貨30枚。3億ルリ分の金が入ってる。あとこれは上級の武器だ。七人分のそれぞれ適性のあるものを出してある。あとこれはお前に」
楓は淡々とそう言いながらストレージの中からものをどんどんと出していく。
七人分の武器の中身は剣であったり弓であったり、あとは杖など全て上級のものを取り出して地面に丁寧においていく。全て楓が作ったものなので乱雑に扱うようなことはない。
「最後にこれは達人級の剣だ。強くなるために武器と3億ルリをお前たちに投資する。いつか返しに来い。ゆっくりでいいから、強くなってな。あぁ、言い忘れていた。今回はたまたまだ。日向が来てくれて、冷静になれたし、荒ぶった俺にも責任があると思ったから協力した。だが、次はないと思ってくれ。もし、ただ単に私情で俺たちを利用しようと近づいてきたやつには容赦はしない」
楓はそれだけ言い終えると目の前で何をしているのかよく理解していない冒険者たちのことを見ることなくアルとルシフェルを連れてギルド長のいるところまで向かっていく。
最後に、楓たちの後ろの方で冒険者たちが泣きながら楓が見えなくなるまでお礼を言いつづけるのであった。




