戦場 5
「到着〜」
カナンはそう言うと楓たちの元から離れていき、暗殺ギルドの本部がある方まで向かっていった。
どうやら、暗殺ギルドは暗殺ギルドで、冒険者ギルドは冒険者ギルドで専用の場所が区切られているらしく、基本的にはそこで戦いが始まるまで自給自足をするような感じになっているらしい。
他にも傭兵ギルドや魔術師ギルドなんかもあったりしたが、その二つは人数が冒険者ギルド、暗殺ギルドよりも人数が少ないので二つ合同で一つの区域で待機するようになっていた。
ちなみに、楓たちがいる場所は暗殺ギルドが確保している区域らしく、ちょっと先に行ったところに傭兵ギルドと魔術師ギルドの区域、さらにそこから行ったところに冒険者ギルド、そして最前線のところに騎士や魔術師の区域らしい。
何故この配置になったのかと言うと単純に国営と民営の差というやつである。
国のお抱えである騎士や魔術師と違って各ギルドは民営で強制ではないので最前線の国営の騎士と魔術師の場所は確定していたが、他の三つはくじ引きで決まったらしい。
他にも、国営と民営の差といえば国のお抱え騎士と魔術師はこの戦争に強制参加だが、各ギルドは自由参加である。
そのせいもあって傭兵ギルドと魔術師ギルドの参加人数が少ないのである。他にも結構な数のギルドが王都には存在するが、単純に非戦闘ギルドなのか、もしくはただ単に参加するのが嫌だという理由で今回の戦争は不参加ということになっている。
「俺たちはどこまで行けばいいんだろう?」
「先ほどお父様がこの付近に天幕を設置すると言っていましたのできっと私たちはこの付近で待機することになると思います」
「なるほど、じゃあしばらくこの辺で待っていれば誰か来そうだな」
「そうですね。しばらくこの辺で待機してましょう。私たちの膝の上で……」
「っと、俺はちょっと用事を思い出したから別行動……」
「させませんよ。マスターは反省するべきです」
楓は話の雲行きが怪しくなってきたことを察知して戦略的撤退を試みようとしたのだが、それをナビに止められてしまいその後バルバトスがやってくるまで日向たちに先ほどと同じように好きなように遊ばれてしまうのであった。
暗殺ギルドの面々がなんだあれ? と珍魚でも見るかのような目で楓たちのことを見ていたのだが、カナンによる「あれがカエデさんだから、喧嘩を売ったら殺されるよ〜、俺も昨日あの奥さんたちに殺されかけたから〜」と喧嘩を売ろうとしていた暗殺者たちに警告があったので誰も楓たちに喧嘩を売るものはいなかった。
実際に、この状況で楓に喧嘩を売ろうものなら楓が反応するまでもなく日向たちに瞬殺されていただろうから、カナンのこの警告は非常にファインプレーであった。
ただ喧嘩を売らなくなったとはいえ、楓たちに自分たちの区域の入り口付近でイチャイチャされるのは見ていて非常に腹立たしく、大半の男性暗殺者たちが無意識に楓に向かって殺気を放っていた。
「カエデ殿、バルバトス様がお呼びでございます」
「わかりました。ほら、みんな行くぞ」
「「「「「「はーい」」」」」」
軍師の男が楓を呼びにきたことによって楓がおもちゃにされる時間は終了し、全員揃ってバルバトスがいるであろう天幕の中へと入っていった。
もちろん、アリウスやジャンたちも一緒にである。
昨日は楓たちのことを気遣ってか各々別のところで休むと言い出して先ほどまで会うことはなかったのだが、いつの間にかアリウスたちもジャンたちも楓の元におり全員で集まることができた。
「楓です。戦いが始まったら主にアルがミルのお父さんの護衛につきますのでご安心ください」
「伝説龍に護衛してもらえる日がまたくるとは……アル殿、よろしく頼む」
「えぇ、こちらこそよろしくお願いします」
バルバトスはアルが伝説龍だと知っているので、その伝説龍が自分の護衛に再度つくことになるとわかると嬉しそうにしながらアルに向かって手を差し出し握手を交わした。
アルは一度バルバトスの護衛をしたことがあるので、楓は今回もアルにバルバトスの護衛を頼み、アルもそれを快く引き受けてくれたのでこうして一番悩んでいたバルバトスの護衛の心配が解消されたのだった。
「それで、私たちはどこで戦争が開戦されるまで待機していればいいですか?」
「この付近で頼む。カエデの予想ではどのくらいでぶつかると思う?」
「早くて二日後、遅くても三日後の昼までには戦場となる場所でぶつかるでしょう。ただ、相手も何をしてくるかわかりませんので一応最前線で待機している騎士や魔術師たちには明日から警戒しておくべきだと思ってもらっておく必要があります」
「なるほど、そういえば相手にはまだ不確定要素が残っているのであったな。直ちに軍師と各ギルド長に集合をかけて相談しようと思う」
ちなみに、ギルド長とはギルドマスターのさらに上の役職で一つのギルドに一人ギルドマスターがいるのに対してギルド長は全てのギルドのトップなので、かなり地位が高い人を集めて相談することになっている。
「それがいいと思います。それで、私たちは冒険者ギルドの区域に混じって戦えばいいんですよね?」
「あぁ、冒険者ギルドのギルド長にも許可を取ってあるのでそっちで頼んだ」
「了解です。では、失礼します」
楓は話が終わるとすぐに天幕から退出し全員で自分たちが休む用のテントを設営していく。
昨日は一応普通のテントを使ったが、今回は例の時空魔法を使用して創ったテントを設置するのでアリウスたちも一緒にテントの中に入ることができるようになっている。
設置する個数は二つで男女で分けるつもりだったのだが、日向たちが「楓くんと一緒のテントがいい」などと言い出したので三つテントを用意して一つだけ少し狭いものを設置することにした。
さすがにアインもいるので女子用のテントに楓が入るわけにもいかないのでじゃんけんに勝った二人が楓と一緒に寝ることができるようにして残りは従来通りの分け方でテントの中で休んでもらうことになった。
そのジャンケンの際に、今まで以上の戦いが水面下で行われていたなど楓は微塵にも考えることはないのであった。




