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戦場 4


「あ、カエデさん。昨日はありがとうございました! お陰でだいぶ見張りが楽で……」


「カエデさん、サインください!」


「ずるいぞ、俺もください!」


「あ、あはは……」


 楓は朝からこれほどまでに後悔したことは一度もないだろうと言い切れるほど、昨日の自分の軽率な行いをひどく後悔していた。


 というのも昨日楓が開発した魔物よけの球体が思った以上に効果があったらしく、普段ならこの場所で野営をすればそこそこの数の魔物が襲ってくるのだが、昨日は一度も魔物が襲ってこなかったらしく、見張りの人たちもかなり楽に見張り番を過ごすことができたようだった。


 しかも、それに加えて楓は見張りの人たちにアルコール濃度の低いお酒やおつまみも用意しておいたので見張り番の人たちも見張りをしているというよりも少し夜更かしをしているという感じで見張りが全く苦行でなかったらしい。


 そのおかげで騎士や魔術師の中で楓の存在がさらに一段階神格化されてしまったが、日向たちからすれば楓のこの始末は自業自得だといって全く取り繕うことはなかった。


「ご主人様、大丈夫ですか?」


「ユニルか。ありがとな。心配してくれるのはお前たちメイドだけだよ……」


 日向たちも心配はしてくれるのだが、やはり昨日のことがあってまだどこか冷たい感じがした。


 しばらくは許さないといった日向たちの固い決意が楓も感じており、弱音を吐くに吐けず先ほどまでずっと騎士や魔術師の対応をしていたのだが、それも楓のメイドであるユニルによって打破されることとなった。


 ユニルの見た目はアルと同じく赤い髪の毛で髪型はセミロングである。


 普通に楓の趣味が出ており、めちゃくちゃ可愛いのだが、さすがに楓もメイドにまで手を付けるほど夜の相手に困っているわけでないので、ユニルだけでなくサクラたちメイドたちには一度も手をつけたことはない。


「え、えーっと。ご主人様、こっちに来てください」


 そんなことを考えているとユニルが少しモジモジした様子で楓に手招きをして自分の近くに来るようにいった。


 周囲には結構人がいたし、なんなら日向たちもチラッと楓とユニルのことを見ていたが、特に何もいうことなく楓たちのことを眺めていた。


「ん? ここか?」


「えいっ。よしよし。えへへ」


 ユニルは楓を自分の元まで呼ぶとそのまま勢いよく自分の太ももに楓の頭を持ってきて所謂膝枕というものをしながら楓の真っ白な頭を嬉しそうに撫でていた。


 その姿がめちゃくちゃ可愛く先ほどまで楓のことを慕っていた騎士や魔術師でさえ阿鼻叫喚としているが、膝枕をされながら頭を撫でられている楓はただただ落ち着いた様子でユニルにされるがまま撫でられていた。


「撫でるのうまいな」


「そうですか? 一度、ご主人様に膝枕をしたかったんです。いつも私たちが働きやすいように工夫をしてくれるご主人様のために、私は何ができるのかなーって。」


 楓に褒められたユニルは嬉しそうに微笑みながらも、楓に心の底からの感謝の気持ちを伝える。


 楓からすれば、ユニルたちメイドが文句も言わずに働いてくれているだけで非常にありがたいので、そんなユニルたちが働きやすいように色々工夫を凝らすのは当たり前だと思っているのだが、普通はそうでもないらしく、ユニルが言うには他の貴族に従っているメイドたちはいつも大変らしい。


「そうか。ユニルたちも友達ができたんだな」


「はい。メイドって買い出しとかもしないといけませんから、その際によく他の貴族に従えておられるメイドと色々お話をするんです」


「なら、もっと休みを多くしないとな。ユニルたちもしたいことが多いだろうし……」


「これ以上お休みをいただいたらバチが当たりますよ。今のままで大丈夫です。その代わり、たまにでいいので私たちとお茶をしてくださると嬉しいです」


「そのくらいなら喜んで。むしろお願いしますってこっちがお願いしないとな」


 楓としてはもう少しくらいメイドたちの休みを増やしても問題ないと思っているのだが、ユニルたちからしたら週に一日休みがあるだけでも十分すぎるらしくそれ以上の休みは必要ないといって楓の提案を辞退した。


 その代わりに自分たちとお茶をしてほしいとユニルはなんとも可愛いお願いをしてきたので楓は笑顔で頷いた。


「楓くん……えいっ!」


「ちょ! 日向⁉︎」


 先ほどからずっと楓たちのことを見ていた日向がついに我慢できなくなったのか、ユニルの横で一緒に楓のことを撫で始めた。


 いつものユニルならその時点でそっと楓を日向に譲るはずなのだが、今日はそんなことなく楓を膝に乗せるのだけは決して日向に譲ることなく一緒になって楓のことを撫でていた。


「ユニルだけずるい!」


「あー! 約束破ってヒナタだけカエデに甘えてるわよ! みんな、突撃ー!」


「「「「「「おー!」」」」」」


「え、ちょ、まっ、ぐはっ」


 しばらくの間はユニルと日向だけで楓も好きにされるがままになってかなり幸せだったのだが、それもルミナの号令によって強制的に終了させられることのなってしまった。


 どうやら、日向たちも楓とイチャイチャしたかったらしく、ミルたちは一度きっかけがあればもう手が付けられないほど甘え始めた。


 それから、日向たち八人とユニルで順番に楓を膝枕して出発の時間になるまでずっと楓は日向たちのおもちゃになるのであった。

戦場とは?

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