決闘 6
「久しぶりに動いたけど、まだまだ現役で戦えそうだな」
「結構ブランクあったはずなんだけどね。4人の息も揃ってたし、上出来でしょ」
見事ユニコーンの討伐に成功したジャンたちはどこか物足りないような様子でそう呟きながらも溢れんばかりの歓声に応えるように天狐族たちに手を振っていた。
まだ勝負は終わっていないのだが、すでに天狐族たちはジャンたちの勝利を疑っていないようで今もずっと歓声が続いている。
「これで終わりかカエデ? この程度では、娘をやるわけにはいかないがどうする?」
「はぁ、しょうがないですね。これ以上の魔物を召喚してしまうと今度はこの結界が持ちそうにないので僕がみなさんの相手をさせていただきます」
「ふんっ、モンスターテイマー風情が俺らに勝てると思ってんのか?」
「シンやめよ。あれはただの前座に過ぎん。これからが本番じゃ。儂の鑑定が全く効かんからの……一体どれだけレベルが離れているのやら」
デルタは楓を煽るシンを止めてジャンやジルに向かって自分が鑑定した結果をそのまま伝えた。
そもそも、鑑定スキルは自分よりも下のレベルしか測れないため万能ではないのだ。楓はレベル、ステータス共に∞なので制限などあってないようなものなのだが、先ほどデルタが言っていた通り普通の人間では楓のステータスをはかることが出来ないのだ。
「そこまでのやつか……おもしれぇな」
シンもデルタが嘘を言っていないのが伝わってきたのか顔を引き締めて楓の方を見て獰猛な笑みを浮かべる。
シンに睨まれている楓といえばただ肩をすくめてストレージから自分の剣を出して軽く素振りをしている。楓の方に全く緊張感などなく、ただただめんどくさいことになった程度にしか思っていない。
それが癪に触ったのかシンは楓に噛み付こうとするが寸前でジャンとジルに止められてしまう。
「今あいつに突っかかっても無駄だ。カエデはわざと儂らを煽っているのだ。そこに乗っては向こうの思うツボだぞ」
「ったく。わーったよ」
ジャンにまで注意をされてシンは少し不貞腐れた様子で頷いたが、それでもやはりこの村の長老に注意されてしまえばしっかりということを聞かざるを得ないのか先ほどのようななめている様子は一切なく鋭い視線で楓の方を見る。
楓もそんな四人の様子を見てそろそろだなと準備運動をやめて少しだけ威圧をその身に纏っていった。
「みなさん準備できたみたいですね」
「あぁ、全力でいかせてもらう」
「そうですか、ではお好きに攻撃してきてください」
楓はあくまでも余裕ぶった様子でジャンたちを煽るがジャンたちはそれに乗ることはなく他の天狐族では反応できない速度で楓の元へと駆け出していった。
どうやら最初から本気でかかってくるらしく様子見なんてものは一切なく普通の人ならジャンの初撃だけで瞬殺されそうな気もするが、ステータスを上げている楓にはスロー再生程度にしか見えないため余裕で防ぎ、その後の4人の猛攻を全て捌ききる。
楓の体感では大体十分ほど、ジャンたちにとってはたった数十秒のやりとりであったが、次第にジャンたちのスタミナがなくなっていき動きが鈍くなってくる。
「はぁ、はぁ、こいつ、化け物か何かか?」
「失礼ですね。一応人族ですよ」
シンが息を乱してしんどそうにしながらそんな悪態を吐くが楓は全く気にしない様子でそんな返事をする。
見ると、シン以外の3人もかなり息を乱しておりまだ動けるだろうが先ほどのように素早い動きはできないだろうといった様子であった。一方で楓はまだまだ余裕な表情でこれから攻撃を仕掛けるぞと剣を構え直しており、それを見たジャンたちは冷や汗を流しながら何やら4人で小さい声で作戦会議を行っていた。
楓も聞こうと思えば余裕で聞くことができただろうが、そこはハンデということで耳を塞ぎジャンたちの作戦会議が終わるまで攻撃するのを待つことにした。
ただ今回楓は負ける気は毛頭なくこれがルーナたちとの模擬戦なら何をしてくるのか、どんな工夫をしてくるのか楽しみに待っているのだが、楓はそんな余裕を与えることもなくジャンたちの作戦会議が終わった瞬間に即座に攻撃を仕掛けていく。
作戦会議をする余裕は与えるが、その作戦を実行させるかどうかは楓の気分次第だ。今回は相手が相手なのでそれをしないというわけだ。
「ッチ! こいつ、攻撃力もイかれてるぞ! その華奢な体のどこにこんなパワーがあるんだよ!」
楓は先ほどの逃げに徹していた時のスピードから1段階から2段階ほどスピードを落としその分パワーを2段階ほど上げジャンたちに攻撃していく。
するとジャンたちも反応できる速度にまで楓のスピードは落ちたのだがそれ以上に楓の攻撃を受け流すのに全力を使わないといけないことになってしまい、ジャンたちはかなり疲労していることもあって十秒も持つことなく全員倒されてしまうことになった。
「こ、これほどまで差があるのか……」
「これなら、魔王にも勝てるかもしれないね……」
「魔王?」
ジャンたちは楓に倒されたのにも関わらずすがすがしい顔をしており、今絶対に聞くことがないはずの単語が聞こえてきて楓も思わず頭の上にはてなマークを浮かべてしまう。
どうやら、村の様子がおかしいことに関わっていそうなのだが、楓は今から面倒ごとの匂いがしてジャンたちに詳細を聞く前に軽くため息をこぼすのであった。




