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宿屋でのひと時


  無事模擬戦が終了すると、すでに日が落ちていたので渋々だったがそのまま宿をとることにした。


 流石にこの街で夜の営みをする気にはなれなかったので、二人部屋でアルと寝ることにした。ちなみに、ルシフェルはセバスと同室だ。女性陣は人数が多いので誰がどの部屋で寝ているかまでは流石に楓も把握することはできなかったが全員同じ宿に泊まることができたので問題ない。


 楓たちが向かった宿は団体様大歓迎だと言うことだったので色々とサービスなども受けた。


「二人で話すのは久しぶりだね」


「そうだな。っと、ほれ俺特製の紅茶だ」


「ありがとう。カエデの入れる紅茶は凄く美味しいからね。ありがたくいただくよ」


 アルは楓の入れた紅茶を嬉しそうに喜びながら飲み始める。


 先ほどまで楓の部屋にルシフェルとセバスもいて四人で仲良く麻雀をしていたのだがそれも一時間ほどで終了しルシフェルたちは部屋へと戻っていった。なので、現在楓の部屋には楓とアルの二人しかおらずそのまま寝ても良かったのだが久しぶりだからと二人で話をすることにした。


 話といっても最初は楓と日向たちのことやお互いの恋愛事情なんかを話すだけだったがだんだん話が魔王に関することになっていった。


「あ、言うの忘れてたけどルシフェルによればこの世界の魔王が決まったらしいよ」


「ルシフェルが?なんでそんなの分かるんだ?」


「僕もわからないけど魔王同士なんか分かるんじゃないかな?まぁ、それで一応気をつけておいたほうがいいねーって話をこの前お酒を飲みながら話してたんだよ」


「そんな酒の肴みたいに……まぁ、まだ実害があるわけじゃないからしばらくは様子見だな。魔王だから悪ってのは違うって言うのはルシフェルを見てよくわかっているからな。できることなら争いたくない」


 楓は先ほどまで一緒に麻雀をしていたルシフェルの姿を思い出しながら強くそう言う。


 そんな楓の様子を見ているアルは嬉しそうに微笑みながらそうだねといって紅茶を全て飲みきった。アルとルシフェルは特に仲がいいので楓の本気の態度を見てアルも嬉しいのだろう。


 楓はアルの空っぽになったティーカップに新しく紅茶を入れ直し先ほどの話を再開させる。


「それにしても、やっと決まったんだな。結構時間がかかったようだけど、結局どうやって決めたんだ?」


「さぁ?僕は魔族じゃないからね。そこはルシフェルに聞かないとわからないよ」


「それもそうだな。また機会があったらルシフェルかセバスに直接聞くことにしよう。っと、明日はゆっくりめだけど夜更かしをしすぎるのも悪いしさっさと寝るか」


「そうだね。こっそり抜け出してヒナタたちのところに行っても大丈夫だよ?」


「今日は色々と精神的に疲れたからそう言うのはナシだ」


 楓はそう言って逃げるようにベッドに倒れこむ。


 楓も今日はなれない商人の護衛やアストとの模擬戦のせいで疲れているので日向たちと夜の営みをする気力はない。


 日向たちが誘ってきたのであれば楓も頑張るところだが、自分から夜這いを仕掛けるようなことはせずにその日はそのままアルとの二人部屋でゆっくりと英気を養うのであった。












「おはよう。みんな早いな」


 楓が食堂へと降りてくる頃にはほとんどのメンバーが席について先に食事を始めていた。


 いつもなら全員が揃うまで待っているのだが、ここは宿屋で自分たちの家ではないので先に来たものから朝食をとるようにと昨日のうちに楓たちは決めていた。


 『無限の伝説』は人数が多いので一気に食堂に降りてくると結構混雑するので楓とアルは少しだけ時間を早めて食堂に向かったつもりだったが日向たちはそれよりも先に来ていたのかすでに食事を食べ終えてゆっくりと飲み物を飲んでいるところだった。


「おはよう楓くん!って言っても私たちもさっき降りてきたばっかりだよ。しっかり寝られた?」


「あぁ、お陰様で昨日の疲れは全部取れた。日向たちも大丈夫か?」


「うん!昨日はみんなでいろんな話ができて楽しかったよ」


 楓は日向と軽く話をしながら自分の席に座る。


 メニューは基本的に朝は決まっているので楓とアルが席につくと宿の従業員がやってきてスッと楓たちの元へと食事を運んできた。


 楓とアルは従業員に軽く礼を言うと料理に手をつけ始めてそれと同時に日向たちとの会話を続けていく。


「これからすぐにルーナたちの村へと向かうけどみんな大丈夫か?」


「私たちは問題ありません。旦那様にお任せします」


「そうか。なら、九時になったらみんなでここを出ようか。それまでに準備をしておいてくれ」


「「「「「はーい」」」」」


 楓たちはささっと予定を決めるとその後は普通に昨日の夜の話だったり暴露話だったりで盛り上がることになった。


 この時の楓はこれから面倒なことがやってくるなど全く考えてもおらず、それ故に九時と言う少し遅めの時間を設定したのだが、それが後に非常にめんどくさいことになってしまうのだが当の本人である楓は知る由もないのであった。

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