親子の盃 1
結婚式が無事終了したその夜、人数を限定してささやかながらパーティーが開かれることになっていた。
結婚式は日向たちによるサプライズがあったお陰で国民たちも大喜びで、途中で勇者たちの嫌がらせはあったが概ね大成功と言っても問題ないほどの盛り上がりを見せていた。
あの後、約十分ほど日向たちが魔法を維持していたがだんだんルミナやエリス、ルーナなどの魔法があまり得意でない者たちが苦しそうにし出したのでそこで魔法による演出は終了ということになった。
あまり長い時間のものではなかったが、それを見ていた全員が魔法が終了すると大きな拍手と感謝の言葉を日向たちに投げかけ満足そうにしていた。
その後は予定通りに楓が代表で全国民の前で挨拶や抱負などを言いお披露目は無事終了となり、すぐに各々で楓たちの結婚を祝うお祭り騒ぎが始まりデスハイム王国は建国以来一番の盛り上がりを見せたらしい。
「この国の歴史に名を残す出来事になったかもしれないね」
「そんな大層なことをするつもりはなかったんだけどなぁ……そういうお前らも結構大変だったんだろ?ナンパの嵐にあったとかルシフェルがさっき嘆いていたぞ」
「あー、まぁ大変だったね……」
アルは本当に苦労したのかものすごく無理した笑いを浮かべながら楓の言葉を肯定した。
現在楓はパーティー用の服に着替えている最中であり先ほどまでルシフェルもいたのだが、今日のお祭り騒ぎで相当疲れたのか風に当たってくると言って控室から先に出て行った。
ちなみに、結婚式が終わってから楓たちは流石に城外に出るとパニックになってしまうからとバルバトスに王城から出るのを禁止され、仕方なく王城の中で八人で仲良く会話をしたり、ビデオのことで色々話をしていた。
ただアルとルシフェルは普通に城下町でお祭りを楽しみつつお酒を飲もうと、クランハウスから外に出て色々回っていたそうなのだが二人とも人間の姿は非常にイケメンなのでナンパの嵐に会ってしまったようである。
楓はその話をルシフェルから聞いた時にザマァとしか思わなかったのだが、二人は本気で疲れたのかだいぶグロッキーになっていた。
「まさか、僕たちに興味を示す女の子があんなにいたとは流石に思わなかったよ。自惚れとかじゃなくて、本当に大変だったよ」
「二人とも普通にイケメンだしな。アルは優しい系でルシフェルはガッツリ系ってところだな」
「人族も物好きが多いんだね。今日の主役はカエデだって言うのに」
「一応俺たちの結婚式だが、後半はほとんど祭りみたいな感じだったしな。いいんじゃないか?」
「僕もルシフェルもあんまりどんちゃん騒ぎが好きじゃないからね。どちらかと言うとこれからのパーティーの方が僕は好きかな」
どうやらアルはお祭りと言うよりもこれからの優雅な感じの方が好きなようだ。
一応アルも見た目ではまだ20代前半だが実年齢を考えると何千、何万と生きてきたドラゴンの中でもトップ2の存在なのだ。楓もそのことを考えるとアルの言っていることも頷けた。
その後もしばらく二人で話していたのだが、そろそろパーティーが始まる時間だとルシフェルが控室まで呼びに来てくれたので、三人は揃ってパーティー会場まで歩いていくのだった。
王城なのでメイドや執事などがかなりの数いるのだが、三人が横に並んでパーティー会場まで向かう様は実に逞しく三人を目にした者は皆一様に目を奪われ三人が通り過ぎるまで動けないのであった。
「旦那様、服にシワがついています」
「お、サンキューな」
「いえ、これでカッコよくなりました」
会場に着いて早々ミルが楓の服のシワに気づきそれをサッと直す。
楓はミルに礼を言って頭を撫でるとミルは嬉しそうに微笑みながら頬を赤くして楓のことを褒め出した。空気を読んで若干距離を開けているアルとルシフェルにまで温かい視線を送られていることに楓は若干イラっとしたが、二人が他の貴族の少女に声をかけられ戸惑っている姿を見てお返しとばかりにニヤァと実に腹立たしい笑みを二人に送る。
すると、二人とも器用に少女たちの相手をしながらも楓の方に無言の圧をかけてきたので楓は怖い怖いとにやけながらミルを連れて日向たちの元へと向かった。
「よう。そろそろ始まるんだってな」
「遅いよ楓くん。ずっとみんなで待ってたのにー」
「そうよ。ずっと待ってたのにカエデは何をしてたのよ?」
楓が日向たちの元へと向かうと皆少し不服そうにしながら楓に何をしていたのか聞いてきた。
問い詰めてきたのは日向とルミナだけだが、他の五人も気になるのか楓から視線を外すことなく楓が答えるのをじっと待っていた。
「……アルたちと休憩してたんだよ。って言うか、さっきまでずっと一緒にいただろ」
「それでも、パーティーの10分前にはきて欲しかったです。私たち全員貴族の方に見られてたんですよ?」
「まさか、マスターにはそう言った趣味があるのですか?」
「ヒストリア、そう言った趣味って?」
「多分、ナビが言っているのは私たちがいやらしい目で見られているのを楽しむ性癖でもあるのではないかって言いたいんじゃないの?」
一名ほどわかっていない天狐族の可愛い騎士がいたのだが、ヒストリアがしっかりとルーナの疑問に答える。
が、楓としたら全くの見当違いの答えに全力で否定したくなったが、そろそろパーティーが始まると言うことでさりげなく日向たち全員の機嫌をとりつつ、アルたちの元へと戻ることにした。
楓がずっと日向たちの元にいるとなかなか他の貴族が挨拶しずらいだろうと言うことで、マリーに日向たちの護衛を頼んで楓はアル達と一緒に他の貴族達に挨拶をしようと考えていたのだが……
「カエデ、僕たちのことを見捨てたね?」
「我らが今朝魂の半分を削ってカエデに感謝の気持ちを伝えたのにも関わらず、随分とひどいな」
「お前らも俺がミルに服装を整えてもらっている時ニヤけてただろ。お返しだ」
「「え?なんのこと?」」
「お前ら……はぁ、今回はどっちもどっちでチャラってことにしよう。それより、俺たちはなるべく女の人に絡まれないように気をつけよう」
「ヒナタ達の視線が怖いからね」
「うむ。我も彼女達を怒らせるのはよくないとカエデを通して学んでいるからな。頑張ろう」
二人とも日向たちを怒らせた時の怖さを近くで見てきただけあって怒らせてはいけないと学習しているのか、そこだけは三人で息を合わせるように頷いて協力して行動を共にすることになった。
これからパーティーが始まる。
楓は少しの緊張と自分のためにここまでしてくれるバルバトスたちに感謝の気持ちを胸に抱きながら、アルとルシフェルと一緒にパーティーを楽しむのであった。




