結婚式 4
「さてさて、で、弁明は?」
「反省はしているが後悔はしていない」
「はぁ……」
バルバトスは楓が全く反省していない様子に思わずため息をついてしまう。
実は、楓が変に騎士やメイドを煽ったせいで楓たちがいた場所はいい空気にはなっていたがそこに人がたまると言うことは全く準備が進まないと言うことでもある。
昨日からほとんど睡眠をとらずに今日の結婚式を準備してきたバルバトスからすれば朝の楓たちのしたことは非常に頭が痛くなるものだったと言うことだ。まず、打ち合わせもなしにルーナたちの正体を公にされてもバルバトスはなんのフォローも出来ないし、場が混乱するのも当たり前である。
「幸い、あの場にいたものたちが皆ルーナたちのことを非常に慕っていたから出来たことであって、もしそうでなければどうしていたのだ?」
バルバトスは怒りというよりも純粋な疑問のような感じで楓にそう聞いた。
現在楓は結婚式に出るためにタキシードに着替えたり、いろいろ準備をしているためこの部屋には日向たちはおらず多少のメイドはいるもののほとんど楓とバルバトスだけの空間となっている。
「ん? 強いていうなら信頼かな。俺だってたくさんの騎士や貴族を見てきているんだ。確かにさっきのような悪い貴族もたくさんいるのかもしれないけど、それ以上に親切な貴族もこの国には山ほどいるんだ。だから、俺はそいつらを信頼したんだ。たとえ、ルーナたちが獣人だろうともぎゃあぎゃあ騒いだりしないだろうと」
「なかなか面白い答えだな。だがそうだな。根はいい奴らばかりだ」
バルバトスは楓の答えがよほど嬉しかったのかそれ以上は言及することなく楓が着替えるのを静かに待っていたのであった。
ちなみに、バルバトスがお疲れのようだったので楓はジュースと偽ってエリクサー(りんご風味)をバルバトスに飲ませたところ一気に眠気が収まり見事元気な姿に戻っていた。
当然軽く怒られたが、当人が反省している様子は全くなかったのであった。
「ひ、日向たちか?」
「うん! 楓くんもかっこいいね!」
「似合いますか?」
「あ、あぁ、天使が七人俺の元に舞い降りてきたみたいだった。これは盛り上がるな」
楓と日向たちの準備が完了しいよいよ結婚式が始まるというところで八人は合流したが、その時に楓は七人全員があまりにも可愛すぎたため……というか尊すぎたため思わず全員を一度抱きしめてしまった。
ちなみに、今日の流れだがまず王城の敷地の中に今回のために特別に作られた施設で楓たちの誓いの儀を行う。
その施設は楓たちの親族と他に貴族と平民でそれぞれ抽選で五十人ずつ入れるようになっている。
楓たちはそんな抽選にするほど人が来るとは最初は思えなかったのだがそのチケットの倍率が貴族で20倍以上平民に関しては2000倍以上にもなったらしい。一応有料にするらしく、決して安いものではないのだがそれでもこの倍率に楓たちも苦笑いになっていた。
施設で誓いの儀が終了すると今度は場所を移動し王城から敷地や街を見渡せるところにまで移動して他の楓たちのことを見ることができなかった人たちのためにそこで楓たちが少し話すことになっている。
ちなみに、ここでは楓の魔法とスキルを駆使してマイクのようなものと町中に楓たちの様子が映るようになっている。
流石に楓たちも恥ずかしかったのだが、この時すでに楓たちの結婚式を記念日にしてお祭りのようにするのは決定されていたためバルバトスに二つのことを強制されるのであった。
「いよいよだな」
「緊張する!」
「人生最初で最後の出来事ですしね。私も楽しみです」
「そうね。こうして幸せな結婚ができるのだから、私は幸せ者だわ」
「それは私もです。カエデ様と出会えて、本当に嬉しいです!」
「マスターのスキルとして生まれて、何度も言いますがこうなるとは思いませんでしたよ。ですが、私もとっても幸せです」
「カエデがこうして私たちの本来の姿で大好きな人と結婚をさせてくれた。私もとっても幸せだ」
「うん。ダーリンとなら私もずっと楽しくて幸せな毎日を過ごせそう。ダーリン、私たちをみんな幸せにしてね?」
「任せろ。今日はその第一歩目だ!」
楓はそう言って楓たちを待つ人たちのために向かって、八人全員で横に並んで大きな拍手の中一番奥の神父とバルバトスの待つところまで向かう。
八人が横に並んで移動するため非常に大きな扉だったが執事さんはよどみなく開けることに成功していた。
楓たちの姿が見えた瞬間見ている人たちは一層拍手が大きくなり、何人か日向たちとの姿に見とれて鼻血を出しているものもいた。
ゆっくり、みんなに見てもらえるように本当にゆっくり歩きながら、約50メートルほどある長いバージンロードを五分くらいかけながら楓たちは歩いていたがバルバトスたちの元へと到着するまで一切拍手は鳴り止む事はなく、バルバトスたちの元へと着いた時もいい雰囲気で次の言葉を続けられた。
「汝、健やかなるときも、病めるときも、喜びのときも、悲しみのときも、富めるときも、貧しいときも、これを愛し、敬い、慰め合い、共に助け合い、その生命ある限り真心を尽くすことを誓いますか?」
なんと、神官ではなくバルバトス本人が楓たちに誓いの言葉を行った。
これには、周りも一瞬驚いた様子だったが皆すぐに楓たちの方を注目した。
「「「「「「「「はい。誓います!」」」」」」」」
「では、指輪の交換を」
バルバトスがそういうと楓はストレージの中から一人ずつ同じデザインの中心に入っている本当に小さい宝石だけがイメージカラーでそれぞれ色が違う指輪を丁寧に左薬指にはめていく。
ちなみに、みんなには婚約指輪を渡してあったが今回は事前にそれを外してもらっていたのでみんな指輪は一つだけしかはまっていない。
楓が日向たち全員のをはめ終わると今度は楓の妻を代表して日向が楓の左薬指に日向たちが全員で創った指輪をはめた。
これには七人全員の魔力が宿っており、それが楓と同じように小さい宝石の中で永遠に宿り続けてくれるものである。これを創るのに日向たちは非常に頑張っていたが今はそれはおいておこう。
指輪の交換が終了すると最後に楓がまた一人ずつにゆっくりと誓いのキスをかわしていく。
皆、幸せそうにしながらもすごく恥ずかしそうに目を瞑って楓からのキスを待っているのが可愛すぎて、抱きしめたい衝動に駆られた。しかし、流石にここで抱きつくのはまずいと必死に我慢しながら、最後のヒストリアまで全員にキスをした。
「今、この者たちは天の父なる神の前に夫婦たる誓いをせり。神の定め給いし者、何人もこれを引き離すこと能わず」
楓たちのキスを見届けるとバルバトスが最後にそう言いそれと同時に先ほど楓たちが入場してきたとき以上の勢いで拍手喝采となり、それから楓たちが退場するまでの間ずっとその勢いが絶えないままなり続けるのであった。




