貴族会議 5
「我はルシフェル。異世界の魔王なり」
ルシフェルが不敵な笑みを浮かべながらそう言うが誰も何も反応しなかった。
否、できなかったと言うべきだろうか。
「貴様らが今、偽物と言っているのはこの魔王ルシフェルとその主人だぞ?信頼を得たい?目立ちたい?戯け。
そんなことせずとも我々が本気でこの国を滅ぼそうとしたり占拠しようとすれば十秒とかからず可能だ。今尚、この世界では魔王が人族を滅ぼそうと策を練り、力をつけているのだぞ?貴様らはそれを自覚しているのか?」
ルシフェルは貴族たちに向かってそう言い放つ。
先ほどから、ルシフェルは魔王の覇気か何かはわからないがルシフェル独特の覇気を体にまとわせて一切の有無を貴族たちに言わせない雰囲気だった。
護衛も、生で見る魔王に自信を砕かれたのか、それとも単に生物的な格の違いを知ってしまったのか足を震えさせて一歩も動くことができていなかった。
「それに、なんとも頼りない護衛だな。我が魔王だとわかったのなら攻撃の一つでも仕掛けてくればいいものをどいつもこいつも足を震わせているだけか。貴様らも随分と頼りになる護衛を連れてきたものだな」
ルシフェルは貴族たちに向かってそんな皮肉を言う。
よほど、先ほどの楓に対する態度が気に入らなかったのかルシフェルも機嫌悪そうに貴族たちに向かって煽りを入れている。
「い、異世界の、魔王だとっ…!」
「なぜ、魔王がこんなところに!」
「ん?カエデが我を召喚したのだ。あぁ、魔王ではあるが別に我は人族を滅ぼそうなど思っていないから安心してくれ。我はカエデたちを邪魔するものには容赦はしないがそれ以外の人族には興味がない。言っている意味がわかるな?」
つまり、この場においてこれ以上楓のことを悪く言うつもりなら容赦はしないと言うことだ。
反対派の貴族たちはルシフェルの言っていることがハッタリでもなんでもないことに気がつくと急に静かになりだした。
ミルのお父さんは目に手を当てて何やら大きくため息をついている気がするが楓としても結構うざかったのでこのくらいは許してもらう気満々だ。
「ルシフェル、その辺でいい。みなさん、安心してください。私たちに危害を加えない限りこちらからは何もするつもりはありませんから。それに、言っておきますがルシフェルがいるから強気に出ているわけではありませんよ。少なくとも今のルシフェルの順位は私を除いても3位です。他に2人強い人物がいます」
「ちなみに、カエデに関していえば我ら『無限の伝説』のメンバー全員でかかったところでかすり傷ひとつつけることができないから主人であるカエデがただ命令するだけの能無しだと考えないほうがいいぞ。むしろ、何においてもカエデは常に1番だからな」
2人はただ事実を言っているだけであったが聞いている方からしたら溜まったものではない事態になってきている。
今は、ルシフェルの覇気のおかげで誰も楓たちに反論する気にはなれないだろうがこれはこれでいろんな意味でこれから目立ちそうである。
「カエデよ。他の者たちが声も発せられないようなので今一度とおう。君は、本当にこの国を滅ぼしたり占拠したりするつもりはないのか?」
「はい。先ほども言いましたが、この国が正常に、いい政治を行っているのであれば私たちは何もしません。ただ、私たちに害をなすものがいたり、害をなしているところを見つけたならば容赦はしません」
「その返事が聞けただけで十分だ。どうだ?これでも、まだカエデのことを否定するものはいるか?」
ミルのお父さんは楓にそれだけ確認すると他の貴族たちに向かってそう問いかける。
流石に、魔王を名乗るルシフェルの前では貴族たちも下手なことは言えないらしく黙ってミルのお父さんの言うことに頷くだけだった。
「うむ。で、あればこの会議はこれで終わりとしよう。ただ、最後にルシフェル殿に聞きたいことがある」
「なんだ?」
流石にミルのお父さんもルシフェルのことを呼び捨てにするのは気が引けたらしく殿をつけてルシフェルの名前を呼ぶ。
「先ほど、この世界の魔王について話をしてくれたが、それをここでもう一度詳しく説明してくれないか?」
ミルのお父さんには、以前にこの世界の魔王や魔族については説明したが貴族たちには何も話していない。
これを機に他の貴族にも魔族について少しだけ知っておいてもらおうとミルのお父さんなりの決断であった。
「構わん。魔王についてだが、もうすぐ新たな魔王が決まり、それと同時に本格的に人族を滅ぼしにくるだろうな。なんのために勇者召喚をしているのかわからないこの現状では貴様ら人族に勝ち目はないだろうがな」
「そ、そんな!助けてくださらないのですか!?」
「なぜ、我々が貴様らのために戦わなければならないのだ?先ほどまで散々好き勝手言っておきながら虫のいい話だな」
「で、ですが…」
「まぁまぁ。これ以上、みなさんが私たちにちょっかいをかけてくることなく、さらに私たちがこの国を捨てたくないように思わせることができたなら私たちは喜んで魔王を倒しに行きましょう。きっと、ルシフェルくらいなら1人でも倒しにいけちゃいますよ。魔王と言ってもその程度です」
今のルシフェルは以前言ったように歴代の魔王の中でも最強に等しく、さらに楓のおかげで頭がおかしいくらい強くなっているので全く参考にならないがそれでも楓は無理矢理そういって話をまとめる。
ようは、楓たちがこの国を好きになったら力を貸すと言うことである。
楓としては最初から魔王を倒す気でいたがこう言っておいたほうが今後のためである。
「そうだな。では、カエデたちに認めてもらえるように私たちは頑張って善政を敷いていけるよう、皆で頑張ろうではないか。これにて、貴族会議を終わりとする」
ミルのお父さんが最後にそう締めくくり貴族会議はお開きとなった。
護衛で来た騎士や傭兵たちには申し訳ないが楓たちもいちいち相手にするのが面倒臭かったのでそのまま震えておいてもらうことにする『無限の伝説』なのであった。




