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修羅場 2

現在、楠木家のリビングではもの凄い緊張感に包まれていた。


ただ、それを感じ取れるのは楓達の様に一定の実力がある者達限定で一般人である蓮と春菜はそんなの全く気にした様子もなく食事をしていた。


「ねぇ、蓮はどの子が気に入っているの?」


「ん?俺はあの青髮の子だ。何でもまだ兄貴とは付き合ってないらしいし洗脳を解くのも簡単だろ」


「おい、勝手に仲間に手を出すな。あと、ナビだけじゃないがみんな俺の仲間だ。何勝手にお前が彼女にする前提で話を進めているんだ?」


流石に、楓も我慢の限界が来た様で先程から好き勝手言っている蓮を注意する。


「だーかーら。さっきから言ってるだろ?日向ちゃん達は俺のものだ。さっさと洗脳を解け。このクズが」


「調子に乗るのもいい加減にしろ。流石に我慢の限界だ。そろそろその口を閉じねぇと殺すぞ?」


「ねぇ楓。あなたももう裏切られたくはないのでしょ?女々しいわよ。さっさと蓮の言う通り洗脳を解いて彼女達を渡しなさい」


楓が蓮を殴ろうと立ち上がると春菜が面白そうに笑いながらそんな事を言ってくる。隣で蓮もニヤニヤしている。


まるで虎の威を借る狐である。


「はっ!私が遊んであげたときはもっと犬みたいで従順だったのに。いつからそんな反抗的な態度をとるようになったの?」


「そんな訳だからさっさと彼女達を解放しろ。お、早速一人洗脳が解けたみたいだぞ」


楓がもう我慢の限界だと蓮に向かって魔法を発動しようとするとそれよりも前に一人の少女が蓮に向かって歩いて行った。


「な、ナビ?」


そう、ナビである。


楓は、ナビが蓮のものになってしまうと考えた瞬間途轍もない消失感にとらわれた。何だかんだでいつもツッコミをくれたナビが。異世界に転移して一番最初から心の中でふざけあっていた仲間が蓮の元へと向かおうとしている。


いや、それ以上に楓はナビの事が好きだったのだろう。この胸の苦しみ、以前春菜に振られた時の様に楓の心の奥底がキリキリと痛む。


また、失ってしまう。そう思った瞬間、楓の目には涙が溢れてくる。


「ナビちゃん…だっけ?やっと解放されたんだね。さぁ、俺の彼女n…」


パァン!


蓮が最後まで言い終わる前にナビのビンタが蓮の頰に炸裂した。これには、先程迄ニヤニヤしていた蓮も、そして楓も固まってしまう。


「いい加減にして下さい。洗脳?戯け。マスターがそんな事をすると思っているのですか?」


「あ、あぁ、だっておかしいだろ!?何であいつの周りにばかり女が群がってくるんだよ!あいつが何か洗脳していないと説明出来ないだろ!」


「それはただ単にマスターが格好良くて貴方が普通だから、そして貴方がクズだからでしょう?」


ナビは蓮を睨みながら言い負かしていく。


楓達はただ、それを呆然と眺める事しか出来なかったがナビはどんどんと蓮を追い詰めていく。


蓮もまさか、手に入ると思っていた女の子にボロカス言われ、戸惑いの方が勝っている状態だがそれでも無茶苦茶理論を展開させながらナビに反抗している。


「五月蝿い!あいつはクズなんだ!いなくなったと思ったら急に女の子を侍らして帰って来るし。あんな奴のどこがいいんだよ!お前なんて死んでしまえばいいんだよ!」


「そうよ。貴方にはうんざりだわ楓。さっさと私達の視界から消え去って」


「いい加減にしろ!貴方が、貴方がマスターに深い傷を負わせたんでしょう!どれだけマスターが心の中で傷付いていたのか、貴方には分かりますか!?あれから、マスターはずっと苦しんでいたんです!貴方が他の男に愛想を振りまいている最中もずっと!いい加減な事を抜かさないで下さい!私の大好きなマスターをこれ以上傷付けないで下さい!」


ナビは泣きながら、春菜に向かってそう言い切った。


最後まで言い切るとナビは目を隠す様に覆いながら肩を震わせて泣いていた。


「このクソ女が!いい加減にしr…」


「そこまでだ。俺の女に手を出すな」


春菜がナビを叩こうと手を振りかぶるがそれが下される事はなく楓に阻止される。


「ま、マスター?」


「ごめん。ありがとな。おかげで全て断ち切れた。こんな女の事は忘れてナビ達の事をしっかり見るよ」


「な、なんですってぇ!女に手をあげるとか最低!さっさと離しなさい!」


楓はナビに一言、心からのお礼を言うと春菜の腕を持っている手を少し強める。


「俺の女に手を出すんじゃねぇ!」


「俺のセリフをパクるな」


蓮は春菜を助け様と楓に向かって殴りかかるが楓はそれを簡単に防ぐ。


「目が覚めた。もうお前に囚われたりしない。これで決別だ。蓮も、お前に彼女達は渡さない。兄貴を舐めるのもいい加減にしろ」


「クソがぁ!俺だって力を手に入れられればお前なんて一瞬で!」


「そんなに簡単にマスターの力が手に入るとでも思っているのですか?」


流石に呆れたのかいつもの調子に戻ったナビがそう言いながら楓の隣に立つ。その際にそっと楓の服を離さないぞと言いたげに強く握った。


「どうせ、ラノベみたいに棚ぼたで貰った力だろ!」


「そんな訳ないじゃないですか。何なら体験して見ますか?マスターの1兆分の1の刺激ですが」


「あぁ、やってみろ!どうせ大した事…う、うぅ痛い!痛い痛い痛い!やめてくれ!」


「今の1兆倍の苦痛をマスターは約一千年耐えきったのですよ?それでもまだ棚ぼたと言えますか?」


「え、俺千年もあそこで耐えてたの?」


楓にしたら数日、長くて1ヶ月だと思っていたのだがどうやら違う様だ。


「あの空間は時間の流れが違いますからね。マスターも同じ事が出来るでしょ?」


「あぁ、そう言う事か。ナビ、サンキューな」

どうやら、楓が最初にイリアに連れられた空間は時空魔

法で時間の流れが違ったらしい。楓はナビにお礼をいってナビの手を握る。


「はい。私の2個目の願いはまた後で聞いて下さいね」


ナビもそれに応じる様にそう言ってから楓の手を握り返した。


もう、先程の様な苦しみはなく今はただただナビの気持ちが分かって幸せな気持ちでいっぱいだった。


「おう!さて、春菜もそう言う事だ。悪いな。もう、お前はどうでも良くなった。そこで転がっている蓮の介護は任せたぞ」


思いの外、痛かったのか蓮は無様に転がりながら未だに頭を押さえて何やら震えているが楓は見向きもしないでナビと一緒に日向達の元へと戻って行く。


最後に春菜が何かを言ってそのまま出て行ったが楓は全く聞いておらず安心した様子の日向達の元へと戻って行くのであった。

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