いざ日本へ 1
「楓くん!今日だよね!」
「あぁ、しっかり準備も出来ているから朝食を食べ終わったらみんなで行こうな」
「うん!」
今朝から日向はかなりご機嫌である。やはり、自分の故郷に帰れるのが相当嬉しいのだろう。
昨日はオークの巣を破壊した後は転移魔法で一瞬で王都迄帰って来る事にした。
と、言うのも楓から最上級の武器を貰ったブレイン達は放心状態になってしまい王都迄馬車で帰れなさそうだったので転移魔法で帰って来たと言う事であった。
王都に帰って来てもギルドにいって色々やるべき事が残っていたのでそれ迄ブレイン達には頑張って貰ったがそれも出来るだけ早く終わらせてブレイン達とは別れる事にした。
パドンには何をしたのかかなり質問されたのだが楓達はいたって普通の訓練をしてクエストを受けて来たとだけ言っておいた。
武器の話をすると、それ目当てでパーティーを組むと言いそうな冒険者が多い為一応黙っておいた。まぁ、ブレイン達の武器がいきなり変わっていたらだいたい分かるだろうがそれでも楓は道ゆく人全員に武器を作る積もりは毛頭ないので何か聞かれても何も話す積もりは無かった。
あれは、ブレイン達がカエデの訓練を乗り切った事によるご褒美でもあるのだ。
一応言っておくがあの訓練は普通なら簡単に根をあげても良い位厳しいものだった。決して楓が言ったAランク冒険者になる事が出来ると言うのもただ根拠無しに言ったと言う事ではないのだ。
彼らが頑張ればそう遠くないうちにAランク冒険者になる事が出来るだろう。その才能はある。後は本当に彼ら次第だ。
と、言う訳でパドンから受けたクエストはしっかりとクリアしこれで何の憂いもなく日本に帰る事が出来る。
「ヒナタ、相当嬉しそうですね」
「故郷に帰れるんでしょ?当然じゃない?」
「ですがヒナタのあの様子は初めてですね。カエデ様はそうでもない様ですが…」
「マスターは故郷には黒歴史をたくさん残して来ましたしね。そのせいでしょう」
ミル達は日向の様子を見て少し驚きながら話をしていたのだが最後のナビの発言のせいで視点が日向から楓に変わる。
「ナビ、その事は黙っていてくれると…」
「どうしたんですか?モテすぎて増長したのかめっちゃイキリ倒して男子友達からボコボコにされたマスター」
ナビはここぞとばかりにニヤニヤしながら楓の過去の失態をバラし始める。
「お前…あれは本当に一時期の気の迷いだったんだよ。ちょっと厨二病をこじらしたんだ」
「あれって厨二病何でしょうか?」
「多分…ってそんな事はどうでも良い。っとそれより日本に行った時の話をするぞ」
楓はこの話はここで終わりだとでも言いたげに話を強制的に終わらせ日本に行った時の注意事項等々を全員に説明する。
ナビは不満そうに「話を変えましたね…」と言っていたが楓はそれを無視して日向達に説明を始める。
「えーっと、まずはお金についてなんだがそれを解決するのがこれだ」
楓はそう言って30センチくらいの立方体の箱を人数分取り出した。
「これはこの世界のお金と日本のお金を変換してくれるアイテムだ。各々かなりのお金を持っていると思うがそれをこの箱の中に入れると日本の通貨になる筈だ」
楓はそう言いながら実際に箱の中に金貨を一枚入れてしばらく待つとポンっと軽快な音が箱の中から鳴る。
その音が鳴り止んでから箱の中を覗いてみるとそこには日本で使われている1万円札が10枚入っていた。
「しっかりと変わっているな。と、こんな感じで向こうで使われているお金になる。これを人数分渡すから使ってくれ」
「凄いねこれ」
「えぇ、これを作るのに時間が?」
「あぁ、流石に他の世界の通貨に変えるとなるとそこそこ時間が掛かってな」
日向達は実際に金貨を入れたり白金貨を入れたりして日本円に変えながらその便利な道具に驚きの声を上げていた。
「それと、向こうに行ってからなんだけど日向はどうしたい?」
「向こうがどうなってるかにもよるけどとりあえずお父さんとお母さんには挨拶しに行きたいな。ほら、楓くんと結婚した事とかね?」
「あー、なら俺も一緒に行って良いかな?お父さん達に挨拶しに行きたい」
「良いけど、うちすっごい親バカだから大変だと思うよ?」
「それも、一つの試練だと思うよ。何が何でもお父さんを納得させてみせる」
楓はそう行って日向の手を握る。その時の様子を想像していたのか若干手が震えていたのでその為だ。
「じゃあ、一緒に行こっか。その間ミル達はどうするの?」
「とりあえず俺達の扱いなんだがやっぱり集団行方不明としてかなりニュースになってたっぽいから親以外の知り合いに会うのは控える方針で行こう。ミル達にはホテルを予約しておいたが俺の部屋を事前に拡張しておいたのでそっちでも良いぞ」
「じゃあ旦那様の部屋で」
「愚問ね」
「ですね。そんなの一択ですよ」
どうやらミル達はカエデの部屋をご所望の様でさも当然と言った様子である。
「僕達はホテルでいいや。君達は仲良く…ね?」
「我もアルと同じでいいぞ」
男性二人はホテルでいいらしい。最後のカエデに向けたアルの「ね?」にはいろいろな意味が含まれていたのだろうが楓は反応したら負けだという風に無視をしてそっぽを向いたが顔が真っ赤だったので全てが台無しである。
「さて、そんな事よりも向こうに行ってからの事だ。それと…日向は少し落ち着け」
「はーい」
楓は誤魔化す様に話を強引に進めつつ、すでに朝食を食べ終わりそわそわしている日向を注意して説明を始めるのであった。




