魔物殲滅戦の後に 1
「ふぅ、終わったか」
楓は最後のSランク級の魔物の命を刈り取るとふぅーっと一息ついて武器をストレージの中にしまう。
意外とSランク級の魔物が多く全体の半分以上がSランク級の魔物となっていた。
「それにしてもナビちゃん様様だな。倒した魔物を自動的に俺のストレージの中に入れて整理してくれるのは正直滅茶苦茶ありがたかったぞ」
『もうしばらく働きたくありません…』
「日向達の狩ったのはそのまま放置されてるからその回収は必要だけど…だいたい俺で何体位狩ったんだ?」
『Sランク級の魔物が2000体Aランク級が1000体と魔物の約六割をマスター、一人で討伐されました。ちなみにドラゴンはマスターが召喚した魔物が300体、マスターが700体と全体の三割から四割を討伐されました』
んー、やっぱりユージと戦った事もあって結構しょぼいな。俺だけで七割討伐はいきたかったな…
『ですが、マスターでないともっと被害が出ていたので適材適所ですよ』
まぁ、アルが戦っていたら確実に龍化してえらい事になってただろうな。
「さて、早く日向達と倒した魔物について相談するか…」
楓はそう言って日向達の元へと転移魔法を使い転移するのであった。
「よ、全員揃ってたんだな」
「あ、楓くん。うん!楓くんが最後迄狩ってくれてたからね」
楓が日向達の元へと転移するとそこにはすでに日向達だけでなくアルやルシフェル、ルミナ達も集合していた。
「ルシフェル、そっちはどうだった?」
「どうだった?ではない。カエデもちょくちょく下からドラゴンを倒していたではないか。まさか片手間の奴にあそこ迄持っていかれるとは思わなかったぞ」
「旦那様は地上の魔物の討伐数も半分以上一人で倒していますよね?」
「俺的にはもっと一人で狩る積もりだったんだがな。相手の黒幕と遭遇したのとお前らが優秀だった事もあって大体全体の五割程度だったよ」
「相手のボスと戦って五割っておかしいよ?伝説龍の僕と魔王のルシフェル。そしてこの国の精鋭さんがいるにも関わらず五割だからね?」
楓がなかなか満足していない様子なのを見て他の面々は唖然としている。
「まぁ、終わった事はいいか。それよりルーナ。この魔物の分け前はどうする?」
「正直全部カエデ達が持って行っていいと思っている。だがそれではカエデは反対するだろ?だから私たちチームで倒した分の3分の1をいただけると嬉しい」
「それだけでいいのか?正直あまって仕様がないんだが…」
「もし必要ないのなら騎士団や宮廷魔術師に直接売ってくれ。私達は今回、連れて来て貰った側だ。これ以上は受け取れない」
「そうか…なら、まだ相手の兵士と第1防衛ラインの面々は戦闘中で俺達は参加出来ないから今の内に分配を済ませてしまうか」
楓のその提案により自分達で倒した魔物やドラゴンの元へ戻り、各々で魔物を回収していくのであった。
日向達は魔物はいらないしアイテムバッグの中がかさばるからという理由で全て楓に回収して貰ってアルやルシフェル達は数体だけ自分達で回収して残りはやはり
楓に回収して貰う事にしていた。
ルーナ達も自分達で持って帰る手段がないという事で結局楓が回収して帰るのであった。
『マスターはSなんですね?分かりますよ。私がさっきしんどいって言ったのにもかかわらずまだ整理をさせるのですね?』
ごめんって。落ち着いたら絶対なんでも言う事聞くから。
『言いましたね?何でも良いんですね?』
いや、出来る範囲で…
『マスターに出来ない事ってあるんですか?』
いや、ないな。
『楽しみにしておきます』
ナビちゃんはすっかり機嫌を直したのか嬉しそうな声でそう言うのであった。
俺が言うのもなんだが…ナビちゃんも結構ちょろいな。
『何か言いましたか?』
イエ、ナニモ…
楓はその後、機嫌を直して貰ったナビちゃんにストレージの整理を頼みつつ、アルとルシフェルの数体以外の全ての魔物を回収していくのであった。
楓が回収し終わる頃には、第1防衛ラインでの戦闘も終了しておりその結果は精霊の援護もあってか負傷者は多少いたものの死者0名と言う奇跡的に死者を出さずに勝利する事になったのであった。
「ただいまー、こっちも上手くいったみたいだな」
「「「「「カエデ様、ありがとうございました!」」」」」
楓達が転移魔法で第1防衛ラインへ帰って来ると騎士や宮廷魔術師達が楓を見付けるなり土下座に近い勢いでお礼をしてきた。
楓の呼び名も楓さんから楓様に変わっている。
「カエデ様の召喚して下さった精霊のお陰でこちらもかなり余裕を持って倒す事が出来ました!あなたは僕達の命の恩人だ!」
「そうそう!魔物を最前線で倒して下さったのもそうだし…カエデ様は英雄だ!英雄の誕生だ!」
「は、はぁ…まぁ無事で何よりだ」
「おい!カエデ様から労いの言葉を戴いたぞ!みんな!頑張った甲斐があったな!」
「「「「「おぉぉぉ!!!!」」」」」
半ば予想していた事だが帰ってくるなり殆ど全員が楓を英雄視しており楓が少し労いの言葉を掛けただけで涙を流して喜んでいた。
『さっきも言ってましたが考えるだけ無駄ですよ』
そうだな。考えるだけ無駄だな。
「よし、帰るか」
「あれ、意外と平気そうだな」
「考えても無駄だからな。俺達はこのまま王都の前迄転移した方がいいのか?」
「いや、その事なんだがカエデ達にはこのまま1日だけここで待機して貰いたい。凱旋の主役が先に帰ってますでは住民達も冷めてしまうだろ?疲れてる所悪いが1日だけ私達に時間をくれないか?」
ルーナはとても申し訳なさそうに楓にそうお願いをする。
多分、前から決まっていた事なのだろうがなかなか言い出せなかったのだろう。
「別に良いぞ。それじゃあ俺達はここに亜空間テントを設置して1日野営か。どうせルーナ達もだろ?女子用のテントの中に二人分のベッドを追加で用意しておくよ」
「すまない…ありがとう」
「おう。じゃあ俺達は向こうで準備をしてくる。ルーナ達も終わったら来てくれ」
楓はそう言うと日向達を連れて野営の用意をしに少し離れた所に移動する。
何故、場所を変えるかと言うとここでは他の騎士や宮廷魔術師達が興奮して作業が進まないだろうという楓の配慮である。
「ありがとう。私達の英雄さん」
「ヒストリアもその一人だ。絶対に巻き込んでやる」
別れ際に、ヒストリアに向かって笑顔でそう言うと楓達はバレない様にそっとその場から離れるのであった。




