魔物殲滅戦準備 5
「カエデ、しばらくここで待っててくれ。合図をしたら全員で出て来てくれ」
「りょーかい。そう言えばヒストリアは?」
「先に準備している。あいつは私と違って準備が遅いからな」
「あー、まぁ分かった。ルーナが合図をしたら出ていけば良いんだよな?」
「あぁ、それじゃあ頼む」
ルーナはそう言って控え室から出て行く。
意外と王城からルーナの言う場所迄は思ってたより時間が掛かり、改めて王城の大きさを痛感した楓達だった。
今はルーナとヒストリアが先に騎士や宮廷魔術師達に挨拶と軽い説明をするみたいだ。
今回の作戦の隊長はルーナとヒストリアなので楓達の事ももちろん先にルーナ達から説明される。
もちろん楓達の失敗もルーナ達の失態に直結するので、これからの楓達の言動等ももちろんルーナ達の責任になってくる。
「俺達がいらない事をしたらルーナ達の責任になるのか…重いな」
「でも、ルーナさんは全く心配してなかったよ。楓くん、信頼されてるんだよ。だからがんばろ?」
「あぁ、多分良からぬ事を考えている奴らもいるだろうが全て叩き潰してやろう。俺達が逆にルーナ達の功績になる様に頑張ろう!」
「「「「「おー!!!」」」」」
楓は気合を入れる様に全員に声を掛けると日向達はそれに乗っかる様に声を合わせて全員で気合を入れなおす。
このメンバーならどんな事が苦難が来ようとも乗り越えられる。楓はそんな事を思いながら笑顔で気合を入れている日向達を見ているのであった。
「カエデー!出番だ」
「いや、もっと演出を考えてくれよ…」
楓達が円陣を組んでしばらくすると外からルーナのそんな叫び声が聞こえた。
声が拡張されてたから拡声マイクか何か魔道具を使っているのだろう。そう言った魔法もあるが、そもそもルーナは魔法が人並み程度しか使えない為、多分使えないだろう。
「呼ばれ方があれだがここでもたもたしていても仕方がないから行くか」
「そうですね。それにしてもルーナは周りの事を考えてですね…」
ミルも何やら思うところがあるらしく不満げにそう呟いていたが、楓はそれをなだめて先陣を切ってルーナの元へと向かう。
「お、来たな。皆に紹介する。一部の者はすでに知っていると思うが今回の作戦の要になるクラン『無限の伝説』達だ。とりあえず自己紹介をして貰おう。カエデ、よろしく頼む」
ルーナはそう言って一歩下がり楓に一歩前に出る様に促す。
楓は一瞬でルーナの意図を汲み取り、現在いる位置より一歩前に出て軽く息を吐く。緊張していないとはいえ5万もの人の前で自己紹介をするのは初めてだ。
目の前に拡声マイクの様な魔道具がある事からそこから声を出せば良いのだろうが全員が楓を見ている為、楓は一瞬体を強張らす。
「楓くん、頑張って!」
楓が若干緊張しているのが分かったのか後ろから日向がとても小さい声で、それこそ楓と日向にしか聞こえない様な声で楓に応援のエールを送った。
楓は後ろを見ない。見なくても、日向なら今のこの感謝の気持ちが伝わる筈だ。
「ご紹介に預かりました。『無限の伝説』のクランマスターである楓です。今回はルーナ様とヒストリア様に推薦されて今作戦に協力させていただきたいと思います。よろしくお願いします」
楓がそう自己紹介をすると半分位から拍手が送られた。
中には楓に実際に訓練を見て貰い実力が向上している者もいた為、そこら辺の騎士や宮廷魔術師達は凄い熱狂的に拍手を送ってくれた。
今の反応を見るに3つのタイプの反応があり一つはさっき言った様な歓迎の反応を見せる者達が五割。
二つ目は楓達が若者という事もあり本当に作戦の要になるのかといった心配や訝しみの反応を見せる者達。これが大体四割位だ。
そして極僅かだが所々で楓を睨んでいたり恨んだ目で見ている者達が一割いた。
分かってはいたが一割も面倒な相手がいるとは思ってもいなかったので楓は自然と苦笑いを笑みを浮かべていた。
「後ろにいる者達もかなりの実力を持っているので今回の作戦では貢献出来るかと思います。もし不安があったり僕達の実力を測りたい方がいるのならルーナ様の指示通り模擬戦を受けて立ちましょう」
楓は一瞬ルーナの顔を見て許可を得ると約五割の楓達を歓迎していない騎士や宮廷魔術師達に向けてそういう。
楓のその発言を挑発とでもとったのか、所々で殺気の様なものを飛ばしてくる者もいたが、ここで不安要素を取り除いておかないともっと面倒臭い事になるので楓はもう一度気合を入れていく。
「さぁ、忙しくなるが全員ささっと片付けていこう」
「「「「「おー!」」」」」
これから模擬戦の嵐だろうが全員で乗り越えていく。楓達がこの状況に全く臆していない事に不思議に思う騎士や宮廷魔術師達だったがその数分後、楓達が余裕だった根拠を身に染みて感じるのであった。
 




