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第9話 果物屋ミーアの奮闘記 その1(ジンイチローとの出会い)

果物屋の回想です。少し短いです。

※7/4 修正しました

 暑いのです。いつものことだから仕方がないのですが、それでもつぶやきたくなるのです。 

 果物屋の売り子として毎日私はここに立ちます。家業だから手伝うのは当たり前ですが、一番大変な仕事を任せられているのです。果物の仕入れは父の仕事です。どこで仕入れているのかは全くわかりません。「明日はこれを売れ」と言って、どっさり果物を入れた木箱を置いて寝るのです。とても売り切れる量ではないのです。

 でも、これが不思議なことに、みんな買っていくのです!口々にみんな「うまかったからまた買う」と言って立ち寄ってくれるのです。父に何の実か尋ねるのですが教えてくれません。だから仕方なく、謎の実を売る売り子をするのです。あ、もちろん普通の実もありますよ。


 そんな毎日を繰り返している私ですが、つい先日、友達が結婚しました。

 これで5人目です。私はみんなに置いていかれました。18歳は適齢期です。みんな男の子とすぐ仲良くなり、あっという間に結婚です。

 私だってボヤボヤしていたわけではないのです。男友達もいっぱいつくった()()()でした。ある日言われました。


『お前、妹みたいで気楽に話せるわ』


 本当にショックでした。大好きな人でした。その日は泣きました。夜、一人で泣きました。

 もっとショックだったのは、3番目に結婚が決まった友達が結婚するという話を聞いたときです。その友達が結婚相手を紹介すると言い、友達みんなで彼女のところへいったとき、紹介された相手がその彼でした。


 私、がんばって笑顔にしました。大事なことです。


 でもこれは友達にも言えません。みんなに気を遣わせてしまいます。


 みんなは幸せそうです。もちろんそれは嬉しいことです。1番目に結婚が決まった友達は子どもを産みました。かわいくて、ふわふわで、甘いにおいがしました。

 でも私には届きそうにない、大きな幸せです。


 みんないるけど、ひとりぼっちなのです。


 ハッ!いけない!こんなに暗くなっては幸せが逃げるのです!

 だから私はニコニコするようにしたのです。ニコニコすれば、みんな笑ってくれるのです。みんな笑えば私も嬉しいのです。そしたら今度は知らない誰かが幸せになるのです。そしたら今度は私に幸せを返してくれるかもしれないのです。

 だから今日も、ニコニコするのです。

 そうしたら、きっと私にも素敵な誰かが現れるのです。

 そう、あんなイケメンさんに声をかけられちゃうかもしれないのです。


・・・って、うわ!イケメンさんじゃないですか!思わず流してしまうとこだったのです!


 黒髪さんなんて珍しいのです。黒髪さわやかイケメンさんです!

 私の好み、そのまま直球です。ど真ん中です・・・。あんな人が私に声をかけてくれたら嬉しいのです。でも、私はただの果物屋の売り子なのです。観光で来ているかもしれないイケメンさんは、私のことなんて目に入らないのです・・・。

 でもイケメンさんはキョロキョロ見回しています。何かを探しているのですね。


・・・え、あれ、あわわわわわ!目が合いました!目が!目がぁあああ!


 しかも近寄ってくるのです。まさか、私を探していたのですか!そうなんですね!果物を買いたいからここに来るわけではありませんよね!

 ・・・忘れていました、ここは果物屋さんです。果物を買いに来たのですね・・・。

 イケメンさんはもう目の前です。来ちゃいました!もう目の前です!


「い、い、いらっしゃいませ!」

「すみません、ちょっと聞きたいんですけど」

「はいっ!何なりと!」

 もう!何でこんなときに声が上ずっちゃうんですか!最初が肝心なのですよ!

「中央ギルドに行きたいんですけど、どこにあるんですか?」

 果物を買いに来たんじゃないのですね。私を探していたわけでもないのですね。もちろん最初からわかっていたことですから。

 でも、私を頼ってくれるなんて嬉しいのです。ちゃんと教えてあげるのです。

「あっちに真っ直ぐ進むと着きますよ。でも歩いて40分くらいかかっちゃいます」

 ん~!横顔も素敵です。こんなに近くでお話できて幸せです。できればもっとお話ししたいのです、さよならはしたくないのです。

「ありがとう。助かりました。今はお金がないので買えませんが、また来ますからその時に贔屓にさせてもらいますね」

「へ!?あ、ありがとうございます!!絶対来てくださいね!!」

 予想外のイケメンさんの言葉に思わず顔を寄せちゃいました。びっくりされたけどいいのです。

 ありがとうと言ってイケメンさんは手を振ってくれました。私も一生懸命振りました。時々振り返ってくれるのです。私は一生懸命手を振りかえすのです!

 そして、イケメンさんは見えなくなりました。

 大丈夫でしょうか。初めて王都に来たようなので、迷子にならな―――


 なぁあああああ!なんて馬鹿なことを!私は何で「案内します」と言えなかったのですか!?こんな店放っておいても問題ないのに!!


 友達が結婚すると聞いたとき以上にショックです。自分の馬鹿さ加減が目に沁みて流れてくるのです。


 でも、あの人はきっと来てくれるのです。とっても温かくて、優しいにおいのする人でした。


 そうです。きっとまた、会えるのです・・・。また会ったときは名前も聞かなきゃいけないのです。


 家族連れのお客さんが来ました。ついさっきまでの私なら羨ましい気持ちいっぱいでこの家族を見ていたでしょう。でも今は心からニコニコできます。あの人のおかげです!さぁお客さんをお迎えするのです!


「いらっしゃいませ!」


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