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第6話 エルフとの出会いは睨まれからはじまる

 城門をくぐると10mほど先に、外郭壁と同じように見えるがそれよりも低い壁が造られていて、その上に兵士が何名か立っていた。おそらくは外敵に備えるためのものだろう。その壁の城門をくぐると、ようやく王都の街に入ることができた。城門を入ってすぐに円状の広場があって、その中央には噴水があった。元の世界の物と同じ仕組みなのだろうか。勢いよく水が噴き上がっていた。広場の周囲は兵士の詰め所が並んでいて、兵士の歩く姿が見受けられる。

 広場の様子を十分観察したので、広場の先に見える大通りへ進んだ。

 広場を出て通りへ入ると、遠くに王城が見えた。歩いていくと通りが時折クランク状になっていた。これも外敵の進行を遅らせるものかもしれない。日本のお城もそういう工夫が為されたものが多かった。入ってすぐのところはお店などはなく、兵士の住居や集合住宅が立ち並んでいるようだ。高い壁もあるので、弓で高所から射られるようになっているのだろう。

 しばらく歩くと、ようやく商店が立ち並ぶエリアに辿り着いた。メインストリートと呼ぶにふさわしい賑わいだ。


 浅慮と言われても仕方がないが、俺はここでようやく『言語』について気が付いた。

 お店に並ぶ看板や広告は確かに『読める』。でも日本語じゃない。理解はできるしおそらく書けるかもしれない。丘で男たちと話した時も、門番と話した時も、思い返せば日本語じゃなかったかもしれない。これが『大賢者』のベーシックスキルなのか?

 まぁ、理解できるし話せるし、深く考えないでおこうかな・・・。


 さて、この賑わいの中で『中央ギルド』をどうやって探そうか・・・。周囲を見渡しても遠くをみても、それらしき建物は見られない。むしろこの通りにあるのかすらわからない。広大なこの王都で見つけるのは一苦労だな。観光地図のようなものでもあればいいのだけど・・・。こんなことなら門番にそれとなく聞けばよかった。逃げたのは失敗だったか。

 小さな後悔を抱きつつ、賑わい通りを歩く。ここはひとつ、その辺の人に聞いてみようか。声のかけやすそうな人を探しながらフラフラ歩くと、露店の果物屋が目に入った。店番には俺と同い年ぐらいの茶髪の娘が立っていて、ちょうど目が合った。この娘さんなら教えてくれそうだ、そう思い声をかけた。

「い、い、いらっしゃいませ!」

「すみません、ちょっと聞きたいんですけど」

「はいっ!何なりと!」

 見立て通りだった。

「中央ギルドに行きたいんですけど、どこにあるんですか?」

 娘さんは俺の行こうとしていた方向に指差した。

「あっちに真っ直ぐ進むと着きますよ。でも歩いて40分くらいかかっちゃいます」

 結構遠い。でもこの王都の広さなら仕方ないか。街の様子を見ながら歩くほかないか。

「ありがとう。助かりました。今はお金がないので買えませんが、また来ますからその時に贔屓にさせてもらいますね」

「へ!?あ、ありがとうございます!!絶対来てくださいね!!」

 お礼をいう時にグイっと顔を近づけてきた。庇から出た顔が何となく赤く見えた。この日の照りだから日焼けしたのだろう。元気な娘さんだ。ははは。

 こちらもありがとうと言って手を振って、果物屋を後にした。娘さんはずっと手を振ってくれた。


 ・・・

 ・・

 ・


 しばらく歩くと、先ほどの商業エリアとは違った雰囲気に変わってきた。この街並みは日本でも見たことがある。『銀座』の雰囲気にそっくりだ。いわゆる高級店と呼ばれるお店が立ち並ぶ。このあたりは貴族や高収入の人たちが住むエリアに近いのだろう。その通りをさらに進むと、『フィロデニア中央ギルド』と掲げられた看板が目に入った。ベージュの石の外壁で造られていて重厚感のある建物だ。


 扉を開けると、広さも奥行きもある吹き抜けになっていて、ロビーが目の前に広がっている。冒険者と思われる人たちが丸テーブルを囲んで談笑している。

 一番奥にカウンターがあり、何人もの受付嬢が応対していた。丁度正面にいる受付が空いたため、そこで聞くことにした。

「こんにちは。初めてここに来たんですが、登録できますか」

「こんにちは。登録ですね。お待ちください」

 そう言うと受付嬢はカウンターの奥にある部屋に下がっていった。登録に必要なものを取りにいったのだろう。

 カウンターに取り残された俺は、待つ間建物内を見ようと思い振り返ろうと思ったが、右側から妙に視線を感じ、そちらに目を移した。そこには同じくカウンターで待っている人と目が合った。いや、こっちをずっと見ていたのか、観察されていたのか・・・。

 見た瞬間、この人が何であるか特徴のある耳ですぐにわかった。


(エルフ・・・)


 目の醒めるような美人だった。金髪ロングでスタイルは抜群。細身であるため、胸のふくらみが目立って見える。さらに目立って見える原因に、胸元が薄手の装備服のためか半分くらい露出していた。もちろん意図的にそうしているわけではないのだろうが、これは見てしまう。いや、釘づけだ・・・。


 ハッ!いけない!こんなに見ては!・・・あぁ、ほら、エルフさんの顔がすごく怖い。睨んでる。目のやり場に困るなぁ。上はマズいから下に視線を移すと、こちらもミニスカート風の装備服だ。異世界の街に来て思ったが、こちらの女性は基本的に着ていてもロングスカートだ。この人のようにミニスカートを着ている人はまず見当たらない。もちろん、これはファッションではなく、意味のある装備であるだろうが・・・。何だかんだいって全身を観察してしまった・・・。反省します・・・。


 でも、こんな刺激的な装備をしていて、かつ金髪美人、スタイル抜群・・・。ギルド内の男たちの視線は、やはり彼女に集中していた。

 自分もしばらく彼女に見惚れてしまったから同じ穴のムジナか。でもこれ以上彼女を見ると誤解されてしまう。俺はカウンターの奥の部屋に視線を戻した。受付嬢さん、早く戻ってきてほしいです・・・。

 ところが目を逸らしても彼女は俺を見ているようで、ジトッとした視線を感じる。

 やっぱり睨んでいるのだろうか?

 全身を観察してしまったせいか?

 すると、後ろに座っていた男たちのヒソヒソ声が耳に入ってきてしまった。

『見ろよ、アレ。撫でまわしてやりたいぜ』

『この前酒場で一人で呑んでいるのを見たぜ。今度誘ってみるか』

『・・・へへへ』

 みんなこのエルフさんを見ている。そんな中でも彼女は俺から目を離していない。

 やっぱり怒っていらっしゃるようだ・・・。どうしよう・・・。


「お待たせしました」

 受付嬢が箱を抱えて戻ってきてカウンターに置いていた。ありがとう、受付嬢さん!この空気はさすがに耐えられなかったです、はい。

 でもやっぱりあとで謝ろうか・・・。

「私は受付のリタです。よろしく」

「よろしく。ジンイチローといいます」

「それではジンイチローさん、この中央ギルドの説明をしますね」


 この中央ギルドは、王族・貴族・商人・平民すべての人が利用できる相互支援システムで、登録すれば仕事を依頼することも請け負うこともできるようになる。通称『冒険者ギルド』とも言われ、その所以は、事実上依頼を受けるのがほとんどが冒険者を名乗る者で占めているため、この通称の方が公式でも通用する呼称になっているようだ。依頼は大小、継続合わせて100件近くはあるらしく、難易度の高いものと認定されたものは、ランクの高い冒険者が引き受けることになる。依頼を受けた段階で重要度と緊急度・難易度を諮り、ギルドでランク付けし、相応のランク推奨依頼とするそうだ。

 ランクは上からS,A、B,C、D、E、Fとあり、初回はみんなFから始める。一定回数の依頼を成功させたりランク上昇付加付き依頼を成功させたりすればランクが上がるという。依頼をするときに報酬額+報酬額に応じた依頼料をギルドに支払うことで依頼として承認され、以来達成は達成の証拠もしくは依頼者の承認をもって認められ、ギルドにて支払われる。

 うん・・・つまりは何でも屋みたいなものか。

 他にも数点説明を聞いた。


「以上が概要になります。何かご質問は?」

「いえ、特に。何かあればまた聞きます」

「わかりました。それでは登録作業に入ります」

 リタは、持ってきた箱の中から何かを取り出した。

 水晶だった。

「ここに手を置くと、あなたの情報が映し出され、ギルドカードの発行につながります」


 マーリン水晶キタ――――!!


7/23 文章・ギルドランク説明時の修正をしました

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