エピローグ
アンテナ・エックス1は、その存在した時間の大部分を、命令を送るために費やしてきた。
今は、何も送っていなかった。
惑星を覆うのは、奇妙な、ほとんど人工的とさえ感じられる静けさだった。
かつて塔や配管やシステムが立ち並び、一つの意志の下でいくつもの世界をつなげていた場所には、地平線に傾く構造物だけが残っていた。
切断された巨大な金属のラインが、何キロにもわたる残骸の下へ消えていた。
風が、灰を運んだ。
何も応えなかった。
警報も。
メッセージも。
服従を命じる声も。
かつての永続派の秘密基地は、ほとんど原形をとどめていなかった。
天井の一部が、下層の通路を覆うように崩れていた。
壁は、何かが施設を内側から引き裂いたかのように割れていた。
場所によっては金属がすさまじく熱せられ、過負荷の後に固まった床が、黒いガラスのようになっていた。
廃墟には、とどまることを選んだ人工生命体たちが横たわっていた。
黒い胴体が、柱にめり込んでいた。
胸から腰まで裂けていた。
内部の部品は、硬く固まったケーブル、ゆがんだ装甲板、融け合った破片の塊になっていた。
さらに先には、身体のない腕が落ちていた。
指は、もう存在しない武器の柄を、まだ握り締めていた。
存続の紋章の破片に交じって、頭部がうつぶせに転がっていた。
風がそれを数センチ動かすと、濃い青色の片目が、何もない場所を見つめる形になった。
そこに、光はなかった。
エネルギーも。
選択も。
ほかの身体は、元の形を再現することすらできなかった。
熱で、床に融着した脚。
黒い塊になった関節。
引き剥がされた装甲板。
欠けた顔。
むき出しになり、炭化した内部の配管。
かつて永続派の最後の武装部隊の一つがいた場所は、今では壊れた機械の置き場のようだった。
そこに、栄光は何もなかった。
ただ、残骸だけがあった。
主室の中央には、別の種類の痕跡があった。
床が、内側へ陥没していた。
ガラス化していた。
巨大な円形の傷跡が、エーテレオンの存在が消えた場所をなぞっていた。
周囲には、小さな素材の破片が落ちていた。
けれど、剣の形をしたものは一つもなかった。
共鳴を放つものもなかった。
エーテレオンは、なくなっていた。
今度こそ、本当に。
少し離れたところで、倒れた構造物の下から、白いものが黒い残骸の間にのぞいていた。
一枚の装甲板。
もう一枚も。
風が塵を吹き払い、文字の一部を見えるようにした。
A.X...
その先は、失われていた。
そこに、アクセルの身体があった。
あるいは、かつて身体だったものが。
胴体は、完全に裂けていた。
コアがあるはずの場所には、黒く焼けた空洞しかなかった。
周囲の金属は、極度の熱でゆがんでいた。
明かりは、一つも残っていなかった。
表示灯も。
右腕は、ありえない角度にねじれていたものの、まだ肩つながっていた。
左腕は、数メートル離れた場所に落ちていた。
脚は、ほとんど見分けがつかなかった。
片方は、操作卓の残骸の下に埋まっていた。
もう片方は、部分的に床と融け合っていた。
かつて白かった装甲板は、今では黒と灰色の染みに覆われていた。
割れたものもあった。
消えてしまったものもあった。
その身体には、二度と立ち上がれる部分はなかった。
二度と、ホライズン基地を歩けるものはなかった。
また、役に立たない品を買えるものも。
がらくたの正しい定義について、ファフィニョと言い合えるものも。
首は、突然途切れていた。
頭部は、そこになかった。
崩壊の際に、数メートル投げ飛ばされていた。
二つの金属塊の間に、灰をかぶって横たわっていた。
不思議なことに、それがいちばん形を保っていた。
無傷ではなかった。
白い表面は焼け、さまざまな濃さの灰色になっていた。
右側には、深い傷が何本も走っていた。
側面の防護板の一つが、ゆがんでいた。
後部の小さな部分が欠け落ち、完全に黒く焼けたケーブルが露出していた。
顔の周囲には、熱の跡が残っていた。
ほとんど、炭化しているように見えた。
けれど、まだ誰なのかわかった。
アクセル。
両目は、形そのものを保っていた。
暗い。
黒い。
何年もそこに宿っていた、青い光はなかった。
また、風が通り過ぎた。
少しの灰が、金属 of 顔を滑った。
何も起こらなかった。
動きも。
音も。
信号も。
数秒が過ぎた。
もっと長かったかもしれない。
そのとき、左目の奥で……
「カチッ」
青い火花。
残留電気と簡単に見間違えてしまいそうなほど、小さかった。
消えた。
沈黙。
灰は、動き続けていた。
「カチッ」
今度は、赤かった。
それも消えた。
それきり、何も。
やがて、三度目の放電が、顔の亀裂をゆっくり伝った。
青。
赤。
ほんの一瞬、暗い片目の中で、二つの色が同時に存在した。
最後の火花が、炭化したケーブルの間を跳ねた。
「カチッ」
これにて、『ファフィニョ 最後の戦い』、そして「ファフィニョ」三部作のすべてが完全完結となります。
第1部から数えて長い道のりでしたが、ファフィニョやアクセルたちの旅を最後まで温かく見守り、一緒に歩んでくださった読者の皆さまに、心から感謝申し上げます。
三部作という長大な物語を書き終えることは、作者にとっても大きな挑戦でしたが、皆さまからの評価や応援があったからこそ、無事にこのエピローグまで描き切ることができました。皆さまと共有できた時間は、私にとってかけがえのない宝物です。
彼らが最後に選び取った未来が、少しでも皆さまの心に残り続けることを願っております。
またいつか、新しい世界、新しい物語でお会いできる日を楽しみにしております。
その時まで、どうぞお元気で。
最高の読者の皆さまへ、最大の感謝を込めて。
本当に、ありがとうございました!




