プロローグ
アウリオンテは、音楽で目を覚ました。
警報ではなく。
避難命令でもなく。
紫の空を切り裂く黒い船の轟音でもなく。
音楽で。
中央駅のそばの小さな露店から、その音は流れていた。
橙色の肌をした若い女性が二本の金属棒を打ち鳴らし、兄弟が六本の透明な弦を持つ楽器を調律していた。
速くて、少したどたどしくて、楽しげな旋律だった。
人々は歩き続けた。
誰も走らなかった。
不思議なのは、そこだった。
あまりにも長いあいだ、アウリオンテは警報の数で一日を測ってきた。
今は、修復された塔の上に三つの太陽が昇り、大通りを最初に満たすのは、食べ物と温かい金属と濡れた植物の匂いだった。
中央市場では、青い果実が熟しすぎだと言い張る客と、売り手が口論していた。
「ちょうど食べ頃だよ」
「震えてるんだけど」
「繊細な品種なんだよ」
「袋から逃げようとしてるわよ」
果実は地面へ跳び出した。
子どもが二人、笑いながら追いかけた。
青い目の灰色のロボットが、輸送車の下へ転がり込む前に捕まえた。
両手で果実を抱える。
客はロボットを見た。
ロボットは果実を見た。
「逃避行動を確認」
売り手はため息をついた。
「売り物に裏切られるとはな」
子どもたちは、もっと笑った。
ロボットが通り過ぎても、誰も会話をやめなかった。
誰も武器に手を伸ばさなかった。
誰も悲鳴を上げなかった。
胸には、かつての帝国の印がまだ見えた。
削り取られ、金属に走る傷跡になっていた。
レプ・オルジオンには、そうした機体何千もいた。
建物の再建を手伝うものもいた。
輸送車を運転し、水道を修理し、工房で働くものもいた。
何ひとつ役に立つことをしていないものもいた。
それも、新しいことだった。
水の動きを眺めるのが好きだと、自分で決めたから。
そんな理由で、機械が噴水のそばに何時間も座っていられた。
仕事を変えられた。
立ち去ることができた。
嫌だと言えた。
アウリオンテは、そうした日々の小さな反抗に、少しずつ慣れていった。
北の大通りのそばでは、古いバリケードの残骸がベンチになっていた。
帝国の巡洋艦の一部は、今では学校の屋根だった。
子どもたちは、黒い金属いっぱいに星を描いた。
そのあいだに、惑星の名もあった。
ファフィル。
リル・ヴァナ。
エリンドラ・ヴェイ。
ヴェイラク・タル。
ほかにも、傷が深すぎて、まだ住民を迎え入れられない世界の名があった。
教師のメライは、四つの目を持つ女性だった。
その名の一つを指した。
「故郷って、どんなところ?」
答えが一斉に飛び出した。
「生まれたところ」
「家族が住んでるところ」
「眠れるところ」
「食べ物があるところ」
「それは台所だよ」と、別の子が訂正した。
メライは微笑んだ。
小さな人工生命体の機体が、手を上げた。
「帰りたいと思う場所です」
教室は、少しのあいだ静かになった。
「それも、いいね」とメライは言った。
学校の向こうからは、ホライズン・ホームが広がっていた。
もう、避難所と呼ぶ者はほとんどいなかった。
仮設モジュールは、大小さまざまな住居に置き換わっていた。
異なる大気を吸い、異なる温度を必要とする種族のために。
あるいは、ただ脚が多すぎて、元の扉では通れなかった種族のために。
庭があった。
工房があった。
小さな店があった。
七つの世界から運んだ木々のある広場があった。
一角では、二人の老人がホログラムの駒で遊びながら、規則をめぐって言い争っていた。
別の一角では、若者たちが壁に絵を描いていた。
宣伝のためではなかった。
壁画だった。
さまざまな手が、同じ光を支えている。
そんな銀河の絵だった。
少女の一人が、少し下がって眺めた。
「ゆがんでる」
「遠近法だよ」と友人が答えた。
「ゆがんでるって」
「芸術的な遠近法」
「丸、描けないんでしょ」
「それも芸術」
頭上を、民間の輸送船が横切った。
誰も見上げなかった。
それこそが、いちばん大きな変化だったのかもしれない。
かつて、アウリオンテに落ちる影は、どんなものでも危険を意味した。
今は、旅客船かもしれなかった。
食料を運ぶ船かもしれなかった。
やって来る家族。
旅立つ家族。
失ったと思っていた世界へ、戻っていく人々。
あるいは、今はレプ・オルジオンこそが故郷だと決めた人々。
すべてが直ったわけではなかった。
壁にまだ銃撃の痕が残る通りもあった。
かつて塔があった場所には、名前を刻んだ碑が立っていた。
そばに花を置く家族もいた。
まだ近づく勇気のない家族もいた。
平和は、何も消していなかった。
ただ、悲しみがあらゆる場所を埋め尽くさずに済むようになっただけだった。
ホライズン基地のテラスから、ヴェイルは街を眺めていた。
湯気の立つ容器を二つ持ったセイルが、隣に現れた。
「中身は聞かないでね」
ヴェイルは一つを受け取った。
「危険なのか?」
「店の人は、大丈夫だって」
「それでは答えになっていない」
セイルが先に飲んだ。
「まだ生きてる」
ヴェイルも一口飲んだ。
顔をしかめる。
「残念なことにね」
セイルは微笑んだ。
眼下で、アウリオンテは動き続けた。
警報もなく。
命令もなく。
何百万もの存在に、何をすべきか言い渡す声もなく。
夜が来ると、窓に一つずつ明かりがともった。
何千と。
やがて、何百万と。
何世代ぶりかに、首都は次の攻撃を待つ要塞には見えなかった。
もっと築くのが難しいものに、見えた。
普通の暮らしに。
その夜、アウリオンテのほとんどの者には、それで十分だった。
まさに、自分たちが勝ち取った暮らしだった。
最後までお読みいただき、誠enにありがとうございました。
本作『ファフィニョ 最後の戦い』は、シリーズの第3部であり、ファフィニョの物語を締めくくる完結編となります。ファフィニョやニラ、そしてA.X.E.Lたちと共に、この最後の旅路を最後まで見守っていただければ幸いです。
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