第37話 中学卒業
2014年3月
「はい、チーズ」
パシャッ
写真を撮り終わると、俺と喋ったこともない女の子とその親がお礼を言って、また一家族去っていく。
今日は中学校の卒業式。
もう式自体は終えて校舎前で皆記念撮影をしている…のだが、俺の前には俺との記念撮影を待っている人の長蛇の列が並んでいた。
なぜこんな事になったかというと、俺が中学校の卒業式を迎える前に名古屋アハトでトップデビューをして、2ゴール1アシストなんて記録を立ててしまったからだ。
そして試合当日の夕方、夜、翌日と各局の全国ニュースで大々的に取り上げられたことで俺の認知度は急上昇し、今のこの状況だ。
いわゆる時の人ってやつだな。悪い気はしないが少し疲れる。
ちなみに今日は父さんは仕事で母さんが卒業式に出席してくれたが、体調不良で式が終わると帰ってしまった。
なので先生方と協力して記念撮影を捌いている。
「すみませーん、大雅君私も一枚写真いいですか?」
「あれ望結ちゃんも?」
「ママがどうしてもってうるさいから」
「こんにちは望結の母です。望結が1年生の時にお世話になったみたいで…あっ、この間のゴール、ニュースで見ました…」
望結が両親と共に現れた。望結の両親は流石望結を生んだだけあって、どちらも顔が整っている。
望結のお母さんはどうやら俺のことをニュースで知った様子で伝えたいことが沢山あるみたいだ。しかし…
「ママ!後ろの人がいっぱいいるんだから早くしないと」
「あぁ!ごめんなさい。とにかくこれからも頑張ってください!あとツーショットお願いします」
「望結ちゃんとお母さんそれぞれのツーショットでいいんです?」
「はい!」
俺は望結のお父さんに目を向ける。
彼は優しそうな顔で「望結の父です。すまないね。じゃあ撮るよー」と俺に告げた後カメラを俺たちに向けた。
パシャッ…
パシャッ…
写真を撮り終えるとお礼を言って望結とご両親は去って行った。
上手くいったかな。俺は昨日に行った望結との作戦会議を思い出す。
・・・・・
「ねぇ大雅君、やっぱり私達も別れよっか」
「えっ!そんな…待ってよ望結」
「冗談だよ」
ふふっと笑う望結。
俺達は今LIMEという電話通信アプリで電話をしている。
卒業式を前に望結と俺は親にスマホを買ってもらったのだ。
ある日の朝学校に着くと自分の机の中に望結の連絡先が入っていたので、それ以来毎日のように電話している。
「それでもやっぱり直接会うのは危険だと思うんだよね。ママとパパに迷惑かけたくないの」
「うーん俺の家にも報道陣が押しかけてきたからなぁ。確かに今後望結の家に行ったり普通にデートするのは無謀かもしれないね」
俺達はここ最近直接会っていない。
なぜなら俺たちはマスコミを恐れているからだ。
特に望結が危惧しているのは俺との交際がバレて自宅に報道陣が詰め掛けたり、両親にインタビューと称した迷惑行為をされないかどうか。
未成年の恋愛にそこまでやるか?とも思うが、メディア関係者というのは倫理観が終わっているイメージなので、もしかしたらやるメディアもあるかもしれない。
実際俺の家にはデビュー戦後アポ無しで報道陣が少なくない数来た。
どうやら母さんのコメントが欲しかったらしい。
父さんがクラブを通してしか取材は受け付けないと言って、彼らを追い返してくれたから良かったけど。
「だからね、一旦外向きには私達が付き合ってないことにして、報道の熱が冷めるまではデートとかもなしにした方がいいと思うの」
「でも俺がこれからも活躍しまくって報道の熱が冷めなかったら?」
「うーんお忍びでデートするしかないかな」
「はぁ…なんでこんなことに…」
俺は自分の置かれた状況を嘆く。
自分がサッカーで活躍するのはいいが、それに付随してメディアの目も気にしないといけなくなるとは。
前世でもNリーグ得点王&MVPを取った後ある程度メディアに取り上げてもらったが、ここまでではなかった。
それも今の段階ではNリーグを一試合終えただけだ。先が思いやられる。
「しょうがないよ大雅君のゴール最高にカッコよかったもん」
「そっか。それならしょうがない。そうだ、望結にも一回俺の出る試合をスタジアムで見てもらいたいな」
「4月になったら家族で観に行くつもりだよ」
「ほんと?観に来る日決まったら教えてよ3点決めちゃうから」
望結が観に来るなら本当に力が湧きそうだ。
「それはいいんだけどさ、私の家族に会うときも私に友達として接してほしいんだよね。私のお母さん、私達が付き合ってるって知ったら絶対周りに言いふらすから」
「うん、分かったよ」
・・・・・
とそんな感じで今までもそうだったが、望結と付き合ってる事は秘密にすることになった。
デートもできない。
まぁしばらくはサッカーに集中して男を磨くのもいいだろう。
そんな事を思っていると…
「ほら順番来たよ」
「やっぱりいいよ、お母さん」
「ここまで並んだなら撮ってもらいなさいって。私も撮ってもらいたいし」
いくつかの家族を捌いたところで、そんな声が聞こえてきた。
そこには…
「紗那・・・」
紗那とその両親がいた。
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