巡憶。
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数日が経ち、樺が何度目かの鬼熊による火傷の状態の検査受けているとき、鬼熊はこう言ったのだった。
「あぁ、そういえば輸送作戦のときに撫でるような風とかって言ったじゃねえか。あれをやったやつが捕虜になったらしいぜ。」
樺は驚きで呼吸を止める。
…忘れてなどいない。
あの、野々村の命を奪った風であり、樺の判断の未熟さを刈り取った風である。
「…どうしたんだ。」
鬼熊の声掛けに樺は外界に意識を向ける。
「少し…嫌な思い出が。」
「まぁそんなもんよ。戦場で生きるということは。」
鬼熊は樺の言葉をありふれた言葉として処理をした。
「んでだ。輸送隊の襲撃の関係者として、尋問を行う意義もあるということで玄から指示があってのう。」
樺は鬼熊の言葉にただ頷く。
「腕は…どうじゃ?」
樺は少し動かして
「まぁ…動かして痛むことはなくなりました。」
と答える。
「成る程な。まぁそれなら移動もいけるじゃろ。
明日の朝、迎えにゆくぞ。」
そう言うのと同時に鬼熊は診察を終え、天幕から去っていった。
樺は縺れた感情を抱えて仰向けになる。
奴は何の為に撃ち、何の為に撃たなかったのか。
そして野々村のことを考えると目はただ冴え続ける。
そしてどれだけ過ぎた頃だろうか。
やがて鬼熊が樺に声を掛けてきた。
樺はそれに従い外に出る。
…相変わらず霧が立ち込めていた。
空は見えることはない。
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鬼熊に導かれるまま樺は捕虜の収容所に辿り着く。
そこは簡素ながらも数十人の兵が警備をしており、ただならぬ気配を感じ取れるものであった。
鬼熊は入り口で軽く手を振り、そのまま通り過ぎる。
樺はそれにただ付いていく。
収容用の天幕が複数ある中、
…一つ、外れたところに天幕が孤立していた。
鬼熊はそこを指差して、
「あそこに其奴が居るわい。」
と言う。
樺は腕以外も炭で固められたかのように硬直する。
「どうした。行かんのか。」
その言葉でようやく樺は足を動かした。
あの影はどんな人物であったのか。
先に行った鬼熊の後に急ぎ向かい、樺は入り口の前に立つ。
ただの布を越せば。
そこに奴が居るのだ。
樺がそう身構える間もなく、鬼熊はその布をめくる。
…そこに居たのは何処にでも居そうな。小柄で気の弱そうな青年である。
樺は何も言えなかった。
そして暫くの時間が流れ、意を決して言う。
「あなたが劉…ですね。」
目の前の青年は隣の通訳の言葉を待たずに言葉を返した。
「…是…的。」




