表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
14/22

木挽町へ

年が明けた

正月十二日の朝。


将軍生母である月光院付の

御年寄江島と宮地率いる

総勢百三十人の大名格の華やかな行列が

大奥より出立した。


月光院の代参で

御年寄宮地は

先々代将軍綱吉の菩提寺である

上野寛永寺へ


御年寄江島は

先代将軍家宣の菩提寺の芝増上寺へ

其れ其れ向かった。



綱吉の命日は一月十日

家宣の月命日は十四日である。


本来ならば

十日と十四日の

其れ其れの命日の日に参る決まり。


それなのに

わざわざ中間の十二日に法事を設定。


代参の後のお楽しみの

芝居を観ながらの宴会

新年会が目当(メインイベント)て。


将軍の冥福を祈る代参が

芝居見物と宴会の隠れ蓑に、とは

将軍の権威も蔑ろにされたものである。


そのあり得ない

軽薄な行動を許したのは

江島と宮地の主人である

将軍生母の月光院。


亡き将軍達への敬意と忠義など

ありはしない。


江島や宮地達は

其れ其れの寺で法要を済ませると

若い僧侶達による庫裏での饗応も断り

早々と増上寺と寛永寺を後にした。


女中達の

あまりにも慌ただしい出立に

住職達は呆れている。


「いつもは精進料理を

 楽しみになさる御女中達が

 今日はどうしたことか」


「法要の間も上の空。

 紅の色も濃くて異様でしたな」


僧侶達は眉を顰めていた。


そんな風に見られていたことなど

浮き足立っている江島達は気づいていない。



木曳町の料理屋からは

幕府呉服商 後藤縫殿助の手代清助ら二人が

江島に命じられた観劇弁当の

確認をして出て来た。


清助達は

江島に気に入られただけあって

老舗呉服店の営業職に相応しい

二十代後半の

若く顔立ちが整った爽やかな青年。


清助は色白で物柔らか

もうひとりの次郎兵衛は背の高い精悍さが

絶妙な対比(コントラスト)を醸し出している。


二人共に

趣味の良い今様の清潔感溢れる

着物に身を包んでいて趣味の良さを

手配の弁当にも散りばめた。


薪炭屋の手配する料理より

江島達が気に入るのは間違いない。


趣味の良さを売りにして

女心を掴むのが生業の

呉服店営業職の本領発揮である。



紺色の暖簾を潜り出て

山村座に向かう道すがら

二人は本音を出し合った。


「御女中達の芝居見物は

 何時もは二十人程なのに

 今回は百人超え。

 豪勢なことで」


「料理の前金だけで二十両、

 奢る栂屋の旦那も気合いが入ってるよな」


「驕れる者も何とやら。

 くわばらくわばら。

 詳しくウチの旦那様に報告しないと」


縫殿助の手代二人は

これから起こるであろう事件を見守る。



寛永寺を出た宮路達の行列は

江戸城を越える形で

木挽町の山村座を目指す。


増上寺から木挽町へは

江戸城への帰り道を少し逸れる。


江島と宮路の大名格の盛大なる一行は

木挽町で合流した。


往来の多い木挽町とはいえ

百人超の大行列は大層目立ち

人々の記憶に残った。


悪目立ちとも言える。


山村座の前では

若く妖艶な座元の長太夫や

奥医師の交竹院。

交竹院に取り持ちを頼んだ

浅草薪炭商の(あるじ) 栂屋つがや善六。

後藤縫殿助の手代 清助らが

江島達の到着を待っているのだった。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ