第64話:拳銃 <薫サイド>
見直しました。
水草薫は、リクルーターの女、北島亜紀から拳銃を受け取った後、彼女と別れて一人でコンビニEマートに戻った。
パぴパぴ……。
「いらっしゃいませー」
声を掛けてくれたのは、大島だった。だけど、彼の姿が見えない。どこだろうと思ってレジカウンターの方に行ってみると、奥に置かれたPC端末に向かっている。
一方の日比野店長はというと、レジの横で何かを見て固まっていた。何だろうと思って覗き込むと、さっき亜紀が置いて行った名刺だった。
カウンター奥の壁にある時計を見ると、既に十一時を十五分も過ぎてしまっている。
「あれ、水草さん、まだいたんですか?」
「うん。ちょっとね。それより、大島くん、何やってんの?」
「俺が来てみたら、店長が使い物にならなくなっちゃってて、仕方が無いから発注作業を代わったんです」
「そっか。そっちは、そろそろ終わらせとかないとまずいもんね」
「そうなんですよ」
そんな会話を交わしながらも、大島はキーボードの上に指を走らせている。薫は、日比野店長の方に顔を向けた。
「店長、どうしちゃったんですか? 顔がにやけてて、気持ち悪いんですけど」
日比野店長の反応は無い。薫は、もう一歩、彼の方に近付いて、耳元で「店長」と声を掛けた。
「うわっ。あ、水草さん、お帰り」
「どうしちゃったんですか?」
「あ、いや、えーと、それよりもさっきの人だけど……」
「亜紀さんですか?」
「うん、北島亜紀一尉って、水草さんの知り合いなの?」
薫は一瞬、どう答えるべきか考えてから、「はい」と返事した。
ちょうど良い機会だし、日比野店長に話してしまった方が良いかもしれない。
「あの、店長、そのことなんですけど……」
「えーと、北島さんって、どういう人?」
「えっ?」
薫が日比野店長の方を見ると、心なしか頬が赤い。これって、ひょっとすると、一目惚れ?
「私も、まだそんなに知らないんですけど、カッコ良い人ですよね」
本当の亜紀は、カッコ良いだけの人ではないのだが、この時の薫は、まだそれほど彼女のことを知ってはいなかった。
「そうなんだ。水草さんから見ても、カッコ良い人なんだね」
ちなみに、亜紀は日比野店長よりも背が高い。しかも、さっきの亜紀はヒールの高い靴を履いていたから、尚更に高く見えていた筈だ。
普通、自分より背が高い女性を男の人は嫌うって思っていた薫には、店長の反応が少し意外だった。
そこで、PC端末に向かっていた大島が日比野店長に声を掛けた。
「これで良しっと。店長、発注作業、終わりましたよ。確認されますか?」
「別に良いよ。流しちゃって」
店長は、大島の方に顔を向けもせずに即答した。
「良いんですかあ?」
「良いよ。アラームとか無いんだったら構わないよ」
入力した値が過去のデータと照らして大きく異なった場合、システム側でアラームが出るようになっている。それに、人工知能による推奨値も表示されるので、発注作業は誰がやっても大差ないしくみになっているのだ。
作業を終えた大島は、立ち上がってカウンターから出て来る。そして、再び薫の方に話し掛けて来た。
「ところで、何があったんですか?」
「えーとね……」
薫は、一瞬だけ躊躇った後、やっぱり話すことにした。
「あの、店長も聞いてください。私、軍に入ることになりました」
「えっ?」「マジで?」
大島と店長が揃って驚いた顔を薫の方に向けた。
「まだ、いつからってのは決まってないですけど、たぶん、そんなに先じゃないです」
先に反応したのは、大島だった。
「水草さん、こないだ俺にきつく言ってくれたのって、そういうことだったんですね」
「私も軍の奨学金、借りてたもんね」
「やっぱ、そうなんだ」
「ううん、それだけじゃないの。家の方にも借金があってね、追加融資が受けられたんだ。ほら、あそこのポスター」
薫が指差したのは、店の入口の壁にある掲示板に貼られた一枚のポスターだった。たぶん、薫の人生を変えるきっかけとなったポスターだ。
そこには、軍服姿で挑発的な微笑みを向ける若い女性の上半身があって、彼女の胸の下あたりに「試してみませんか、あなたの勇気」と書かれている。
「私、あのポスターを見たんです。一番下の所に『特別貸付金制度』について書かれてて、要は給料の前借りみたいな制度なんですけど、私の場合、相当な金額を出してくれることになったんで……」
「えっ?」
大島の目が輝いたのを見て、薫は釘を刺しておくことにした。
「具体的な金額は言えないんだけど、いくら借りられるかは人によって違うから、私のは参考になんないと思う。それに、私の場合、借金の厳しい取り立てがあって、仕方がなかったんだよ。だから、大島くんは私のことなんか参考にしちゃ駄目だからね」
「はい。分かってます」
「宜しい」
そこで、薫は改めて日比野店長の方に向き直った。
「ということで店長、来週はまだ働くつもりですけど、たぶん、そのくらいで辞めることになると思うんで……」
「ええーっ、水草さんに辞められちゃうと、困るんだけど……」
「ですよね。水草さん、超優秀だし、そう簡単に変わりなんて見つかりそうもないですよね」
「あのね、大島くん。それは大げさだと思う。私なんて、そこまで凄くないよ。まあ、店長の好意で高い時給は貰ってるけど……」
「確かに、軍に入るんなら仕方ないのかもね」
「店長、ミリオタですもんね」
「あ、いや、まあ、それはそうなんだけど……」
店長は軍事オタクということで、軍隊の装備品だとかにやたらと詳しいだけでなく、同じ趣味の仲間達とサバゲ-とかもやっているらしい。
大島の指摘に店長は焦ったのか、ハンカチで額の汗を拭った。
「当分は、原田くんと斉藤さんですね。あの二人を軸に回して行かれると良いかと思いますよ。大島くんも就職するまでは大丈夫ですし、後は、面接で変な人を採らないことですよ」
「あ、その話、俺も納得だわ」
「でしょう。それと、深夜営業をどうするかですね」
「確かに……あ、お客さん」
パぴパぴ……。
「「いらっしゃいませー」」
入って来たのは、サラリーマン風の男性だった。酔っている感じは無いので、残業帰りなのだろう。缶ビールにおにぎりを二つ、それから焼き鳥を籠の中に入れてセルフレジで会計を済ますと、すぐに出て行ってしまう。
店内の時計を見ると、十一時四十分……。
「じゃあ、私、そろそろ……」
「帰りますね」と言おうとして、陳列とかの仕事が全然、終わっていないことを思い出した。それを大島に言うと、「大丈夫ですよ」と笑顔で返してくれる。
「それぐらい、俺がやっときます。水草さんは、気を使い過ぎなんですよ。日付が変わらないうちに、帰って下さい」
かなり強い口調で言われてしまった。
それで、彼の好意に甘えることにした薫は、更衣室で急いで着替えた後、二人に「お疲れ様でーす」と言って店を出たのだった。
★★★
ポケットの中に忍ばせた拳銃の威力は、絶大だった。
そこにそれがあると思うだけで、絶対的な安心感がある。それだけで、夜道を歩いていても全く怖くはない。道端に佇んで睨んで来る男達とは時々出くわすことがあるのだが、こっちが全く動じないからか何も言って来ない。天王シネマの前ですら、あっさりと通り抜けることが出来てしまった。
アパートに戻ったのは、日付が変わってからだった。
取り敢えず、シャワーを浴びることにした薫だったが、突然、ポケットの中にある拳銃のごつごつした感触が気になり出した。それで、しばらく考えた薫は、それをいつものウエストポーチにしまってから、寝室の隅へ静かに置いた。そして、急いで浴室に向かう。
さっと紙を乾かして寝室に戻ると、再びポーチから拳銃を取り出して、それをしげしげと見詰める。薄暗い室内にあっても、それには確かな存在感があった。
さて、何処に置いて寝ようか。
薫が住むアパートはとても狭くて、自分だけの空間があまりない。この危険な物体のことを家族に悟られないでいるのは、そんなに簡単なことじゃないかもしれない。
改めて薫は、そう思うことで自分の気を引き締めた。
要は、普段どおりに振る舞っていれば良いのだが、それがなかなか難しい。ポーカーフェイスは薫の得意分野の筈だが、相手は薫のことを一番良く知っている家族なのだ。特に妹の楓は、まだ多感な年頃である。少女特有の鋭敏な嗅覚で、薫のどんな些細な変化も見逃してはくれない可能性があるのだ。
最初は例のモノを枕の下に置いてみたのだが、何かの拍子に枕がずれてしまわないかと気が気でない。
それに明日の朝、そのまま置き忘れたりしたら大変なことになってしまうし、だいたい拳銃の上に頭を乗せてること自体、考えてみればとんでもないことだ。
それだったらと思って、こないだから寝間着代わりにしているジャージのポケットに入れてみた。だけど、今度は腰に当たる硬い感触が気になって、寝返りひとつ打てなくなってしまった。
そうこうするうちに、玄関のドアが開く音がした。母の佳代が帰って来たんだろう。
「薫、まだ起きてるんかい。早く寝なさい」
「はーい」
いつもの条件反射なのか、薫は素直に返事をしてしまう。それから、さっきのポーチに素早くそれを突っ込むと、そのポーチを枕元に置く。
そして薫は、素知らぬ顔で狸寝入りを決め込んだのだった。
★★★
そんなこんなで目が覚めてしまって、なかなか寝付けない薫である。
目を瞑って悶々としていると、頭の中に浮かんでくるのは、やっぱり自分が本当に軍でやっていけるのかといった不安だった。
どんなに北島亜紀から大丈夫だと言われた所で、薫には全く実感が湧かない。今までに経験したことのない類の仕事なのだから当然だろう。確かに様々な検査をやって、その都度、説明とか講習とかも受けたけど、それ自体が畑違いのことであって、薫はますます困惑するばかりだったのだ。
そこて思い出されるのは、薫が最初に名駅、つまり名古屋駅の西口にある軍のリクルートセンターを訪れた時のことだ。
五月の終わりの良く晴れた日、かなりの悲壮な思いを胸に、薫はそこを訪れた。
その頃、薫の住むアパートには、借金の取り立て人が押し掛けるようになっていて、薫と楓に風俗で働けとまで言われていたのだ。
ただし薫の場合、表情を読み取り難いポーカーフェイスのせいで、周囲の誰もが、そうは思わなかったのだろう。しかも、見た目、とても若く見られてしまいがちな薫のことである。単にラフな格好をした女子高生、いや、入隊年齢にすら達しているか定かでない小娘にしか見えなかったかもしれない。
そんな訳で、たぶん訳アリの家出少女とでも勘違いしたであろう受付の女性は、恐らくそうした事例専門と思われる相談窓口に薫を案内した。
それぞれの窓口は、しっかりした衝立で仕切られていて、来訪者のプライバシーに配慮がされている。
薫が案内された窓口にいた係官は、中村という名前の太った中年男性だった。
その係官の第一印象は、人当たりの良いオジサンといった所。でも、薫への対応は最初のうち事務的な感じで、あまり熱心では無い印象を受けた。
薫が席に着くとすぐに説明が始まったのだが、少々早口で一方的に話が進んで行ってしまう。たぶん、同じ内容を毎日何度も繰り返し話しているんだろうと思って、薫は少しだけ同情してしまった。
それでも、途中から徐々に薫が聞きたかった具体的な内容にも触れてくれるようになった。
「……ここ数年の間に、戦場での日常生活全般が様変わりしたと言われていてね。兵器だけじゃなくて、兵士が日常的に使う様々な機器の操作性だとか、軍用車の乗り心地から兵舎の居住空間における快適性に至るまでもが各段に向上したんだよ。その背景として、日本の企業がそうした分野にも本格的に進出したからだと言われているんだ。つまり、日本が得意とするカイゼン活動が活かされるようになったからだというわけだね」
中村係官は、そうした日本企業の活躍をさも自分の手柄のように話していた。時間が経つにつれて、彼は饒舌で、更に早口になって行く。最初の印象はそれほど悪くなかったけど、案外人の話を聞かないタイプかもと思えてきた。そうなると今度は、でっぷりと太った体型が暑苦しく、うっとおしいものに感じられてしまう。
「日本がそうした分野に進出した理由として一番に挙げられるのが、君のような若い女性が戦場に大勢送り込まれるようになったからなんだ。それまで戦場にいたのは、むさ苦しい男達ばかりだったからね。女性が進出するようになったことで、戦場にある全ての物が、女性の視点で一から見直されたってわけだよ」
「……」
「そうしたことの成果として、兵器や装備については、女性でも取り扱いや運搬が可能なように軽量化されたし、操作の自動化やメンテナンスも簡略化された。まあ、それでも中東とかの自然の過酷さは変わらないわけなんだけど、最新の保冷スーツが導入されたことで、屋外での行動が随分と楽になったと思うよ。それに、車両も兵舎もエアコンの性能が大幅に強化されたことで、だいぶ快適に過ごせるようになったんじゃないかな。移動式のシャワールームに清潔な簡易トイレが完備されたらしいし、食事の内容も見直されて、確か、デザートの種類が豊富になったらしいよ。害虫駆除の技術が向上したことで、変な病気に罹るリスクも減ったみたいだし、とにかく、衣食住に関しては、本当に良くなったと言われているね」
「……」
「でも、やっぱり兵器面での改良がもっとも重要だと、僕は思うんだ。だって、兵士達の命に係わる部分だからね。特に身体に合わない兵器が原因で命を落とすなんて、バカげてると思わないかい。男性と比べると、女性の方が身体が小さくて華奢な訳だから、それに見合った兵器が開発されるべきなんだ。たとえばだね。この画像にあるライフルなんだが、以前は欧米系の男性の平均的な腕の長さを反映して……」
中村係官の説明は、次第に理屈っぽいマニアックなものになってきた。どうやら彼は、そうした兵器や装備のことが純粋に好きなんじゃないだろうか?
その時、薫の頭に浮かんだのは、バイト先であるコンビニEマートの日比野店長のことだった。その彼もそうした分野の軍事オタクで、たぶんこのオジサンとは気が合うに違いない。
「……そうした進歩の裏で評論家とかに言われているのが、ゲームと現実の境が無くなりつつあるってことなんだよね。ほら、バーチャルリアリティの普及で、自分の部屋に居ながらにして戦場の雰囲気を味わうことができるようになっただろ。あれ、僕もよくやるんだけどね、やっぱり、やり過ぎると危険だと思うんだよ。特に小中学生がやるのは、良くないだろうね。一応、年齢制限はあるみたいだけど、厳密に規制するのは難しんだろうからなあ」
「……」
「まあ、話を戻すとね。つまり、戦場での戦い方もゲームのようになってきたということなんだ。兵器の性能が向上して電子化や人工知能(AI)の活用が進んで、ボタンひとつでゲームのように簡単に人が殺せるようになったってことだよ。私に言わせれば、兵器や装備の自動化が進み過ぎたことの弊害だと思うけどね。けど、その一方で、そういった最先端のテクノロジーが……」
中村係官の話す内容が、今度は学者か評論家みたいになってきた。
そして、更に閉口したのは、次第に薫個人のことに話題が移ってきて、薫が軍に入ろうとしていることを彼が「安直だ」とか「短絡的過ぎる」と非難し始めたことだ。
この施設は、軍に興味がある若者に入隊を促す為のものじゃなかったのか。係官が、それと反対のことをしてどうする。
いや、ひょっとすると係官には、軍には向かない人間を予め間引いておく役割もあるのかもしれない。確かに、訓練にだってお金が掛かるし、そのコストに見合わない不要な人材は、予めふるいに掛ける考えなのかもしれない。
建前上は入隊希望者を拒めないわけだから、こうした姑息な手段を使って、希望者の入隊の意志を挫いてしまおうとしているのだろうか。それほどまでに私は、役に立たない人間なんだろうか。
そんなことを考えているうちに、薫はますます悲しくなってしまった。
それでも薫は、弱気になる自分の心に鞭を打って、軍の融資制度のことを質問したのだが、それが中村係官の地雷だったようで、話が完全なお説教モードに変わってしまった。
どうやら、中村係官には薫と同年代の娘がいたらしく、その娘と薫を重ね合わせて見て、薫を戦地にやりたくないと思ったようだ。
薫にとっては、いい迷惑である。
とはいえ、もう八方塞がりだ。薫はすっかり困り果ててしまった。
★★★
そんな薫の所に颯爽と現れて、太った男性係官から薫を解放してくれた女性がいた。
彼女は薫より年下で、休暇中の現役軍人。たまたま、そのリクルートセンターの知り合いに会いに来ていたらしい。
その彼女の特徴は、一人称が「ボク」だということだった。いわゆる「ボクっ娘」である。本人曰く、小さい頃に一緒に遊んでいたのが兄とその友人だったから、自然にそうなってしまったそうだ。
その後は軍に入るまで「ゲームオタクで引きこもり」だったとかで、「ボク」を矯正する機会が無いままに軍人になってしまったのだという。ちなみに、軍隊では「ボク」でなく、ほとんどの場合に「自分」を使うらしい。
軍にも、いろんな人がいるみたいだ。
年下といいうこともあって、薫もその彼女には気楽にいろんな質問をぶつけることができた。彼女は、薫の不躾な質問にもちゃんと丁寧に答えてくれた上に、実際に前線で働いている若い女性隊員の本音が聞けて、薫にとっては非常に有意義なひと時だった。
「……今の銃ってね、小さくて扱い易いし、引き金さえ引けば誰だってだいたい当たるようにできてるんですよ。オートフォーカスで手振れ防止機能付きのビデオカメラみたいなもんですよね。だから、ボクみたいな若い子だって全然平気」
「……大事なのはね、むしろ必要な時にちゃんと引き金を引けるかどうかってことなんです」
「……戦場で求められる人材ですか。うーん、これはボク達の部隊のことかもしんないけど、とにかく目立たないってことじゃないかなあ。特徴がない顔で、後でどんな人だったか思い出せないってのが理想ですね。まあ、ボクたち日本人は、現地の人達に言わせると『のっぺらぼうで、皆、同じ顔に見える』ってことだから、それで、だいぶ助かってます」:
「……うーん。別の言葉で言うと、『存在感の無い人』ってことですかね、ていうか、『必要な時に気配を消せる』ってのができれば、最高なんですけど」
「……顔に感情が出ない人、表情の希薄な人、とにかくポーカーフェイスができるってのが大事だと思います」
「……それと『感情のコントロールができる』ってことが一番重要になりますね。ほら、いくら注意してても、いきなり危険な目に遭ったり、目の前で同僚が撃たれちゃったりとか、いろいろあるわけじゃないですか。そういう時に取り乱したりとか投げやりになったりしないで、いかに冷静に対処できるかで、生き残れるかどうかが決まる訳ですよ」
「……ちょっとエグいこと言いますとね、人を簡単に殺せるってのも才能だと思うんです。ほら、人を殺した時ってのは、誰だって自分の心に大なり小なりダメージを負うもんなんですよ。そういうのが積もり積もって、人によっては心が壊れちゃったりするんです」
「……ほんと戦場じゃ、いろんなことがあるんですよね。結構、見たくないモノが……って、だいたいが死体なんですけどね。そういうグロいのが平気で目の前に転がってたりする中で、どれだけ平気でいられるかってのも、やっぱり大切なことだと思いますよ」
「……ボク、さっきからこうして話してて思うんですけど、自分が言ってることって、だいたい水草さんに当てはまるんじゃないですか。ボク、一般人の女性に話せないこととかもいっぱいしゃべっちゃってますけど、水草さんって全くビビってないじゃないですか。それにボクが冗談とか言っても、ちょっと頬のここの辺りが動くだけで、ほとんど表情、変わんないし」
「……あ、怒ってるわけじゃないですよ。尊敬してるんです。普通、こういうとこに来ると、誰だって緊張して、つい愛想笑いとかしちゃったりするもんなのに、水草さん、最初から堂々としてて、全然普通だし」
「……これはボクの見立てなんですけど、たぶん水草さんって銃とか持ったら、何のためらいもなく平気で引き金引いちゃうタイプだと思うんですよね。もちろん、ボクの勘だから、違ってたらごめんなさい。でも、ボクのそういう勘って、今まで外れたこと無いんですよねえ」
「……あの、もし宜しければ、簡易的な方でいいんで、これから、その適正検査って奴、受けてみませんか?」
「……あ、全然、心配することありませんって。この場でPC端末のディスプレイ画面見ながら、ちゃちゃちゃっとできちゃう奴なんで。ねっ、是非お願いしますよ-」
ここまで読んで頂き、どうもありがとうございました。
次話は、翌日水曜日の話、薫視点からになります。
拳銃だとか、軍の設備だとかの設定は、すいません。思い付きです。
気になる肩がおられましたら、スルーして頂ければと思います。
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