女子怪5
天野『メリーさん、零君がごめんね』
メリー『天野が謝る必要はないけれど、ちゃんと躾けなさいよ』
メリー『本当に、アイツはデリカシーがないから』
メリー『私の和服の上で蚊を潰すし』
花子『刺されなくて良かったじゃないか』
メリー『市松人形が刺されるわけないでしょ』
メリー『服の価値が分かってないのよ』
メリー『まあ私ばかり愚痴ってもアレだし交代するわ』
天野『メリーさんの打ち込みが早すぎて、誰もついてこれていなかったもんね』
メリー『私としたことが、ついつい熱くなってしまったわ』
妖精『なら次は私でいいかしら。私は愚痴はあまりないわね。かといって、恋バナも終わってしまった話だし』
天野『えっと、妖精さんの好きな人って、体育の先生でよかった?』
妖精『やだ。知っていたの? 恥ずかしい。ええ。私が好きだった人は、その人よ。高校の部活が一緒でね。あの頃は楽しかったわぁ』
天野『えっと、体育の先生のご結婚は……』
妖精『もちろん知ってるわ。正直ほっとしたわ。後追いとか、本当にやめてほしかったし』
花子『君はいさぎいいんだな。時折、好きな相手を道連れにする霊もいるが』
妖精『そうねぇ。私は、彼が笑っていてくれることが一番嬉しかったから。そもそも一緒になりたいなんて全く考えてなかったし。そう考えると、それが本当に恋だったとは言いずらいのよねぇ。ムッツリとかではなくて、本当にこれっぽちも性的な事は考えたこともなかったもの。でも確かに彼が一番好きだったことには間違いないわ』
天野『なんか、私も分かるかも。生霊だった時、ただ零君と楽しく過ごしたいだけだったから』
妖精『そういう事ね。彼に子供が生まれると聞いて、嫉妬より嬉しさが上回ったし。できたら子供の顔を見たいけれど、体育館からは移動できないし、いつ消えるか分からないから難しいけど。人生上手くいかないものねぇ』
天野『いつ頃生まれるんだろ』
妖精『春という話よ。ただその頃は移動とかもあるし写真でも見れないかも……。でも消える前に、夢枕ぐらいたっておきたいわねぇ。どうせ今も引きずってるでしょうし。厳ついゴリラなくせに、繊細なのよ』
天野『……ゴリラって。好きな人なんだよね?』
妖精『生徒からもゴリ先生って呼ばれてるじゃない。いいのよ。私には、イケメンゴリラに見えてるから。さあ、私の話は終わりよ。次はじゃあ、花子さん、よろしくね』
花子『ここで私か。うーん。私も、私自身の恋愛話はないな。そもそも女子トイレだから、男との出会いがない。出会った場合は、大抵が不審者だから撃退案件だ』
メリー『そういえば、大丈夫なの? 天野も利用するんだから、変な事をする男は徹底的にぶちのめしなさい』
花子『ぶちのめすのは難しいけれど、盗撮用のカメラは水没させてるよ』
天野『げっ。気持ち悪い……そういう人、いるの?』
花子『今はいないよ。前にいたけれど、厠の神に相談して、呪ってもらったから、無事に退職したみたいだ。ふふふふふ。厠の神は綺麗好きなのさ』
天野『まさに天罰……』
花子『あんな汚いものがやってくるなんて虫唾が走るからね。女子トイレは女子の聖域だよ』
メリー『神が出てくるなら、安心ね』
天野『そうだね……えっ。ちょっと待って、退職って事は?!』
花子『残念だけど、誰もが聖職者に適合しているわけではないんだ。これからも聖職者として間違った行動をすれば、天罰が下るだろう』
妖精『ちなみに厠の神の天罰って?』
花子『一番多いのは……そうだね。トイレが間に合わなくて、社会的に死ぬ』
天野『うわー……』
花子『社会の窓を閉じるチャックでブツを挟む』
妖精『ひっ』
花子『昔なら、偶然足を滑らせ、肥溜めにドボン。あれで死ぬのは悲惨だ』
メリー『エゲツナイわね』
花子『神だからねぇ。罪が軽くてもその辺り加減がされないこともある。ただし厠の神は、一族子孫末代まで、共同で罪を背負わすことはまずないから、優しい方だと思うよ』
天野『神様怖い……』
メリー『あいつらは、力があるから傲慢なのよ』
花子『君もそれに近い存在じゃないか』
メリー『認めない』
<メリーさんの激おこスタンプ>
妖精『なんだか話が怖くなってきちゃったから、天野さんの恋バナをよろしく』
天野『う、うん。分かった。なんだかこの空気で話しにくいけど、私の好きな人は、柳田零君と言います』
メリー『知ってるわ』
花子『知ってるよ』
妖精『知ってるわ』
天野『うっ。えっと、今付き合ってます。今度、夏祭りに一緒に行く約束してるよ』
メリー『ツインテールで行きなさい。攻めて攻めて、そして突き放す。これが恋の極意よ』
花子『……突き放すと、天野さんが大変な事になるんじゃないかな? 彼、色々危ういし』
妖精『夏祭りなら、浴衣とかいいんじゃない? 浴衣はあるの?』
天野『うん。実は、お母さんの方が張りきっちゃって……』
妖精『へえ。親公認なのね。彼、礼儀正しそうだものね。メリーさんは色々言いたい事あるでしょうけど、人間からしたら、かなりの優良物件よ』
花子『確かに悪い男ではないな。怪異に対しては色々と噂になるが、わざわざ喧嘩を売りに来たことはないし』
メリー『私には売ってるわよ。まあ、悪い男ではない事だけは認めるわ。たちが悪いけど』
天野『へへへ。零君とのデートは久しぶりだから楽しみなんだよね。夏休みは宿題が多すぎて、あまり遊べないし。零君と図書館で一緒に宿題する約束はしたけど』
妖精『青春ね』
天野『えっと。以上です』
メリー『はぁ。柳田が幸せなのはムカつくけど、天野が幸せなのは許せるから、面倒だわ』
メリー『まあ、あんまり遅くなると、天野も明日に支障をきたすでしょうし、今日はこの辺りでお開きにしましょう』
メリー『次の開催は、天野のデートが終わってからでどう?』
妖精『いいわね。デートどうだったか色々聞かせてちょうだい』
花子『もちろんデート前でも、相談にのろう。気軽に連絡をくれ』
天野『うん。ありがとう。じゃあ、おやすみなさい』
メリー『おやすみ』
花子『いい夢を』
妖精『おやすみなさい』




