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妖精さんの幽霊観

 体育館の妖怪――もとい、体育館の妖精は、見えると不審者情報にのりそうなセーラー服おじさんだった。掃除をしてるから妖精扱いらしいけど、知らない方が幸せってありそうだ。


「えっと。妖精という名前が付いてみえるのですが、あまり妖精っぽくないというか……。幽霊だと妄想に影響されることはないのですか?」

 私の中の妖精と言えば、手のひらサイズで背中に虫のはねが付いているイメージだ。でもセーラー服を着ている以外生前の姿……なんだよね?

 そういえば都市伝説に小さいおじさんというのがあったような……。まさか、これも誰かの妄想の影響?

『私は私のままでいたい意志が強いから要らないものは跳ね返してるわ。多少影響されているかもだけど、ほぼ変わってないはずよ。部活の男子は耳の長い美女をイメージしていたわねぇ』

「それは……うーん。高望み系妄想ですね」


 RPGに出てきたり、指輪を捨てる旅とかに出てくる長寿の生き物だよね? またはうさみみ獣人系か。どちらにしても、知らないって幸せだ。

『勿論、イメージを取り入れて、変わることもできるわ。可愛い美少年にだってなれるでしょうね。でも変わってしまったものを戻すのは至難の技よ。他者の影響を受け入れた方が長く幽霊生活を楽しめるかもしれないけれど、私は私のままでいたいから、このままでいいのよ』

「そういう事ってできるものなんですか?」


 つまり、ご飯を選ぶって事でいいんだよね? 

 メリーさんの話だと、人間の強い感情を怪異は食べているのだ。メリーさんは恐怖を食べているが、ジェイソン君は腐女子の妄想を中心に食べている。そして、花子さんは恐怖と妄想、どちらも食べてるというイメージだ。そういえば、昭和の小学生は恐怖を食べているけれど、メリーさんはもう色々消えかけているような事を言っていた。自分が誰でどこに帰るのかも分からないと。……肉体を失えば忘却が進むともメリーさんは幽霊について話していた。その状態で他人の妄想を取り入れず、自分を保ち続けるのは結構難しいのではないだろうか。


『意思次第かしら。絶食ダイエットってそういうものでしょ? 流石に他の怪異に飲み込まれて融合したら無理だけどね。その時は、それが死だと受け入れるつもりよ。本来なら、この時間は存在しない時間なんだもの。セカンドライフはゆったりいきたい派なの。私がここに居るのは、学校生活に未練があったからね。ブラック企業に勤めて死んだはずなのにここにいるんだから』

「えっ。ブラック企業?!」

『就活は焦っては駄目だし、洗脳されては駄目よ。決められた時間で終わらない仕事を出してくる方が悪いんだし、休日出勤を強いて来たり、残業代は払わない方針で個人の努力とか言ってくるのは、アウトよ。本当に、あの社長呪い殺してやりたいと思ったものだわ』

 パキパキっと指を鳴らす妖精さんが怖い。結構恨んでいますよね? 恨み節を呟く妖精さんの顔が人一人殺しそうなものになっている。うん。就活の闇は気を付けよう。


『でも、クソを呪い殺すより、私はここで学生たちの部活を見ていたいと思ったのよね。色々あったけれど、結局この時間が、私の中で一番輝いていて、一番未練もあって、私の核だったのねぇ。だから私はここで地縛霊になっているのよ』

「ジバク霊ってどういう霊でしたっけ?」

 ホラー漫画か小説で聞いた事があるような様な言葉だけれど、あまりピンとこない。

『その場所に囚われた幽霊って事よ。反対にどこにでも移動するのが浮遊霊ね。そしてもしも肉体が死んでいなければ、地縛されてても浮遊してても、生霊と分類されるわ。幽霊と言っても、色々あるのよ』

「えっ。生きていても幽霊になる事があるんですか?」

『あるある。ほら、臨死体験で自分の肉体を上から見ているとか、金縛りにあった時にそういう経験をしたとか聞いた事ない?』

「あるよな……ないよな? 怖い話が苦手で、あまり知らないんです。その手の話」

 ホラー映画なんて絶対見れないし、夏に怪談の特番をやるとかも止めて欲しい。チャンネルを回した時に偶然見てしまう恐怖とか辛い。


『……そうなのねぇ。それで、貴方はどうしてこんなところでうずくまっていたの?』

「あっ。その……友達と喧嘩をしてしまって」

『青春ねぇ。貴女は喧嘩した事を後悔しているの?』

 後悔しているのか。

 ……してるんだろうなぁ。だって、柳田君は良かれと思って、怪異と付き合うなと言っていたのだし。

『後悔してるなら、謝るなり、話し合うなり、早めにケリを付けなさい。いつかは学生は卒業するの。卒業したらね、早々会うこともないわ。そして謝る機会も話し合う機会も失うの。そして死んでしまったら、二度と伝えられないの。私みたいに、伝えられないまま後悔と向き合い続けるしかなくなるのよ。そして、それは相手も同じかもしれないわ。それが先輩幽霊からのアドバイスね』

 そう言って、体育館の妖精は、バチンとウインクする。凄くいいことを言われた気がするけれど、見た目がセーラ服おじさんな為に、色々台無しだった。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 妖精幽霊さん生前はご苦労なさったのですね。 後輩に親身にアドバイスくれるいい先輩だ。 学校の怪異さんは優しいなあ。 ブラック企業は辞めたいという正常な思考を奪うから妖精さんも苦労したのでし…
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