↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
42/98

三不思議の体育館の妖精さん

 柳田君に暴言を吐いて、私はその場を逃げ出してしまった。

 でも友達の多い柳田君には、相手が怪異である花子さんだとしても仲良くしたい、私の気持ちなど分からないだろう。あんな風に声をかけられたのは初めてなのだ。


「あああああ。やってしまった」

 校舎を出て、体育館の渡り廊下まできて、私は足を止めた。何やってるんだろう。柳田君は私を心配してくれたのに。

 深くため息をつきながら、しゃがみこんだ。

 柳田君は好きだし、心配してもらえて嬉しいけれど、ボッチの辛さを分かっていない。学校でも家でも話し相手がいないのだ。家ではシロが聞き役をしてくれるけれど、シロは話してはくれない。メリーさんとは仲良くなったけれど柳田君と繋がっているし。それに時折無性に人の声が聞きたくなる。


「そんなに駄目かなぁ」

 体操座り状態で、私は落ち込んだ。

 今までの感覚なら、駄目だと思っただろうけれど、メリーさんも昭和の小学生も骸骨も花子さんも、怖いけれど、怖くないというか……とにかく、ただ怖いだけの存在ではなかったのだ。そんなに彼らと深く付き合うのは駄目だろうか。

 勿論人間の友達を作れればそれが一番だろうけれど、今の私は無視されることが多い。


「あー、友達が欲しい」

 そうすれば、別に花子さんにこだわることもないのだ。

 友達さえいれば、柳田君との事だって相談できるし、寂しくないし。

『分かるわぁ。一人で生きていくって思っても、人って誰かと繋がりたいのよねぇ』

 突然野太い声で、同意を得られた為、私はビクッと肩を揺らした。……えっ。誰?

 不審者の三文字が頭に浮かび、慌てて顔をあげた。


「ぎゃっ。化け物っ?!」

『失礼しちゃうわ。怪異ではあるけれど、私は化け物ではないわよ』

 顔をあげた瞬間、目に飛び込んできたのは、ひげ面の男だった。ただし、服はセーラー服を着ている。胸筋が発達しているので、胸もあるように見えるが、明らかに筋肉のなせる業だ。

 足のすね毛はちゃんと処理してあるけれど、かなり筋肉量が多い上にミニスカなので、色んな意味で視界の暴力を感じる。

 うーん。でも、服の趣味は、本人の自由だしなぁ。周りの為に、私だって制服を着ているわけではないし。そう思えば、服に関してどうこう言うのはマナー違反だ。

 男がスカートを履いてはいけないという法律はない。


「ごめんなさい。えっと、怪異……なんですか?」

『ええ。体育館に住んでいる幽霊よ。体育館の妖精とも呼ばれているわ』

 私が化け物といった事を謝れば、あっさりと目の前の女装した怪異は許してくれた。

 それにしても妖精って……駄目だ。私の知ってる妖精じゃない。

「よ、妖精。えっと、妖怪的な存在なんですか? あれ? でも幽霊って。そもそも怪異なのに、何で姿も声も分かるの?」

『正体は幽霊よ。でも、掃除をこっそりするから学生には妖精って呼ばれてるの。普段は見えないし、声も届かないから。きっと貴女とは波長が似てるのね』

 そうか。波長が、似てるんだ……。

 差別は良くないと分かっていても、あまりにインパクトがある外見の所為で、似てると言われても喜べない。……というか、幽霊なんだ。

 不審者情報に載りそうなセーラ服おじさんなので、また誰かの妄想の産物かと思った。ジェイソン君でBLできるつわものが、この学校にはいるのだし。


「あの。幽霊ということは、その姿は生前のものなんですか?」

『まさかぁ。これは死んでからの趣味よ。生前は、これでもちゃんとサラリーマンをしていたの』

「……はぁ。えっと。サラリーマンなのに、セーラー服なんですね」

 美少女戦士に憧れたのだろうか?……コスプレ。そう。コスプレだと思えば、不審者度が下がる気がする。

 ここはコスプレ会場じゃないけどね。

『私、女になりたかったのよね。高校生ぐらいの時が一番悩んでたわ。でも生前はセーラー服なんて着れなかった。だから、死んでから母校でセーラー服を着て漂っているのよ』

「卒業生だったんですね」

 幽霊だと言ったので、ジェイソン君や花子さんとはまた別だとは思ったけれど、どうやら彼は私の先輩だったらしい。サラリーマンをやっていたというのだから、そこそこ年上の可能性が高い。

『ええ。今の貴方と同じ、人間関係に悩むオトメンだったわ』

 

 オトメンかぁ。

 男の娘というには育ち過ぎているからねぇ。

 私はツッコミを放棄して、曖昧に笑い誤魔化すのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] 天野さんは許容範囲が広いというかゆるいたいうか、何でもとりあえず受け入れてくれますね。 これは、視覚でみなければよかったパターンですね。 妖精さん、こころは乙女。 性別はオトメン。 メリー…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。