三不思議のジェイソン君
確かに色白で、やせ型で、理系っぽくって、髪がないけれど。
この想像はしていなかった。
メリー【改めて紹介するわ。この学校の警備している、ジェイソン君よ】
メリー【普段は化学準備室にしまってあるわ】
メリー【恋人は、人体模型のフレディー君。ちなみにフレディー君は、今のところ付喪神にはなっていないわ】
「待って。メリーさん並に情報が多すぎて、追い付いていない」
何故、彼の名前はジェイソン君。何故、恋人の名前がフレディー君。怖い展開しか想像できない名前だ。混ぜたらいけない系だ。というか、恋人なのに男と男じゃないか。うん。別に男と男の恋を否定する気はない。いや、そもそも片方骨だし。ああああ。ツッコミが多すぎて、どこからツッコミを入れればいいのか分からない。
「男同士なのに恋人なのか?」
聞いたっ!!
流石は柳田君。普通なら躊躇しそうなことも普通に聞ける貴方が好きです。
メリー【そうよ。男同士だから恋人になれないという考えは古いわよ】
メリー【彼らは、恋をしてる】
メリー【女子生徒の中で】
んんん?
「女子生徒の中って、どういうこと?」
私も恋する乙女。恋は尊重したいところだけれど、女子生徒の中でというのはさっぱり意味が分からない。どこから現れた。女子生徒。
メリー【ジェイソン君は喋るのが苦手なシャイボーイだから私が説明するわ】
メリー【付喪神というのは、基本的には長い年月が経って魂を持った物を指すわ】
メリー【ただし、人間の強い想いが合わさって、年月が経っていなくても魂を持つことがあるの】
メリー【ジェイソン君はそのタイプよ】
メリー【学校にいる暇な科学部の女子生徒が最初にジェイソン君について妄想したわ】
メリー【その後も妄想の伝統は続き、現在ジェイソン君は、人体模型のフレディー君と恋人関係にあるという設定になっているのよ】
メリー【あら。ごめんなさい。沢山話してしまって。ジェイソン君が恥ずかしがっているわ】
……設定は、果たして恋と言っていいものなのか。とりあえず、腐女子の妄想力が半端ないことと、ジェイソン君が恥ずかしがっているのはこちらからは分からないということだけは分かった。
だって、骨だし。頬を染めても、白いし。
そもそも喋るのが苦手なのはシャイボーイだからではなく、声帯がないからでは……。
「メリーさんは付喪神なのか?」
「相変わらずマイペースだね」
柳田君は、この混沌とした話をものともしていなかった。流石、柳田君だ。ぶれない。
メリー【私はメリーよ】
メリー【それ以上でも、それ以下でもない】
メリー【だから、怖さが半減するから、私の事を探るなと言っているでしょうが】
メリー【ジェイソン君と違って、見た目は可愛い女の子だから、脅かすのも大変なのよ】
「……メリーさん、安心して。ちゃんと私は怖いと思っているから」
鞄の中からこんにちわしたり、カタカタ震えたり、髪の毛が伸びたら、骸骨じゃなくても怖い。柳田君が例外なだけだ。
「それで、フレディー君ってのは、付喪神にはなっていないわけ?」
「そういえば、この学校、骨格標本と人体模型があるんだね」
教材として、似てる気がするけれど。普通は一つの学校に一つでは? 私は詳しくないのでよく分からないけれど。まあ、あるから、あるのだろう。……そういえば、ジェイソン君の質感って、本物っぽ――ひぃぃぃぃ。いやいやいや。そんな馬鹿な。
本物なわけない……よね? えっ。ちょっと、本当に、怖いんだけど。
メリー【フレディー君はなってないわね】
メリー【さあ、何故かしら】
メリー【フフフフフフフ】
分からないということは怖いこと。
私はメリーさんの言葉を改めて認識した。




