柳田君の爆弾投下
分からないことは怖いこと。
ジェイソン君のおかげで、知らないが故のヒヤリを覚えた私は、深く追求するのは止めた。知った方が怖くなくなる可能性もあるけれど、知ったことで余計怖いかもしれない。
とにかく、今の彼はメリーさんの友達で、危害を加える存在ではない。それでいいじゃないか。……加えないよね?
「ひ、一つだけ質問いい?」
メリー【何かしら?】
メリー【ジェイソン君は何でも聞いてと言ってるわ】
メリー【フレディー君との関係がどこまでいってるかは秘密だそうよ】
「うん。それは、あんまり知りたくないからいいよ」
BLが駄目とかそういう問題ではなく、骨と内臓との恋愛がどうにも受け付けないだけだ。私にはホラー耐性がないので、スプラッタ系は無理の一言に尽きる。
「何で名前がジェイソンなのかなと……えっと。人を殺したりはしないんだよね?」
そういう怪異じゃないよね?
メリーさんや柳田君が慌ててないから大丈夫だと思うけれど、その手の見極めができないので、重要な場所はちゃんと押さえておきたい。
メリー【ジェイソン君はそんな事しないわ。とても大人しい怪異よ。存在するだけで相手を驚かせられるし、妄想の力を貰っているから、特にお腹が空くこともないもの】
メリー【ふむふむ。なるほど。名前の由来は、13日の金曜日に学校に届いたかららしいわ。当時購入した教師が、愛称をつけて、生徒にも親しんでもらおうとしたみたい】
メリー【既に人体模型があったのに、ゴリ押しで予算を貰ったから使わないといけなかったのね】
骨格標本の出番って少なそうだもんね。どういう経緯で買う事になったのかは分からないが、絶対教材として使ってやるという熱意は分かった。フレディはアレだな。絶対、骨がジェイソンだから、ノリで生徒が名付けたに違いない。そこからどうしてBL化したのかは、腐女子にしか分からないだろう。彼女達の妄想力は、計り知れない。妄想力をはかるメータがあったら振り切れ間違いなしだ。
「だから科学部が、毎年文化祭で、骨にコスプレさせてるって噂があるのか」
「そうなの?」
「先輩から聞いたんだ。去年は男の娘にしたんだってさ」
「へぇ」
骨だから性差って分かりにくい気がするけど。……まあ、つまり女性の服を着せたということだな。ただ単に丁度いい服がなかっただけな気がしなくもないけれど、あえて男の娘と題名を付けた辺りに腐女子の執念を感じる。
メリー【恥ずかしかったらしいわ】
メリー【髪がなくて】
メリー【それなのに、カチューシャを付けられたそうよ】
メリー【酷い辱めだわ】
……うん。そうなのかな? まあ、そうなんだろう。カチューシャは髪があってこそのものだ。もうどこら辺が恥ずかしくて、どこら辺が問題なしか分からなくなってきているけど。だって、ジェイソン君はいつだって生まれたままの姿だし。
「なら、えっと。どういう髪型がいいの? その、男性的なのがいいのか、それとも女性的なのがいい? ロン毛で一つの三つ編みとかもありだとは思うけど」
男の娘をやった怪異だと、好みがさっぱり読めない。ちなみに見た目から似合うものをと言われたら、分からないとしか言えない。骸骨に髪の毛って、なんだかシュールだ。だんだん普通が分からなくなってきた。
メリー【男らしくなりたいそうよ】
メリー【ジェイソンは心は男だと言っているわ。もちろん、骨格も男だけど】
メリー【短髪のかつらがあるからそれを使ってあげて】
メリー【眼鏡と白衣もお願い】
……七三わけかな?
眼鏡と白衣もセットなら、一番似合うのはそれだ。
「待って。耳がないけど、どうやって眼鏡をかければいいかな?」
鼻は辛うじてあるけれど、耳のあたりは穴だけだ。
メリー【フレディ君に会うまでは気合で維持するらしいから、鼻にかけてあげて】
メリー【最悪、白衣のポケットに入れるそうよ】
メリー【目指せ鬼畜眼鏡?】
「メリーさん。多分、ソレ、駄目な奴」
腐女子がジェイソン君に仕込んだネタが恐ろしい。フレディー君生きろ……いや、生きてないんだっけ。
「じゃあ俺が眼鏡と白衣は着せるな」
柳田君の協力の元、私は四次元化している机から取り出したかつらをワックスでいい感じに整える。……うん。いい感じに理系骨になった。余計に怖さが増した気がするけど、最初から全部怖いのだから、何も言うまい。
メリー【明日は土曜日だから、フレディ君と校内デートらしいわ】
メリー【頑張りなさい】
……校内デート。うん。まあ。校内デートだね。とりあえず、具体的なイメージは削除する。色々想像したくない。
「そういえば、柳田君は土日は何かやってるの?」
柳田君は帰宅部で部活をやっていないので、土日は何をしているのだろう。寺のお手伝いとかだろうか。
「うーん。とりあえず、病院かな」
「えっ。病院? どこか悪いの?」
「俺じゃないよ。お見舞いに、毎週行ってるんだ」
お見舞いか。
毎週って、かなりの頻度だ。身内で誰か悪いのだろうか。
「えっと、誰か身内の方がご病気なの? あ、言いたくなかったらいいよ。ごめんね」
「んー。家族は、皆元気だから大丈夫。俺の家、風邪一つひかないタイプだから」
そっか。柳田君、中学の時から皆勤賞だもんね。
身内が元気で良かったけれど、なおさらだったら誰のお見舞いなのか気になる。気になるけれど、聞いていいものだろうか。
「見舞い相手は、俺の好きな人なんだ」
「へー。好きな人……えっ? 好きな人?」
柳田君に好かれよう作戦をしている矢先の爆弾投下に、私はフリーズした。




