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母に恋人  作者: 玉城毬
9/10

家族で、恋人で

 あの後から私と翔太さんは、家族ぐるみのお付き合いをしながら、二人だけの恋人の時間も持つようになった。

 誰にも言わない、二人だけの交際。

 親が内縁関係になって仲良くなったことを利用した上での、お手軽で楽な関係だった。

 それでも月に一回程度、家族みんなで会う時と、二人で会う時とが交互なので、ゆるい関係だった。

 密会場所は私のマンションの辺り、伊央くんを親達にお願いするので多少申し訳ないのだけれども、中年同士の甘い時間を過ごさせてもらった。

 そんな関係も三年目、私は40歳になった。

「藍さん、お誕生日おめでとう!」

「ありがとう、伊央くん」

 いつもならみんなで外食かケーキを食べるんだけど、私の体調がいまいちなため、電話ごしにお祝いの言葉をもらった。

 「40歳」って年齢言わないところ、配慮されてるなぁ。

「体、大丈夫?」

 少し心配そうに聞いてきた。

「大丈夫だよ。

 行けなくてごめんね。

 私の分まで、食べてきて!」

「……うん、わかった。

 またね」

 私は電話を切り、だらりと横になった。

 いつもなら喜んで祝ってもらうんだけど、先月から、体調がいまいち。

 仕事にはなんとか行ってるけど、後は引きこもっていた。

 ああーー、年齢を感じる……!

 歳も、見た目も、体力も、しっかりおばさんになっているんだなぁ。

 人生も真ん中から後半にさしかかってきたよ、いい加減、覚悟と責任を持たないと!

 そんな感じで、最近の一人ごろ寝ループにはまっていると、呼び鈴が鳴った。

 こんな時間に、なんか宅配頼んだっけ??

 重い体を引きずって確認すると、翔太さんだった。

「あれ、みんなでご飯食べに行ったんじゃなかった?」

「うんーー。

 その予定だったけど、抜けてきた。

 おじゃまして、いい?」

「……、どうぞ」

 アポなしにちょっとムッとしたけど、私はあげることにした。

「今日会えないと来月になっちゃうから、気になっちゃって。

 誕生日、おめでとう。

 小さいケーキ買ってきたけど、食べる?」

 どこかで買ってきてくれたんだろう、小さな箱を差し出してくれた。

「後で……、いや、代わりに食べて」

「食欲なかった?

 聞かないで買ってきちゃってごめん。

 お医者さんは行った?」

「うん……。

 疲れやすいから無理するな、ってさ」

「そっか……。

 じゃあ、頂いちゃうね」

 そう言って翔太さんは、おいしそうなケーキを丁寧に出して、パクパク食べ始めた。

 食べていいって言ったのは私なんだけど、なんか腹立ってきた。

「具合の悪い人の前で、よくそんな食べられるわね!」

「なんだよ、食べていいって。

 ……じゃあ、持って帰って食べるよ。

 お大事に」

 翔太さんは箱を片づけて、立ち去ろうとした。

「待って、行かないで!!」

 急に寂しくなった私は、翔太さんの背中に抱きついた。

「どしたんだよ!?

 体調悪いから不安定なの??」

 翔太さんに言い当てられて、ハグされて、私はボロボロ泣き出した。

「今日まで顔見に来られなくって、ごめん」

 彼は私に優しくくっついて、なだめてくれた。

 私はしばらく感情の溢れるままに甘えて、5分くらいしてやっと、落ち着いた。

「子どもが……」

「えっっ!!」

 目を丸くした翔太さんは、私の体を見つめて、やがて肩をすくめて言った。

「どうしてすぐに言ってくれなかったの?」

「……。

 気をつけてたのに、なんでだろうって受け入れられなくて。

 40歳で未婚で妊娠、どうしたらいいかわからなくなっちゃって、……」

「いろいろ、考えちゃったんだね。

 話してくれて、ありがとう。

 俺はうれしいよ、藍と子どもに恵まれて、家族が増えるなんて」

「でも、親に悪い……」

 翔太さんは、困ったように笑った。

「そうだね、内縁で落ち着いてる二人だけど、将来的には入籍する可能性あるかもしれないしね……。

 でも、産まれてくる子のこともあるから、俺達で話し合って、二人に報告しないとーー」

「そうだよね。

 認知してもらってシングルで育ててく自信もないし、いずれはお腹も大きくなってわかるんだから、どうするのかちゃんとしないと……。

 翔太さん、さっき言ってくれたけど、私達は、結婚して4人家族になる方向で、いいのかな?」

「うん、そうしたい。

 父さんと美桜子さんも含めて、早めにきちんと話し合おう。

 あ、産院も付き添うから」

「ありがとう、来月だから、その時で。

 じゃあまず、家族会議から、がんばろうっ!」

 翔太さんに打ち明けて将来の気持ちを確認した私達は、手を取り合って、親達への報告に向け決意を新たにした。



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