王族の話のようです。
台風だなーと思いながら早めに予約投稿してたら、まさかの鹿児島のほうに逸れて普通の曇り空。ただの休日になりましたきゃっほい。
ホロウフラグメント楽しいよ!
一方そのころ。サルク王国の首都サルクスの王城にある王の執務室を、ある2人の人物が訪れていた。
「父上!」
扉を開けるなり大声を出した男はサルク王国第2王子アグリ・サルク・サーザンで、その後ろにいるのが母サルク第2夫人ベラ・サルク・サーザンだ。アグリはその身に脂肪をたっぷりと蓄えており、ベラは化粧がとても濃い30代だ。2人とも元が良いだけに、大変もったいないことになっている。アグリはスラリとしているダリアを、ベラは同じ30代なのに若々しく見えるカエデをよく目の敵にしている。
「何事だアグリ。騒々しいぞ」
見た目からして高級な椅子に座って、書類と睨めっこしているのがこの国の王ファモス・サルク・フォルネストだ。40代に足を踏み入れようとしていて、日ごろの疲れのせいか白髪が少しあるが、まだまだ衰えていない。その証拠に服から覗く腕や手にはしっかりと筋肉もついている。
ちなみに3人とも髪の色は藍色だ。目の色も緑である。
「落ち着けアグリ。一旦座れ」
「これが落ち着いていられますか!」
机を強く叩くアグリ。いくつかの書類の束が崩れて処理したものとしていないものが混ざって、ファモスの額に青筋が走った。
「いい加減エルフの街を攻めましょう! やつらが街に入って既に1日。その間誰も入れなかったというではありませんか! これはエルフが我々を拒んでいる証拠です!」
「それくらいは私にも報告は来ている。しかし、それは我々が直接依頼した者だけだ。お前もあの森の性質は知っているだろう? 一般の冒険者はや商人は入っているとの報告もある。どこぞの愚か者が何か横やりを入れたとも限らんしな」
父に見つめられて、アグリは心の中で舌打ちをした。
事実、直接依頼したものはアグリとベラから密命を受けている。それはファモスも気付いてはいるが、その密命の内容がカエデ達の暗殺であることは知らない。ましてや暗殺が成功した場合、一生豪遊しても使い切れないほどの金が報酬として与えられることも。
そもそも、エルフの森には結界が張ってある。エルフにとってマイナスになるものを弾く結界だ。エルフにとって将来プラスになるであろうカエデ達の暗殺は確実にマイナスである。森に入ってもいつの間にか入り口に戻されるので、依頼された者は暗殺をやめようと思わない限り一生エルフの街に入ることはできないだろう。また、その判断は精霊達が下すので、多少曖昧だ。
「そちらについても現在調査中だ。私に報告が来るまではこの件に一切かかわることを禁ずる。分かったら出ていけ」
マズい。確かにアグリはそう感じた。このままいけばいずれ自分がやったことは芋づる式にバレるだろう。どうにかしなければーー
(クケッ)
いつの日だっただろうか。幼いころ王や大臣達の目を盗んで1度王座に座った時から自分だけに聞こえるようになった声。何かに憑りつかれたのは分かるのだが、話せることと危害を加えないことしかはっきりしていない。
周りから切り離された感覚がする。
(どうした。今は貴様と話している時ではない)
(マアイイジャネエカ。デ、ドウスルンダイ?)
(それを今考えているところだ)
(ナラヨォ、俺様ニ良い考エガアルゼ。変ワレヤ)
「どうしたのアグリちゃん?」
「ーーいえ」
急に押し黙った息子を心配したベラが声をかけるも、素っ気のない返事が返ってくるだけである。
(ドウスル? コノママジャコノ部屋ヲ追イ出サレテ終ワリダゼ?)
(ーーいいだろう)
‘何か’に急かされて、アグリは決断した。それが少し先の建国以来最悪と謳われる事件に繋がるとも知らずに。
(クケケ。ソウコナクッチャ)
意識が入れ替わる。一瞬痙攣して、アグリは俯いた。
「……クケッ」
「どうした?」
「クケ、クケケケケケケケ!」
‘何か’は顔を上げ、喜びのあまり笑った。口元が三日月のように歪んでいる。
「アグルちゃん!?」
「貴様、何者だ!」
「ヨウヤクダ。ヨウヤクコノ時ガ来タ」
息子の声に驚いたベラと、正体を何となく察して発したファモスの警戒の声を無視して、試すように体を動かす。
「フム、脂肪ガ邪魔ダガ、マア後デ何トカナルダロウ」
(おい貴様! これはどういうことだ!)
(ウルセエナア。分カッテンダロ? 俺様ガ体ヲ乗ッ取ッテメインノ意識ニナッタタコトニ)
アグリは言葉を出せなかった。何度か‘何か’の力を借りて色々としたことはある。その度に自分の体が動かせない、ちゃんと言えば勝手に動くなっていた。‘何か’に聞いたところ、「俺様ガ動カシテタンダゼ」と白状した。もちろん怒ったが、「ジャア俺様以上ニ上手ク動ケンノカヨ」と言われて押し黙るしかなかったのも事実だ。戦闘のノウハウなど剣を握ったこともないアグリには分かるはずがない。
しかし、いくら何でもやり過ぎと思ったことはある。つい最近は、飛来した吸血種に自分は悪魔族だと言った。相手を硬直させる為だとはいえ、あのまま逃げられていたらマズいことになったのは間違いなしだ。
それでも出来事が終わる度に体は返してくれたから今回も返すに決まっていると思っていた。しかし、このザマである。
「ーー息子よ、許せ」
ファモスがいつの間にか取り出した剣でアグリの両足を切断する。いきなりの事でアグリは戸惑ったが、自分を動けなくして‘何か’の動きを止めたのだろうと理解した。ほんの少しの時間で選択したにしては上出来と言えよう。
だが、動けなくするならば魔法や縄で縛るべきだった。体を切り分けるべきではなかったのだ。
アグリは気付いた。痛みがない。父母は気付いた。血が出ていない。
切られた足が靄を出し始めた。骨が折れる音や肉が潰れる音を発しながら次第に形が変わっていく。音が止まり、靄が消えるとそこに足はなく、代わりに浅黒い肌の小さな悪魔がいた。アグリの足もいつの間にか治っており、しかしそれは人のものではなく、どちらかと言えば犬や狼に近い形状だ。
「ちいっ!」
「クケケ、甘イ!」
ファモスは今度は剣の腹で殴って気絶させようとするが、‘何か’は2度目はくらわない。1度目は自分の近くで跪いている2体の悪魔を作り出すためにくらったのだから。
後頭部に迫る剣を叩き割り、2体の悪魔に命令する。
「オ前ラ、コイツラニ憑リツケ」
「「ハッ!」」
悪魔が2人の口に飛び込む。驚いた2人は何とか口から出そうとするが、悪魔は口の中で靄に変わってしまった。悪魔はそのまま血液を利用して脳に至り、己に魔力を流し込んだ。2人はだんだんと意識が薄れてゆき、体の支配を奪われてしまった。2人は‘何か’に再び跪く。
「憑リツキ完了イタシマシタ」
「ナンナリトゴ命令ヲ」
「ヨシ、オ前ハ王ノ記憶ヲ使ッテ無理ガナイヨウニ兵ヲ出シ、エルフノ女王ヲ攫ッテコイ。オ前ハ貴族ヤ町ノ住民カラ血ガ混ジッテイル者ガイナイカ探シ出セ」
「「ハッ! 仰セノママニ!」」
2人が行動に移り、自分の前から消えたのを確認して‘何か’は1人虚空に呟いた。
「王ヨ、我ラガ悪魔ノ王ヨ。一刻モ早クオ会イシトウゴザイマス……」
これで文章評価が下がらないといいんだけど……
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