戦闘終了のようです。
毎日更新している作者さん達は本当にすごいですね。よくそんなに書ける技術ありますよね。自分も欲しいです。
「ああ? いきなり何だぁ? つか、俺の鱗を斬った?」
全力で振り下ろした大剣は、右肩に少し食い込んでいた。いるだけだ。
アマダンタイトの大剣が少し食い込んだだけ? んな馬鹿な。剣を引っこ抜いて遠ざかり、こいつを観察した。
2mはあろうかという巨躯に、肩から手の甲までびっしりと黒い鱗が生えていて、膝から下はドラゴンのそれだ。そして、尾骶骨の辺りから太い尻尾が覗いている。
「ゼスト様、そやつがアインスを倒した冒険者です」
「へえぇ、お前みたいなガキがあいつをねえ……」
僕に興味の目線を向けてくる。目が合った瞬間、思わずすくんでしまった。
「……誰だお前は?」
「そんだけビビってるのに口を聞けるたあ大したガキだな。そのクソ度胸に免じておしえてやるよ。俺は新生魔王軍27柱……いや、アインスが死んだから26柱か、まあどうでもいいや。とにかく、最後の1人、ゼストだ」
「ゼスト……」
名前を反芻して、解析してみた。
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ゼスト:『Z』
最古の黒竜・オス;1億5328万4679歳:Lv.48万2510
STR:???
AGI:???
VIT:???
DEX:???
LUC;???
『スキル』
「???」「???」「???」「???」「???」「???」「???」「???」「???」「???」「???」「???」「???」「???」「???」「???」「???」「???」「???」「???」「???」「???」「???」「???」「???」「???」「???」「???」「???」「???」「???」「???」「???」「???」「???」「???」「???」「???」「???」「???」「???」「???」「???」「???」「???」「???」「???」「???」「???」「???」「???」「???」「???」「???」「???」「???」「???」「???」「???」「???」「???」「???」「???」「???」「???」「???」「???」「???」「???」「???」「???」「???」「???」「???」「???」「???」「???」「???」「???」「???」「???」「???」「???」「???」「???」「???」「???」「???」「???」「???」「???」「???」「???」「???」「???」「???」「???」「???」「???」「???」
…etc.
『固有スキル』
「???」
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最古の竜? 1億歳? Lv.48万? いや、そこじゃない。注目するのは、ステータスが見えないということだ。たしかフレイヤにこんな話を聞いたことがある。『力の差が開き過ぎると、ステータスが見えないことがある』と。
勝てっこない。じゃあどうする? 逃げる? 逃げられる? 無理だ。じゃあ僕は、死ぬのか?
「お前、今俺のステータスを見て逃げようとしたな」
「!?」
何でわかった?
「何で分かった? って考えたろ。1億年も生きてると、だいたいの考えてることは読めるようになるんだよ。
言っておくが、俺は弱いやつをいたぶる趣味はねえから今は殺さねえよ」
ホッと息をついたのもつかの間、
「けどな、仲間がやられて何もしねぇわけがねぇだろ。死なない程度にはやらせてもらうぜ」
次の瞬間、僕は地面に叩きつけられていた。気管に血が詰まって悲鳴をあげることもできない。
どうにか血を吐き出して上を見ると、いつの間にかゼストは刀身がギザギザした黒い大剣を持っていた。
「へぇ、お前『自己再生』スキル持ちか。運が良かったな」
既に治りかけている傷口を見ると、ドクンドクンと動く内臓が見える程に肉が抉り取られていた。おそらくあの刀身の形状のせいだろう。『自己再生』を持っていなかったら、そのまま死んでいたはずだ。何が殺さないだ、殺る気満々だったじゃん。
「……少し聞きたいことがある」
「とことん度胸があるなお前。まあいいぜ、答えてやるよ」
「まず1つ。あんたは竜種だろ。何で人に近い姿をしてるんだ?」
「そりゃあ簡単なことだ。俺は魔人だよ」
魔人。魔獣や竜種、アンデット等のいわゆるモンスターが人化したものだ。魔人になると体の体積同様に力も凝縮される。魔人化するにはそれ相応の強さがいるらしい。
「やっぱり魔人か。あと1つ。何でそんなに強いのに、お前は魔王の下につく?」
「んー……、そうだなぁ、お前にゃ理解出来んかもしれんが、1億年も生きてると、『楽しみ』ってのがなくなるんだよ。暴れても、壊しても、何をしても楽しくねぇ。だから俺は、永い眠りにつこうかと思ったんだ。けど、そんな時だったよ、魔王が俺の前に現れたのは」
話を区切った時、哀愁漂っていたゼストの顔が明るくなったように見えた。
「魔王さぁ、なんて言ったと思う? 『俺様と一緒に来い。一緒にこの世を支配しようではないか。さあ、どうする?』って言ったんだよ。怪物と怖れられ、俺を見ただけで死ぬやつもいたのによぉ、そんときほど愉快なことはなかったぜ。そっからは知っての通りだ。仲間を増やし、みんなで作戦を考え、一緒に戦い、支配地を広げてな、楽しかったさ。まあ、最期は俺が離れてる隙に討たれちまったんだけどな、魔王。今の魔王は先代魔王よっかは甘っちょろいが、充分楽しめそうだからだな。
話が長くなったが、これでいいな?」
「充分だよ」
「お、怒らねぇのな」
「怒る? 何に対して?」
と言うと、ゼストは意外そうな顔をした。
「いやぁ、今まで何回かこの話をしてきたことはあったが、だいたいは『そんなことで人を殺したのか!』とか言ってキレるやつばっかだったからな」
「僕はそんなに聖人君子じゃないし、少しだけ、少しだけだけど、楽しみがないってのは分かるよ」
地球にいたころはいじめられて、それに耐えて、どうやって復讐するかだけを考えてなかったからな。気付いたら楽しむってどういうことかを忘れてた。忘れたから、どうやって楽しめばいいのかが分からなかった。それを思い出せたのはついさっきだ。
「……お前とは、良い敵になれそうだ。名前は?」
「幸人だ」
「ユキトだな。覚えたぜ。行くぞ、ニスエルタス」
「なっ!? 殺さないのですか!?」
手足を治して普通のサイズに戻って静かにしていたニスエルタスが驚きの声をあげた。
「言ったろ、良い敵になれそうって。別にお前が殺っても構わんが、まず無理だろ」
「くっ……分かりました。人間、次会った時が君の最期だ」
と言って、ゼストとニスエルタスはどこかへ飛んで行った。2人が見えなくなると、腰が抜けてその場にへたり込んでしまった。
「ご主人様!」
「ユキト!」
みんなが駆け寄ってきた。
「あはは、立てないや……」
「それより、傷は大丈夫なの?」
「もう治ったよ、ほら」
破れたコートを脱ぎ、べっとりとついた血を落とすと、右脇から左の脇腹までの斜めに大きな傷痕が残っていた。
「これ……」
「え、ああ、心配ないよ。傷痕は残ったけど、HPは回復してるし、ステータスに変なことはないから……」
その時、リル、セリア、ユリウスが僕に抱きついてきた。一体何が、と困惑していると、
「心配、しまし、た、お兄ちゃん、の、馬鹿」
「……ごめんな、3人とも」
泣いている3人の背中をすすり、落ち着かせる。そりゃそうだ、僕だって近しい人がバッサリ切られたら心配するな。特に女の子の涙は見てられない。なるべく心配かけないようにしよう。
「がうっ!」
「にゃあ!」
「あふっ……」
その後、レオとクロネの突進が股間にダイレクトヒットして悶えたことはどうでもいいか。
エンシェントドラゴンとは、長年生きた竜種が力を得て強くなったものです。ゼストはその1段階上。
あとは後日談をはさみます。見え見えに立てたフラグの回収を。
捕捉。フレイヤのステータスが見えたのは、神クオリティです。以上!
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