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第四十七話

 自室のベッドで目が覚めて、シュナイツに抱き着かれた。ストエルの瞳には涙が浮かんでいた。

 体を動かそうとすると激痛が走って、体中の骨と筋肉に傷を負ったらしいと伝えられた。

下手をすれば一生ベッドの中という可能性もあったらしいが、幸い、帝都から派遣された救援団の中に、希少な治癒の魔術を使えるものが数名いたのだという。その人が全員がかりで治療してくれたおかげで、後遺症の心配はないらしい。

 町はその後どうなったかと尋ねると、残っていた魔物たちは殲滅され、今は復旧作業中らしい。

 その後、1か月近くでリハビリを終え、久しぶりに冒険者組合へ行く許可が下りた。

 と言っても、クエストは受けることまでは許されなかった。

 …こういうと私がクエストを受けたかったみたいになってしまうが、実際のところは私も、戦闘はもう少しの間だけ遠慮したかった。

「本当は、冒険者組合にもいってほしくない。理由は…口に出す気にもなれないが……。本当にいくのか?」

 私は頷く。

「そうか…行ってらっしゃい」

「行ってきます」


 冒険者ギルドの扉をくぐった瞬間、中の喧騒が一気に静まった。向けられるのは、奇異と畏怖と敬遠の視線。

 シュナイツが言っていたのはこういうことか、と納得した。

「イヴさんっ!」

 冒険者たちをかき分けて、涙を浮かべたシィが駆け寄ってきた。

「会いたかったです」

「うん、ごめんね」

 たっぷりと、抱きしめてあげる。

「久しぶりだな」

 ベルが、周りの冒険者たちを睨みつけながら歩いてくる。

「ベル、無事だったんだね」

「まあな」

「イヴさん、私の名前も呼んでください!イヴ成分が全然足りないんですから!」

「うん、シィ」

「ああ~」

「あ、ああ――!!」

 受付の方から、声が聞こえた。

 案の定、エイラさんで、受付のカウンターをまたいで駆け寄ってくる。

「イヴちゃん……!無事だと思ってた。ちょっとそこの女狐。イヴちゃんを抱きしめてあげたいからサさっさと離れてくれる?」

「はあ?なんであなたの命令を聞かなきゃならないんですか?というかあなたなんかに抱き着かれたら、イヴさんも迷惑ですよ?いやだなー、おばさんは加齢臭を隠すために香水くさくって」

「女狐が…」

「おばさんが…」

「一旦、外に行こうか」

 私はとうとう、注目の中でこんなにくだらない話を聞いているのが恥ずかしくなって、そう提案した。


「で、なんでおばさんまでついてきてるんですか?仕事はさぼりですか?くびになればいいのに」

「ちゃんと許可は取りました~。というかそろそろ本当にイヴちゃんから離れなさい」

「二人もその辺にして。シィもそろそろ暑苦しいから」

「ハッ」

「エイラさん」

 ざまぁみろという風に鼻で笑ったエイラさんを、じろりとにらむ。今度はシィがざまぁという顔をした。もう無限ループの予感がするので、反応するのはやめよう。

「とにかく、今日はみんなに会いに来ただけだから、もう帰るね」

「え~」

 シィが不満げに口をすぼめる。

「また来週合いに来るから」

「約束ですよ?」

「うん、約束」

 シィがにへらっと笑った。

「イヴちゃん、私とも約束しよう」

「はい、約束です」

 エイラさんも、だらしない笑顔になる。

「イヴ」

「何?」

 ベルも約束してほしいのだろうか?

「せめて収拾つけて行け」

 ベルが、表情筋を緩ませきっている二人を親指で示した。

「無理そう」

 二人ともすでにトリップしている。愛は盲目にする力はあっても正気にさせる力はないんだね。

「そうか、俺にも無理だ」

「じゃあまたね」

「おい」

 恨みがましい視線を背中に感じながら、私は帰路についた。

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