7 見えるものの話(終わり)
数ヵ月後、新聞の端に小さく載っただけの記事。
それを見て、ようやく私はその人の思いを知る。
「……世の中っていうのは、こんなことばっかりだ」
この間聞いた言葉を、今度は自分で口にする。細々とした響きはあの人の声で聞いたそれとまったく異なり、説得力など欠片もなかった。
「だけど、そんなの……」
私は。
少し躊躇ってから、携帯電話を取り出し。更に長い時間を迷ってから、ようやくメールを送信した。
しかしそれに対する返信は早く、そして文面は非常に短く――
文字と文字の隙間から、いつもの嘲笑が見えたような気がした。
いずれにせよ、我慢なんかするもんじゃねェよな。
まったくもって、馬鹿馬鹿しい。
*
会社員自殺、労災認定へ
▼株式会社クマル・コーポレーション(本社・東京都中央区銀座)で営業の仕事をしていた男性(当時25)の自殺について、某労働基準監督署は、過重労働が原因だったとして今月20日付で労災認定していたことが分かった。▼男性は某年に入社。同年6月から同社の営業業務に携わったが、月100時間を超える時間外労働が続いた。翌年9月中旬には「ノルマが達成できなかった」という心理的負荷から気分障害を発症、10月5日に自殺した。
おしまい。
次章はまたそのうち載せます。
ありがとうございました。