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俺にだけ物理が厳密適用される楽しい異世界ライフ――今回の死因は「断熱圧縮」です――  作者: かっぷ


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5:女神でなければ即死でした

「……はっ!? ちょっとエントロピア様よぉ! 聞きたいコトがあるんですけどぉ!!」

「奇遇ですね、私も聞きたいコトがあります」

 いつもの女神部屋で復活した真田は、自分の死因について女神に詰め寄ろうとして、驚きと共に後退る。

「ど、どうしたの。その頭……?」

 見ればエントロピアの頭に、見覚えのある山刀がザックリ刺さって血が噴き出していた。

「突然、虚空から現われて頭に刺さりました。女神でなければ即死でしたね」

「そ、それはご愁傷様……」

 思い当たる所が有りまくる真田に、エントロピアが詰め寄る。

「あと、小石やら小枝やらがバラバラパラパラと部屋に投げ込まれるのです」

 そういえば殺風景だった純白の部屋に、山中で拾ったような物が沢山散らばっていた。

 どうやらアイテムボックスの中は、そのまま女神空間に繋がっているらしい。

「あ、あー……その、ゴメン。あとで捨てとく」

「……別にあなたを責めるつもりはありません。すっかり忘れていましたが、私が設定したアイテムボックスの正規仕様のようですし……小物は袋に入れる、剣は鞘に納めるなど節度を持って利用して頂ければ、それで十分です」

 エントロピアは無表情のまま頭に刺さる山刀を抜き、ザンッ! と床に差す。

「な、なんだか、すごく怖いんですけど……」

「気のせいです。それよりも、何か聞きたいことがあったのでは?」

 話を振られた真田がハッとした表情で口を開く。

「あ、そうだった。俺また死んじゃったんだけど何あれ!? 魔法を直接に受けたわけじゃないのに耳から血ぃ出て死んだんだけど!」

「あー……それは負圧ですね。風魔法の使用時、周囲の大気を集めて撃ち出す関係で後方の気圧が著しく下がり、それがダメージとなったのです」

「分かり易く例えて」

「……地下鉄で耳がツーンってなるの、分かります? あれの100倍凄いヤツです」

 なるほど、今度から地下鉄に乗る時は気をつけよう!

「よし、分かった! んじゃ、急いでさっきの場所に復活させてくれ!」

「あら? 今回は何時もにも増してヤル気ですね……」

「向こうで女の子が一人して荒くれ者に囲まれてんの! 俺じゃ役に立たないけど、ほっとけないでしょ!」

 早く早くと急かす真田に、エントロピアは僅かに微笑む。

「――そうですか。では、頑張って来てください」

 女神が手をかざした瞬間、周囲の景色は純白の部屋から緑の山中へと切り替わっていた。

「あ、戻って来た」

 真田の復活と同時に水着グラビア風魔法使いの少女が、声を掛けてくる。

「キミってば転生者なんだね、死んでも復活するとか凄いね! 死に放題だ!」

「死に放題ってなんだ。ところでさっきの連中は?」

 周囲を確認するが山賊たちの姿は見えず、エア・ブリッツの痕跡らしき地面の抉れが残るのみとなっていた。

「逃げてったよ。でも、多分……」

 少女が視線を向ける先。道の向こうから何かが大挙してやって来るのが見えた。

「仲間を呼んで来るんじゃないかなぁ?」

「うわっ、滅茶苦茶いっぱい来やがった! やけにデカいのも居るぞ!」

 ゾロゾロと群れて押し寄せるゴロツキの集団。その内の何人かは、頭三つくらい他よりも大きくタフで強そうに思える。

「転生者をやっつけると異世界のアイテムが手に入ったりするから向こうも必死だよね」

「俺ってばレアキャラ扱いか。複雑な心境だな」

 腕を組んで難しそうな顔をする真田へ、少女が訪ねる。

「キミ、転生者だったらチートスキルが使えるんでしょ? あのくらいパッとやっつけちゃう?」

 無邪気に尋ねる少女。真田とて、そうしたいのは山々であるのだが、時を止めたら死んでしまうし、アイテムボックスは戦いに不向き。他のスキルは未検証で危険すぎて使えない。

「いや、それが……まだ馴れてなくて上手く使えねぇのよ」

「そうなんだ? じゃ、私がやっちゃうね!」

 明るい調子で少女は言って、山賊の一団を通せんぼする形で立った。そして高々と杖を構えて――。

「うぉっ!? ちょ、ちょっと待った! さっきみたいな風魔法!? 俺ちょっと離れとく――」

「え、どうして? 魔法は味方には当らないようになってるから平気だよ! それに今回は風じゃない……!」

 少女の掲げる杖の先端に「何か」が集まって行く。それはおそらく魔力の根源たる「マナ」と呼ばれる異世界のチカラ。不可能を可能にする不可視のエネルギー。

「見せてあげる、転生者のキミにだって負けない、私の魔法を!」

 そう言って彼女は、魔力を解放した。

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