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顔バレしたVTuberはお別れした双子の妹で……  作者: ほづみエイサク
第4章 推しに言われて■■■することになりました
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第37話 母親の勘はオカルトより怖い

 パーティが終わって、部屋は暗くなっている。

 大きなイビキだけが響いていて、祭りの後の静けさが


 そんな中、真夜中だというのに、ハジメは目を覚ました。


 まず目に入ったのは天井だ。

 照明からすぐにリビングにいるのだと気づく。



(あー。そっか。リビングのソファで寝ちゃったのか)



 体を起こそうとして、すぐに違和感に気付く。



(なんか体が重い)



 首だけを起こして状況を確認する。


 すると、リツが体の上でイビキをかいていた。


 おそらくはイタズラでハジメの上に寝転んで、そのまま眠ってしまったのだろう。

 


(何やってるんだか)



 ハジメは呆れながらも、リツの体に優しく触れる。



「少し動かすぞー」

「んぁ」



 美少女が漏らした変な声に笑いをこらえながらも、細い体をどかしていく。


 トイレで用を足して、水を飲んだ。


 その後――



 プルルルルルルルルルル、と。

 スマホが鳴った。


 画面に映し出されていたのは母親の名前だった



(今深夜の2時なんだけど……。まさか何かあったのか?)



 緊張しながらも、電話に出る。



『あ、ハジメ?』

「どうしたの、こんな時間に」

『ねえ。あんたのところにも行かなかった?』



 母親の声は、少し泣いているように聞こえた。


 さっき水を飲んだはずなのに、もう乾いてしまった唇を必死に動かしながら、言葉を返す。



「なんの話?」

『レイよ』

「レイ?」



 その言葉を聞いた瞬間、背筋が凍った。



(レイが電脳幽霊になってることも、メタマちゃんのことも、お母ちゃんは知らないはずなのに)



 ハジメが衝撃で何も言えないでいると、母親が話を続ける。 



『さっき、電話がかかってきたの』

「……電話」



 意味もなく反芻(はんすう)した。

 少しでも話を理解しようとしているのに、何も考えられない。



『突然電話が鳴ったかと思ったら、あの子の名前が表示されてたの。思わず出るとレイの声が聞こえて。お父さんも同じだって……』

「レイが……」

『生んでくれてありがとう、って言ってくれたわ。他にもいっぱい。泣きながら言ってくれたわ』


(まるで別れの挨拶みたいだ)



 いや『まるで』ではないのだろう。


 ハジメの頭の中で、すべての話がつながっていく。


 レイは電脳幽霊で、成仏させてほしいと言っていた。

 そして、成仏するのには『ハジメが幸せになる』ことが必要だった。


 それなのに、ハジメはパーティで言ってしまった。



 今が一番幸せ(・・)だ、と。



 本心から、言ってしまった。



(だから、もうレイとはお別れなのか……)



 気付いてしまった瞬間、胸が苦しくなった。

 今すぐ叫びたくなりながらも、必死に衝動を抑え込む。



(叫ぶのは、泣くのは後回しだ)



 ハジメは電話口の母親に、小さな声で語り掛ける。



「ねえ。お母ちゃん」

『なに?』

「実はレイが幽霊になっていて、しばらくオレと一緒にいた、って言ったら信じてくれる?」

『そう。そういうことなのね』



 母親は納得したように、吐息を漏らした。

 予想外の反応に、ハジメは目を見開く。



「信じるの?」

『信じた方が納得できるのよ。あなたが突然帰ってきたのも不自然だったしね。母親としての勘ってやつよ』

「相変わらずだ」



 少し呆れながらも、ハジメはつい訊いてしまう。



「……ねえ、レイはオレについて何か言ってた?」

『それはあの子に聞きなさい。絶対最後に、あなたのところに行くから』

「うん、そうする」



 ハジメは強く頷いた。

 すると、母親が不思議そうな声で呼びかけてくる。



『ねえ、ハジメ』

「なに?」

『彼女でもできた?』

「なんでわかったの!?」



 驚きのあまり、スマホを落としそうになる。



『母親の勘よ。仕事も変えたんじゃないの?』

「……幽霊よりよっぽど怖い。母親の勘」

『この世界に母親より強い存在はいないから、当然でしょ』



 ハジメが「たはは」と乾いた笑いを漏らすと、母親の声のトーンが少し落ちた。



『一度家に帰って来なさい。久しぶりに、親子の会話をしたくなっちゃった』

「うん。落ち着いたら必ず帰る」

『あと、レイに訊き忘れたことが一つあったから、ハジメの方から訊いといてくれない?』

「なに? 訊き忘れたこと、って」



 聞き返すと、母親は答える。



『■■■■■■■■■?』



 ハジメの顔は、微妙な顔に変わった。



「わかった。必ず伝えるよ」

『ねえ、ハジメ、アンタ――』



 一瞬の間があった。



『アンタ、強くなったわね。少し前までだったら、泣いてたわよ』

「いつの話してるんだよ」

『そうねえ。幼稚園ぐらいの頃かしら』

「ボケた?」

『バカね。親にとって子供は何歳になっても子供なのよ』

「……まったく」



 ハジメは困った顔を浮べながらも、電話を切った。


 すると、背後から声が掛かってくる。



「先輩?」



 リツだ。

 ハジメの声で起きてしまったのだろう。


 そして、通話の一部を聞いていたのかもしれない。


 いや、確実に聞いていた(・・・・・・・・)と断言できてしまう。


 なぜなら、リツの顔が不安で染まっていたからだ。


 誤魔化すことはできないだろう。



「村木……」



 ハジメは一瞬、口をつぐんだ。


 リツはレイと仲が良かった。

 唯一の家族というぐらいには。


 そんな彼女に、レイとのお別れを伝えないといけない。


 ハッキリと。


 それは途轍(とてつ)もなく重要で、重いことだ。



「先輩? どうしたんですか?」

「落ち着いて聞いてくれ――」


(ああ、オレはなんで、うまい言葉を選べないんだろう)



 気の利かない自分を恨みながら、すべてを告げていくのだった。


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