41.魔法を作りました。
また魔法について色々言ってますが、さらっと流し読みしていだだけると有り難いです。
訪れた病室には兄妹が二つの並んだベッドにそれぞれ座っていた。
簡単な検査は終わったようで、本格的なものは明日から始まるらしい。
今のところ彼らの身体に問題はないようだ。
「こんにちは」
「お姉ちゃん、来てくれたの?」
日常に戻ったら怖がられるかなとも思ったが、思いのほか懐いてくれたようで歓待される。
邪魔にならないように顔だけ見て帰るつもりだったが、引き止められたのでもう少しいることにした。
「お姉ちゃん、私達のこと守ってくれてありがとう。とっても格好良かったの!」
「本当にありがとう。君がいなかったら僕達は多分無事では済まなかったと思う」
「お気になさらず。当然のことです」
彼らはまだ子供で、守るのは当然のことだ。
もっと早く対応できていたら、魔石を抜かれていたあの子だって……。
「どうして敬語なの?前は普通に話してたのに」
「ああ、あれはあなた方が貴族だと知らなかったからです。許可も得ず大変失礼いたしました」
大して親しくない貴族相手に、いきなりタメ口は無かったなと思って改めた。
子供だから許されるといっても、私の中身は成人しているので落ち着かないのだ。
「え、じゃあ私たちも普通にしゃべっちゃいけないの?」
「いえ、そのままで大丈夫ですよ」
私が落ち着かないだけで、彼女たちにそれを押し付けるつもりはない。
「ならお姉ちゃんも普通にしゃべって?なんだかよそよそしくて寂しいの」
「僕もその方がいいな。多分年だって同じくらいだと思うし。許可があればいいんでしょ?」
「……ええ。わかったわ。私のことはアリアと呼んでね」
「私はヘレナだよ、アリアお姉ちゃん」
「僕はカイル。よろしくね。あ、様付けもお互いなしにしよう。呼び捨てでいいから。僕も普通にアリアって呼ぶね」
早くも砕けた口調で話すことになった。しかも呼び捨て。
おそらく同い年くらいの子供同士だとこれが自然なんだろう。
「ふあぁ。あ、ごめんなさい」
ヘレナが大きなあくびをした。まだ疲れているのだろう。少し眠そうだ。
「こちらこそ長居してしまってごめんなさい。そろそろ帰るから、ゆっくり休んでね」
「いいの!さっきとても怖い夢を見ちゃってて……。さらわれた時の……。だからあんまり眠りたくない……」
思い出したのか少し体が震えている。顔色も良くない。
かわいそうに……。ゆっくり休んで欲しいのに……。
……そうだ。
「夢の中の私は助けに行かなかったのかしら?私を呼んでみた?」
「え?ううん、呼んでない……」
「次に怖い夢を見たら私の名前を呼んでみて。助けに行けるかもしれないわ」
気休め程度かもしれないが、助けた者ということで私の存在が夢の中で役に立つかもしれない。
とりあえず今彼女には睡眠が必要だ。頑張ってくれ、彼女の夢の中の私。
「うん、うん、そうだね!アリアお姉ちゃんが来てくれたら、何も怖くないよね」
「では、おやすみなさい。ヘレナ」
「うん……おやすみなさい……ありがと……」
しばらくしてヘレナが眠ったのを見届けたので、私は帰ることにした。
「それじゃあ私はこれで」
「妹に良くしてくれてありがとう。君は凄いな。とても強くて、とても優しい」
「……そうかしら?どうもありがとう」
お義兄様といいカイルといい、貴族の子供の相手を褒める能力の方が凄い。
お国柄なのだろうか。
「また来てね。待ってるから。妹も、もちろん僕も」
「ええ。また来るわ。じゃあね」
家に帰って術式を調整していると、様子を見に帰ってきたお義父様に苦言を呈された。
どうやら出掛けるのは控えて欲しかったらしい。
危険な所に行って疲れただろうからゆっくり休んで欲しいんだ、と言われたけれど、仕事もしてないし十分ゆっくり休んでるつもりだった。
心配をかけてはいけないし、明日は屋敷にこもっていよう。
「お義父様、少しお時間を頂いてもよろしいでしょうか」
「構わないよ。どうしたの?」
お義父様の書斎に移動し、人払いをしてもらった。
「被害者の方々の魔石は回収出来ましたか?」
「闇ルートで売買する為にまとめてあったから、結構な量の魔石が回収出来たよ。もう少し遅かったら売られていたかもしれないから、運が良かった。ただ、どれが誰の魔石なのかはちょっと判断できないね……。カーター氏の息子のアントン君の魔石がどれかは、正直わからないと思う」
お義父様が申し訳なさそうに話した。
街で誘拐されそうになっていた、シンディさんの兄であるアントンさんの魔石だけでも取り返せないだろうかと、父親であるカーター氏に言われていたのを、お義父様にも報告している。
「実は魔石を調べて親子関係がわかる魔法を作りました」
「……は?」
「正確には魔石を調べて親子関係がわかる魔法がもうすぐ作れそうです。今細かい部分の調整中なんですが、大体出来てます」
親子関係を調べる術式に関しては前世で出来上がっていたし、魔石を細かく解析することも出来ていた。
後は探索魔法を応用して制限をかけるだけだ。
「……え?」
「今のところ私くらいしか使えませんし、広める予定もありません」
読み取る術式を複雑にして、私以外になかなか読めないようにすることで制限をかける。
“貴族界に大きな混乱を招く”という、エイスグレイス公爵である前世のお父様の判断は正しいと思う。
……うちだって無関係じゃない。
明らかにする必要がないことは世の中にたくさんある。
「ちょっと、待って。作ったの?魔法を?アリアが?」
「あ、そこの方が気になりましたか?」
作ったというか、すでに作ってたというか。
家に置いてある本の中に親子関係がわかる術式は載っていなかったから、そう言うしかなかったんだけれども。
「そこ以外どこを気にする……ああ。良く考えたらそうか。うん、ありがとう。そうしてくれると助かるよ」
「今調整中なのですが、探索魔法と組み合わせることで、調べる対象の片側がむきだしの魔石の場合にしか使えない様にしますし、よほど魔法術式に詳しくない限り結果が読み取れない様にします。そもそも広める気が無い魔法ですが、念の為です」
探索魔法を使うにはセットで専門の図式化してくれる魔道具を使うのが主流だが、私は術式を書き込む魔道具で返ってくる術式さえ読み取れれば専門の物は使わなくても問題ない。
今回のこの魔法に関しては専門の魔道具を作らない、というか技術屋では無いし作れないので、おそらく私や前世の公爵家の魔法師ウィリアムくらいこの魔法に詳しい人間にしか読めない。
「……え、凄すぎない?」
「趣味の範囲です」
「いや、それはないでしょ……。ちょっと魔法の才能に溢れすぎてるよね……」
……変に思われたか?でもこれは譲れないことだしな。
いざとなったら前世の記憶の説明をしようか。
でも信じてもらえるかどうかわからないからな……。
「お義父様にお願いしたいのは、被害者の方の両親のどちらかがスロットを使えるかどうか調べて欲しいんです。体内にある魔石の特徴を調べるには本人の協力が必要なので」
探索魔法は体の外から観測できる魔石の魔力吸収反応を読み取っているが、流石にそんなもので魔石の特徴まで詳しく調べられない。
生物の体内に他者の魔力を通すことは出来ないので、魔石を調べようとするとどうしても本人の協力が必要になる。
なので魔法の資質が低い場合は、魔力を魔道具で外から補って発動させなければならない。
とても変換効率が悪いから時間とコストがかかるし、スロットを使う訓練も受けてもらわないといけないので、少し手間がかかる。
スロットは旧式なので扱いはそう難しくは無いが。
「後は出来ればこの魔法について誤魔化したいですが……協力してもらう訳ですから難しいでしょうね。口止めだけでもなるべく徹底して欲しいです」
「うーん、そうだね。言わないと難しいかもね。最悪外にバレても知らぬ存ぜぬを通そう」
「そうですね。ではそれでお願いします」
話がついてすぐお義父様は慌ただしく領府へ向かった。
仕事を増やしてしまったような気がするので、すぐに手伝いたいんだけどな……まぁ仕方が無いか。
次の日は一日中ひたすらトライアンドエラーを繰り返し術式の調整を行った。
しばらく勉学の授業はお休みにしてもらったので、その次の日からは日中は仕事、他は術式の研究に時間を費やすことにした。
親子関係がわかる魔法があるけど、広めたくないから、念の為普通の人には使いづらくしとくねって事です。探索魔法と組み合わせてるので、アリアが使う分には便利になってます。
アリアは前世の記憶がある事を秘密にしたい訳じゃなくて、証拠が示せないから言ってないだけです。
で、言ってないから普通の子供らしくしようとしてます。
だから別に前世の記憶があるとバレること事態は、信じてもらえるなら問題は無いと思っています。




