4話:ようこそ、バーシュ村へ♪
前のお話を少し変更と不要文削除しています。
ー内容ー
大銀貨→小銀貨
すみません、今度から気を付けるので、今回は次のお話をお楽しみください。
4話:ようこそ、バーシュ村へ♪
へっくしゅ
夜の森に智春のくしゃみが盛大に響きわたる。
ホングルの返り血を浴びた智春は近くにちょうど良く川があるわけもなく、セリアの作り出した氷水のような温度の水で服を洗い、着替えがあるわけもなくその服を再び着ていた。
春のような気候といっても、やはり夜の森は寒く見張りをしている智春は焚火にいっそう近づき暖をっとった。
「うぅぅん、ここは?」
悩ましげな声と共に茶髪に紅い目の少女が目を覚ます。
「ん、起きたか、っても今は深夜だからまだ寝てていいぜ。朝になった起こすから。」
「へ?あなたは?」
寝起きで意識がはっきりしないのか、少女はきょとんと首を傾げる。
「ああ、俺は青山智春、でそっちで寝てるのがセリアだ。俺たちは諸事情で今この森で迷子をやってる。」
「ふふふ、迷子をやってるって、変な言い方ですね。私はレイラっていって、この近くの『バーシュ村』ってところで薬師をやってます。さっきは助けてくれてありがとうございました。」
「おお、まあ気にするな。そうだ、俺たちをそのバーシュ村ってところに連れて行ってくれないか?」
「もちろんです、お礼もしたかったし。それよりトモハルさんは強いんですね。ホングルを一人で倒しちゃうなんて。」
レイラは熱のこもった視線を智春に向ける。
しかし、智春はその視線にこもった感情に気付かず話を続けた。
「ああ、意外とできるもんだった。まあ、それはいい、まだ深夜だから寝なおしていいぞ。」
「ええ、そうしたいのですが、実は・・・」
くぅぅぅぅ
顔を赤くしてうつむくレイラのお腹がかわいらしく鳴った。
「ああそうか、気絶してたからなんも食ってなかったもんな。」
「す、すみません。昼も食べてなかったもので。」
「ああ、気にするな。ちょっと待ってろ。」
そう言うと智春はリュックの中から木を彫って作られた器と何かが詰まった氷の塊を取り出し、氷の塊を入れた器に水を注いで焚火の中から表面が赤くなるほど熱された石を取り出し器に入れた。
「鉄鍋が無いからな、と完成だ。ほら、熱いから気をつけろよ。」
そういって、器から石を木で作ったスプーンで取り出し、レイラに渡した。
器の中身はセリアのとってきた野草とホングルの肉の入った簡単なスープだった。
「あ、ありがとうございます。」
そう言うと、レイラはスープをふうふう冷ましながら飲み始めた。
あたりは再び静寂に包まれ、焚火の中で木の枝がはじける音や木でできたスプーンと器がぶつかる音があたりに響いた。
「ごちそうさまでした。ふぁぁ」
スープを飲み終わるとレイラは眠そうに欠伸を漏らした。
「寝てていいぜ。」
「すみません。では、お言葉に甘えて。」
そう言うとレイラは智春の肩に頭を乗せて寝息をたてはじめた。
「って、なんで俺の肩に。」
驚く智春だがレイラはもう眠りの中だった。
「はぁ・・・・」
智春のため息は夜の森にむなしく響くのだった。
「痛てっ」
頬に痛みを感じ智春は目を開く。
どうやら、見張りの合間に朝まで眠ってしまったようである。
目を開いた先にはセリアの不機嫌そうな顔があった。
「見張りの途中に寝込むなんていい度胸ね、し、しかも、いつの間にそんなに仲良くなったのかしら。」
セリアは智春の膝のあたり、正確には太ももの上に乗ったものを見ながら眉を吊り上げる。
「す、すまん。つい眠くなった。レイラとは昨日の夜にレイラが目を覚ました時に少し話しただけだ。」
「ふーん、それで膝枕。膝枕は恋人など親しい仲の者同士でやるものだってついこの間教えてくれたのはどこの誰だったのかしら?それとも、短い夜の間に恋人同士でもなったのかしら。」
セリアは不機嫌そうにまくしたてる。
「そういうわけでは無いんだけど、成り行きで、」
「ふーん、成り行きでねえ。マスターは成り行きで女の子に膝枕するほど見境が無いようですね。」
「あれ、なんかよそよそしくない?」
「そうですか?気のせいですよ。それよりマスター早くその女狐もとい、女の子を起こしてください。さっさと移動しますよ。」
「どうして、急に敬語なんだよ。それに女狐って・・・はぁ、俺が悪かった。機嫌を直してくれ。」
「知らないわ、ふん。」
そう言うとセリアはリュックから器を出したり、朝食の準備を始めた。
智春はため息をかみ殺し、レイラの肩をゆすった。
「おい、レイラ起きろ、朝だぞ。」
「ぅん、ふぁぁ。おはようございます。トモハルさん。」
「おう、おはよう。よく眠れたか?」
「はい、おかげさまで。」
起き上がるとレイラはあたりを見回しセリアと目があった。
「おはようございます、レイラさん。私は『氷姫精霊』のセリア・ウォルトスールといいます。私はトモハルの精霊です。どうぞよろしく。」
「え、えっと、レイラです。よろしくおねがします。」
セリアの剣幕におされ、レイラは怯えながら挨拶をする。
智春はため息をつき、二人の仲の取り持ちにはいるのだった。
朝食が終わると智春たちは焚火を消し、素早く移動の準備をして移動を始めた。
レイラが先導し、それに智春とセリアがついて歩くという形だ。
ちなみに、昨日倒したホングルはセリアに氷塊に閉じ込められ、智春に引きずられている。
「なあ、セリア。」
「なにかしら。」
朝食を経て、レイラと何か通ずるものがあったのか、セリアの態度は少し元に戻っていた。
「さっき言ってた、『ひょうき精霊』ってなんのことだ?」
「ああ、トモハルには氷の精霊とだけ伝えていたのだったわね。私のような上位の精霊で、人型をとれるものを『氷姫精霊』と呼ぶの。男性型だったら『氷王精霊』ね。そして、中位の精霊で獣の形をとるものを『氷魔精霊』と呼び、下位の光る玉みたいな精霊は『氷精霊』と呼ばれるわ。まあ、『氷』っていうのはその精霊の属性を表しているわ。」
「ふーん、ってことはセリアってすごい精霊なのか?」
「ふふん、その通りよ。」
セリアはその形の良い胸を張って威張る。
「お二人は仲がいいんですね。」
智春がセリアと話をしていると、前からレイラが話しかけてきた。
「ええ、そうよ。私とトモハルはとっても仲良しよ。で、なによ。」
返す、セリアの言葉にはなんとなく棘が混じっている。
「いえ、村まで後少しですのでそれを伝えようと。」
セリアに威圧されレイラの声が尻すぼみする。
「そうか、はぁ、セリアなんでそんなにレイラに強く当たるんだ。」
「それは・・・その女があなたに色目を使ったから・・・・」
セリアの小さなつぶやきは智春の耳には届かなかった。
「はぁ、もういいや。それより、なんか騒がしくないか?」
「はい、村の方からです。」
誰かの怒鳴りあうような声にレイラは心配そうな目を向ける。
「だから、レイラがいなかったら今の村では全滅するだけだ。」
「しかし、お主ら自警隊が森へ行けばそれこそ村が全滅じゃ。今はどこからホングルが出てくるかもわからんのに。」
「だからって、レイラを見殺しにできるもんか。」
「なら、せめて昼過ぎまで待たんか。今行ってもお主らともども全滅するのは目に見えておろう。」
「一分一秒を争う事態になってるかもしれないんだぞ。それは無理だ。」
やっと姿が見えてきた。
どうやら、村の自警隊の男がレイラの捜索に向かおうとして老人と言い争っていた。
「ルーク、バルカス村長、私は無事です。ごめんなさい、心配をおかけしました。」
争いを見たレイラは急いで二人のもとに駆け寄った。
「レイラ、無事だったのか。」
ルークと呼ばれた言い争っていた若い自警隊の男はレイラを見ると安心した表情を浮かべ、レイラを抱きしめた。
「痛いわルーク、でも、ごめんなさい。」
レイラは痛そうにでも嬉しそうに微笑む。
「レイラ、無事じゃったか。一人で森の夜を明かしたのか?」
「心配をおかけしました、村長。いいえ、あの人たちに助けてもらったんです。」
そう言うと、レイラは智春とセリアの方を指した。
「おお、主たちが。うちの村の者が世話になったな。それよりなんでそんなに離れて見てるんじゃ?」
「ああ、馬に蹴られたくないからな。」
「はぁ、私たちも迷子だったもので、レイラ...さんにはこちらも世話になりましたから。」
「そうか、なら疲れてもおろう。何もない村じゃがゆっくりしていってくれ。そら、皆の者帰るぞ。」
そう言うと、周りで言い争いを見ていた他の自警隊の男たちも村に向かって歩き始めた。
「レイラ、ホングルに会ったりしなかったのか?」
「そうなんです、ホングルにであったところをトモハルさんたちに助けていただいて。」
助けた時の話をしているのかレイラは時折チラチラと智春を見ながら、自警隊の青年たちと話している。
「ほぅ、お主、ホングルを一人で倒したのか。」
話を聞いていたのか村長が驚きの声を上げる。
「ああ、なんかできちまった。」
「本当かそんな細腕で、レイラは怖くて目でも瞑ってたんじゃないか。」
ルークは疑わしそうな目線を智春に向ける。
「違います、私、目の前にホングルの首が飛んでくるの見たんですよ。」
「ふーん、証拠でもあるのか。」
レイラはむきになって反論するが、ルークに信じる気配がない。
「証拠つったら、こんなもんがあるぜ。」
智春は、ひっぱていた氷塊から草で編んだ布をどかした。
氷塊にはもちろん昨日智春が倒したホングルが入っている。
「えらい、大荷物だと思ったらそんな物を運んでいたのか。」
年の功なのか村長は感嘆の声を漏らすだけだが、自警隊の中には驚いて腰を抜かす者もいた。
「なんだよ、片手落ちか、これだったら俺でも一人で行けるぜ。」
「いや無理だろ。4メル急だぜ、ルークでも逃げるので精一杯だろ。」
ルークの強がりに、自警隊の中からすぐに突っ込みが帰ってくる。
「片手落ち?いや、食っちまったけど、手ならあったぞ。」
そう言って、智春はリュックの中からホングルの爪を取り出し、無意識にルークに追い打ちをかけた。
「ほれ、雑談は終わりじゃ。着いたぞ。我が村じゃ。」
「ようこそ、バーシュ村へ。」
村長の言葉と共にレイラの嬉しそうな声が響くのだった。
このお話を読んでいただきありがとうございます。
作者の私情ではありますが、来週の投稿が少し難しそうなので、
今週、一気にスットクッを投下します。
では、また。