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第五章:聖都動乱編     37話:帝都へ!!

遅くなりました


では、どうぞ


 37話:帝都へ!!



木々の生い茂る森の中、大門をあけ放つと奥に一本の大木が横たわっていた。

その倒木の根元からは新しい木が生え始めており、すでに智春の身長を越していた。


「さすがは最後の試練の魔物だけあるな、すごい成長速度だ・・・」


智春はその木に向かって足を進めながら感慨深くつぶやく。

現在、智春は帝都出発を明日に控えて世話になった人たちにあいさつ回りをしていた(といってもそんなに多くはいないが・・・)。

そして、命の恩人ともいえる妖精にお礼を言うためにここ『フルーツパラダイス』最奥部のボス部屋まで足を運んだのだ。

智春が『新たなデフトチェリー』に近づいたとき、足元から一輪の花が生えて来てその花を咲かせた。

花の中には若草色のワンピースを来た少女、《樹木妖精ドリアード》の姫『ティターニア』が座っていた。


「ほう、トモハルか。もう傷の方は良いのか?」

「ああ、おかげさまで。ティターニアがいなかったら俺はここに立っていなかったよ。本当にありがとな。その無理をさせてしまったみたいですまん。」

「なあに、少し休めばまたもとに戻る。気にするでない。」


智春はティターニアの姿を見て申し訳なさとふがいなさを感じた。

なんと、ティターニアの体は智春を助けるために力を使い過ぎて『ティッタちゃん』の時の半分より小さいぐらいの大きさになってしまっていた。

しかし、ティターニアはそれを特に気にした様子もなく、泰然として笑っていた。

智春は心の中でもう一度ティターニアにお礼を言いながら、帝都に行くことになったことを話した。


「ふむ、そうか、仲間が早く見つかるといいの・・・、して、いつぐらいに帰ってくるのじゃ?」

「いや、多分もう戻ってこない。来たとしても少し滞在していくくらいになると思う。」

「そうなのかえ。しかし、お主、学院の方はどうするのじゃ?」

「ああ、それは退学することにした。まあ、学長は卒業にしてくれるって言ってくれてるからそう言う形になると思う。」

「そうか、わっちもついていきたいのは山々なのじゃが、生憎分身体を作れるほど力は残っておらんのでな。まあ、あの宝珠は持っていくといい。きっと他の妖精と会った時にいろいろと便利じゃろうからな。」

「本当にありがとうな。ティターニアには貰ってばっかりだ。」

「ふむ、そう思うのなら、またこの街に帰って来た時にはわっちを必ず尋ねてくるのじゃな。」

「ああ、絶対にまた会いにくる。」

「うむ、そうか、そうか。ではなトモハル。わっちはしばし寝るとする。」

「ああ、じゃあな、ティターニア。」


ティターニアはかわいらしく小さな欠伸をすると、花を閉じていきそのまま地中に潜って行った。

智春は最後に心の中で礼を言うと踵を返した。


「あ!そうじゃった!トモハル!」

「ん?、なんだ?」


智春がその場を去ろうとすると、地面から小さな花が生えて来てその中からティターニアの声だけが聞こえてくる。


「実は、お主の治療をするときわっちの魔力が少し混じってしまったのじゃ。その影響で回復能力の上昇など植物に見られるような能力が出る可能性がある。それゆえ少し不思議なことが起こったり感じたりするかもしれん。しかし気にすることはない、普通に生活する分には何の支障もないぞ・・・・多分・・・」

「そうか・・・って、おい!」


ティターニアのそこはかとなく不安を煽る言葉に智春は突っ込みを入れるが、花は伝えるだけ伝えると再び地面に戻って行ってしまった。


「はあ、ったく、なんだよ・・・まあ、今は助かっているからいいんだけど・・・」


智春は疲れたようにため息をつくとその場を後にした。



『フルーツパラダイス』から帰って来た後、智春はさらにバナード先生やバスラ先生などこの街で世話になっていた人にあいさつ回りをして回った。

みんなレイラの事を心配して励ましてくれたり、智春が街を出ていくことを非常に惜しんでくれたりと智春はとても心が温かくなった。

そしてその夜、何よりうれしいことにセリアとメイアが復活した。

二人共は智春のことをすごく心配していて、智春がその晩長々と説教を受けるはめになったのは仕方がないことであろう。

別れ際、ビビアは智春が帝都に行ってもレイラの情報が見つかったら知らせると言ってくれた。

そんなこんなで智春はダラベストの街を旅立ち帝都に向かったのだった。










智春がダラベストの街から旅立って三か月が過ぎた。

その間、智春たちはギルドで依頼を受けて生活費とレイラが見つかった時にすぐに行動できるだけの資金を稼ぎながらレイラの情報をずっと探っていた。

その結果、智春は冒険者ランクがB2、セシリアはC3になっていた。

しかし、ここ一か月間レイラの情報はおろか虹龍教こうりゅうきょうに関する情報すら一つも入ってこなくなった。

このことに智春は嫌な予感を覚えていた。

これはレイラを探し出して気付いたことなのだが、レイラの瞳の色はただの『あか』ではなく独特の深みを持つ『あか』の瞳だった。

そのためレイラの目撃情報はとても少なく、その情報の信憑性は高かった。

残念ながら今まで情報をつかんで向かった先ではレイラに会うことはできなかったが、その場には必ずと言っていいほど虹龍教の刺客が存在していた。

そのため、レイラともかく虹龍教の行方まで分からなくなるというのは何か騒ぎの予感を感じさせたのだった。


しかし、今日はいいことがある。

なんと、カノンの買取の手続きが可能になったのだ。

あの時、エリーゼが皇帝に願い許可をもらっていたことではあったが、まだ強制労働期間が終了しておらず、さらにまだその施設に来たばかりであったこともあり、買取できるようにするための手続きが少しややこしくなったことと、最低でもあと二か月は働かないと手続きの許可が下ろせなかったこともありここまで遅くなってしまったのだ。


智春の方は、帝都着いてにすぐに皇帝からとある情報屋を紹介してもらっていた。

智春はその情報屋のおかげでレイラや虹龍教に関するを多く情報を集めることができていたりするが、

閑話休題



現在、智春たちはカノンの迎えに騎士団帝都本部に向かっていた。


ここ、ハンガリア帝国、帝都『ウィール』は人口約171万人、面積約41万㎢の大都市である。

街並みは中世ヨーロッパを思わせ、建物は背の低い建物が多いが、ところどころに4,5階建ての建物もあったりする。

道には人があふれており、道端ではそのあふれる客から利益を得ようといくつもの屋台がしのぎを削っている。

そして何よりも目を引くのが、街の中心にそびえたつ白亜の城、『セント=シュティファント城』である。

外壁は白一色で屋根は緑がかった青色、、壮大な正門、そして城の一番上で風にはためく『白百合』とそれを向かい合わせに挟む『獅子のような魔物』が描かれたハンガリア帝国の国旗、その姿はまるで物語に出てくるお城の様である。

実際にこの世界にある昔話で勇者を召喚するのはこの国で、このお城も物語に登場する。

閑話休題



「はあ、ここまで来るのも結構長かったな・・・」

「そうね。ダラベストを出てもう三か月、国内で行っていない場所はもう無いんじゃないかしら・・・」


大通りを歩きながら智春とセリアはしみじみと呟く。

隣でエリーゼとメイアも同意するように頷いた。

実際に智春たちはレイラの情報を聞きつけたり、指定依頼だったり、その他の拒否できなかった依頼だったりで国内のほとんどの場所を訪れていた。

ここ数か月振りに表情明るく話す智春に三人は少しホッとしながらもたわいの事を話しながら歩みを進める。

最近の智春は、表面上は明るく振る舞っていても、どこか思い詰めたような表情が時々顔を覗かせていた。

そんなささいな変化に気付いて支えていたセリアたちは、智春の一片の曇りのない笑顔に頬を緩めていた。

そんな和やかな雰囲気のまま、四人は騎士団衛士隊帝都本部に到着する。

騎士団の建物は二階建てで、正面に国旗がかけられ屋根には『白百合』と『剣』の交差した帝国騎士団の団旗が上がっていた。


「ああ、トモハルさん、お待ちしてました。」


智春ともはるたちが建物の中に入ると、顔見知りの騎士が受付をしていた。

智春たちは冒険者依頼の関係上帝国騎士団と幾度となく行動を共にしてきたため、衛士隊の隊員とは隊長を含めてほぼ全員と良好な関係を結んでいた。

その過程で、幾度となく騎士団に勧誘を受けていたのだが・・・・

閑話休題



智春たちが通された部屋は応接室だった。

机の上にはいくつかの書類が置かれていた。

今回の主役はエリーゼであるので、四人は智春とエリーゼを中心の座って待つ。

少しして、衛士隊長のメリウスが入って来た。


「おう、トモハル、嬢ちゃんたちも待たせて悪かったな。」

「いや、別に待ったというほどの時間じゃなかったぞ。メリウス団長。」

「ほう、今日は少し余裕のある表情だな。っと、それはいいか。」


メリウスは智春の表情を見て優しく笑う。

この男、メリウス=リヴァークは2メートルを超すほどの身長に、鍛え抜かれた筋肉、そしてスキンヘッドと日焼けした浅黒い肌と、一言で表すなら『筋肉ダルマ』の言葉がよく似合うような外見ながら、他人の感情の動きに敏く、気づかいのできるいい男なのだ。

メリウスは皇帝の印の押された紙を取り出す。


「まず、皇帝陛下から伝言を使わされている。では読むぞ。」


『エリーゼ=テレキウス、そなたの『ダラベスト内乱』での働きの褒美として罪人『カノン=アーテラリス』の刑期を免除し、その身柄を『犯罪奴隷』として譲渡する。本来であれば余自ら下賜すべきであったが、褒美の内容によりこのような形になったことを詫びておこう。」


「以上だ。よし、じゃあ面倒な書類はさっさと片づけてしまおうか。」

「・・・ん・・、これにサインすればいいの?・・」

「ああ、この書類はちゃんと読めよ。」

「・・・ん・・・」


書類を流し読みするエリーゼにメリウスは一枚の書類を抜き出して渡し、手続きが早く終わるようにいろいろとサポートしてくれた。


「うっし、これで終わりだ。今からカノン嬢ちゃん連れてくるぞ。」

「・・・ん・・お願い・・」


エリーゼがすべての書類にサインを終え、銀貨の詰まった小袋を受け取ったメリウスは席を立つ。

それから一分もたたないうちにメリウスは戻って来た。

後ろには、綿製の簡素な服を着たカノンがついてきていた。


「ほれ、これがカノン嬢ちゃんの解放承認書だ。これをもって奴隷商のところに行けば、嬢ちゃんの首輪は取ってもらえるぞ。」

「ああ、すまん、助かる。」

「いいさ、これを含めて皇帝陛下からの報奨なんだ。」


メリウスはそう言って、騎士団の印が押してある手紙を渡してくれた。


「よし、これで終わりだな。俺は仕事に戻るぞ。」

「ああ、ありがとう。」

「あの・・・ありがとうございました。」

「おう」


部屋に入って来てからずっと黙っていたカノンのお礼にメリウスは短く返すと、かっこよく去って行った。


「あの、えっと・・・エリーゼ様、トモハル様、助けていただきありがとうございました。」


部屋が身内だけになるとカノンは深く頭を下げてきた。

しかし、その言葉にエリーゼが少し顔をしかめた。


「・・ん・・トモハルが救った娘だもの・・・助けるのは当然・・でも・・」


そこで一旦言葉を区切ったエリーゼは、カノンに近寄るとその両頬をつまんで引っ張った。


「・・・様はいらない・・・敬語も・・・」

「ふぇ、ふぇふが!(ですが!)」

「・・・それがだめなら・・姉と呼びなさい・・・」


エリーゼはそう言ってカノンを抱きしめた。


「・・トモハルが助けた・・・だから貴女はもう私たちの仲間よ・・・」

「うぅ・・・はい、エリーゼお姉ちゃん!」


エリーゼの胸の中でカノンは泣きじゃくった。

エリーゼはそれを慈愛に満ちた表情で頭を撫でる。

感動の雰囲気にセリアとメイアも目頭を押さえる。

帝都の一角、暖かな空気がその場を包むのだった。







それから数分後、智春たち五人はカノンを奴隷から解放するために奴隷商に向かおうとしていた。

衛士隊の建物から知り合いの騎士に礼をいいなが出ようとしていたところ、一人の騎士が血相を変えて馬から滑り落ちるように建物の中に飛び込んできた。


「緊急です!メリウス衛士隊長につないでください!」

「なんだ!?俺がどうした?」


騎士の言葉にちょうど近くを通りかかったメリウスが顔を出す。


「はい、皇帝陛下及び騎士団総帥からの緊急招集です。それと、その招集にB2ランクの冒険者トモハル=アオヤマ殿を連れてくるようにとのことです。」

「なに?トモハルをか?」

「はい!、」

「そうか・・だそうだ、トモハル今から付いてきてくれ。」


一度聞き返したメリウスはちょうどいいとばかりに智春に言う。


「ああ、俺一人でいいのか?」

「貴方がトモハル殿ですか、はい、私はトモハル殿を連れてくるようにと伺っています。」

「そうか、ならセリアたちは先に用を済ませて宿に戻っててくれ。」

「ええ、分かったわ。」


なぜ自分なのかなど疑問は多いもの、皇帝陛下の人柄を知る智春は二つ返事で了承した。

智春の言葉にセリアたちは頷き返す。

珍しく長文を話していたエリーゼはあれから一言も話さない、話さない・・・


「よし、時間が無い、馬で行くぞ!トモハルも乗れたよな?」

「ああ、」


メリウスは持っていた資料を隣の副隊長に押し付け、裏の馬小屋に向かう。

智春もその背を追った。




「メリウス隊長、アオヤマ様、お待ちしておりました。会議は第三会議室で行われています。」


城に着くと、入り口で侍女が待ち構えていた。


「ああ、分かった、では行こう。」

「申し訳ございませんが、アオヤマ様はお待ちください。」


侍女の言葉に頷いたメリウスが智春を連れて行こうとすると、侍女から待ったがかかった。


「アオヤマ様は会議の間別室で待っていただくようにと指示を承っております。」

「そうか、了解した。では俺は行くぞ。」

「ああ、」


メリウスは早足で城の奥に消えていく。


「では、ご案内いたします。」

「ああ。頼む。」


智春は侍女の後に付き、城の中を進む。

案内されたのは街がよく見える城の一室で、柔らかい高級そうなソファーが置いてあった。


「この部屋でお待ちください。何か必要なものがございましたらそこの『鳥呼鈴よびりん』を鳴らしていただくと城の者がすぐに参上いたします。」


侍女は棚の上のハンドベル状の魔法具を指しながら言う。

ラベスト侯爵家でも見た懐かしい魔法具だ。


「では失礼いたします。」

「ああ、」


侍女が去った後、一人になった智春は『シャドウクローゼット』の中から適当に魔法学の教科書を取り出し流し読みをする。

突然できた暇な時間に王城内で魔法の実験をするわけにもいかず、適当な暇つぶしになりそうなものを選択したのだ。



『-----ア様、お待ちください!!』

『待たぬーーーー』



時間つぶしを始めてから数分後、部屋の外が少し騒がしくなった。


バンッ


「トモハルーーーー、また冒険の話を聞かせてほしいのじゃーー」

「マリア様!はしたないです!!」


そんな騒がしい言葉と共に、ハンガリア帝国第二皇女『マリア=ハンガリア』がそば付きのメイド『リリオ』を連れて部屋に入って来た。


「これは、マリア姫様。ご無沙汰しております。」

「うむ、久しぶりなのじゃ。して、冒険の話を聞かせておくれ!」

「わかりました。」


食い気味な様子のマリアに智春は苦笑気味首肯する。

後ろでリリオが申し訳なさそうに頭を下げるが、智春は軽く会釈を返し気にしないでいいことを目で伝えるのだった。






それから一時間ほどして皇帝陛下が部屋にやって来た。

智春はてっきり自分が呼ばれていくものだと思っていたので少し驚いてしまった。


「待たせた上に、マリアの相手までしてもらってすまんな。」

「いえ、俺も話し相手ができてよかったです。」

「うむ、そう言ってくれると助かる。」


皇帝陛下はそう言うと少し、緩めた頬を引き締めた。


「して、本題に入る。トモハルよ。そなたには明日の朝一番にこの中央大陸の北西にある『バチルマ聖国』に向かってもらう。これは、余からの冒険者トモハルへの依頼としてギルドに出しておくが、そなたにとっても無関係では居れまい内容だ。」

「はあ、構いませんが・・・まさか、レイラが見つかったんですか?」

「う、うむ・・・」


そこで皇帝は苦い顔を作った。


「そうだな・・・・まあ、まず、依頼の話からさせてもらう。今回の依頼は、現在『バチルマ聖国』の首都『聖都サンピート』にて起こっているクーデターの鎮圧協力と聖王家の保護だ。」

「はい、そのクーデターには『虹龍教こうりゅうきょう』が関与をしていると?」

「うむ、それは間違えないだろう・・・して、そのクーデターの首謀者なのだが・・・・」


皇帝はそこで言葉を切る。

部屋に少し緊張して空気が走った。



「クーデターの首謀者は、正統バチルマ聖王女、『レイラ=オルモナーク=バチルマ』なのだ・・・」








 






どうも、ご無沙汰しております。

外山です。

今回の更新が大変遅くなってしまったことを心からお詫びお申しあげます。


今話はいろいろな理由から大幅カットで帝都に飛んできてしまいました。

話が急展開していますが、どうか生暖かい目で見ていただけると幸いで。


どんなことでも結構です、感想をお待ちしております。

また、新しく『Life of Another World Online』という小説も現在二話まで投稿しています。

もしよければそちらの方も読んでいただけるとうれいしです。


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