第四章:王都訪問編 34話:祭りの前(6)
皆さん、お久しぶりです。
二か月ぶりの投稿となりました。
では、34話をどうぞ。
あ34話:祭りの前(6)
ダラベストにある冒険者ギルドの屋内訓練場で二人の男が剣を交わしていた。
「っつああぁ!」
「はあ!」
ガキンッ
勢いよくぶつかった鋼同士が火花を散らす。
片方は片手剣と盾、金属甲冑をきた白髪の初老の男。
もう片方は刀を持つ黒目黒髪の少年。
双方はつばぜり合いの状態から離れ、体勢を立て直すと円を描きながらじわじわと間合いを詰める。
「主、その若さでなかなかの腕じゃな。ランクがまだCなのが不思議なくらいじゃ。」
「御褒めにあずかり光栄だ。だがこの試合勝たせてもらう。」
「わっはっは、まだ若いもんには負けんわ!!」
その言葉を掛け声に白髪の老騎士、チーム『小騎士』のリーダー、ガナッシュが黒目黒髪の少年、智春に切りかかった。
「っつ!」
智春はガナッシュの剣を刀で受け流しながら返す刀に切り上げる。
しかし、ガナッシュはそれを予期していたように盾で受け止めた、いや、受け止めるにとどまらず剣を受け流されて半身が出ていた状態から反対の足だして立て直すのに合わせて盾を智春を押し返すようにたたきつけた。
「ガハッ」
「ふっ、まだ詰めが甘いな、しかし、まだまだ伸びしろのあるいい素材を持っておる。これからも鍛錬に励むのじゃな。」
「ふう。完全に負けだな。ああもちろんだ。」
体勢を崩した智春の首筋にガナッシュは素早く剣の刃を添え智春に勝利宣言をした。
智春はすがすがしい表情で負けを認めそれに返す。
「よ~し、これで全員の模擬戦が終わったわね~。じゃあじゃあ、会議室に戻って配置を決めて後は簡単にミーティングして~今日はお~わり~」
二人の剣を認め合った真面目な雰囲気を壊すように赤髪の少女にしか見えない容姿のギルドマスター、ビビアが心底嬉しそうに宣言する。
「いや、姉さん。この仕事が終わってもまだ式典に向けた仕事や通常業務が残っているぞ。」
「む~、バローナちゃんの意地悪~。だって~ここ最近ずっと忙しいし~今日くらいはいーじゃん。」
妹のバローナの突っ込みにビビアはちょっとイラッとするしゃべり方で我がままを言う。
「そうか、なら姉さん、サバクダ秘書長に自分で言ってくるといい。」
「それは嫌。サバちゃん厳しいから絶対にダメって言うし。」
「なあ、もうそれはどうでもいいから早く会議室行こうぜ。」
Cランクのチーム『狼月』のチームリーダー、バトルアックス使いのダレンの提案にその場のほとんどの意見が賛同し移動を開始する。
「しかし、主の剣術は見たことの無いものだが何か特殊な術と同時に使ったり、一撃の技につなぐような戦い方であるように感じたのだがどうかの?」
一番後ろでむくれているビビアを無視して各自雑談を始める。
智春はさっき模擬戦をしたばかりのガナッシュと話していた。
「ん?ああ、その通りだ。俺の剣術は鬼術っていう術と一緒に使ったり、各動作三段階にわたる技、そしてその技の最終形にあたる奥義につなげるような剣術だ。」
「ふむ、なるほど。わしらの使う剣の型を重視しそれを組み立てて戦う剣術とは異色の剣術だな。してなぜ主はそのキジュツとやらや技をさっきの模擬戦で使わなかった?使っておったらまた戦局も変わったと思うがの?」
ガナッシュは眼光鋭くにらみながら尋ねる。
「ああ、別に手加減とかしたわけでは無いんだ。そう睨まないでくれ。」
「ほう、ならどうして使わなかった?」
「それは使わなかったというより使えなかったってのが正しいんだ。俺の剣術は絶殺の剣術なんだ。俺は実は剣術がそこまで得意ではない、だから『鬼術』や技を使ってしまうと相手を殺してしまうから今回は使えなかったんだ。」
「ほう、あの腕で得意ではないか・・・はっはっは、主はつくづく才能の見えない奴だの。」
「褒め言葉として受け取っておくよ。」
おかしそうに笑うガナッシュに智春はそう返す。
すると、前でエリーゼたちと話していたCランクチーム『妖精たちの花嫁』の雷魔精霊使いのプリミラが智春たちの方を振り返った。
「ねえねえ、さっきエリーゼちゃんが使ってたあの『魔拳銃』って言うのを作ったのがトモハル君って本当?」
実はさっきの模擬戦は今回の任務前に全員が各々の力量を知るために行われたもので、レイラはガナッシュのところの槍使いと、セリアとメイアは智春とは別の戦力としてカウントするため『妖精たちの花嫁』のリーダー、風魔精霊使いのライラと影魔精霊と土精霊使いのセレスタの二人とタッグで、そしてエリーゼはこのプリミラと戦っていた。
その時、エリーゼの使う『マジックガン』は当然のように疑問と好奇心の的にされた。
しかし、ビビアの『そういった話は全部後で』という一言で流されていたが対戦相手だったプリミラがそれを知るはずもなく質問をしてきたのだった。
「ああ、プリミラさん。これは会議室に着いてからみんなの前で一緒に説明するから待っててくれ。それとそれを俺が作ったっていうのは本当だ。ただ一人で作ったわけでは無いから。」
「ふ~ん、そうなんだ。でも、あんなに強いのにその上そんな発明までしてトモハル君ってすごい子だね。お姉さんびっくりしちゃった。」
「ああ、まあ、武術も発明も趣味だからな、って、痛っ!何するんだセリア。」
智春がプリミラと話しているとその後ろを歩いていたセリアに足を蹴飛ばされた。
「ふん、胸に手を当てて考えてみるといいわ!・・・鼻の下そんなに伸ばしちゃって・・・・」
「は?何のことだ?」
セリアの後半の言葉は小さすぎて聞こえておらず、ただ話していただけのつもりの智春は何のことだか分かっていない。
その後智春は、前を歩くプリミラからはニヤニヤとした含み笑い、後ろのセリアからは何か言いたげな怒気を感じ、会議室に着くまで居心地の悪い思いをするのだった。
「みんなに着いたね~、それじゃあトモハル君、さっきの魔法具の説明をおねが~い。」
会議室に着き、各々が席に着くとビビアが適当な感じの振りをよこした。
それに智春は苦笑しながら立ち上がる。
「ああ、さっきうちのエリーゼが使っていたのは俺が作った魔道具で、『魔拳銃』と呼んでいる。能力はさっき見てもらえた通り『魔法を撃ち出す。』能力だ。これは複数の魔法式を複雑に組み合わせた機構をしているから俺ともう一人以外作ることはおろかいじることもできないと思う。そしてこの魔法具の利点だが、二つのことあげられる。一つは『詠唱省略による魔法の速射と連射』もう一つが『一応自分の適性外の魔法を使うことができること』だ。」
智春はそこで一旦言葉を区切る。
聴衆の様子は唖然としていたり、難しい顔をして腕を組んでいたりとさまざまであるが、皆一様に驚きの念を表している。
「まあ、さっき言った利点を踏まえてもこの魔法具は万能ではない。エリーゼ、ちょっと『マジックガン』を貸してくれ。」
「ん・・」
エリーゼは太もものホルスターから『マジックガン』を取り出し机の上に置く。
すると、『マジックガン』は綺麗な放物線を描きスッと智春の手に収まった。
「まあ、こんな風に『詠唱省略』は『無詠唱魔法』さえ使えればその利点を失ってしまう。」
「「「「・・・ええぇぇーーーーーーーーーーーーー!!!!」」」」
「うぉ!!びっくりした。どうしたんだ?」
「いやいやいや、そんな『どうしたんだ?』じゃないわよ!『無詠唱魔法』って何よ?てか、今なにしたのよ!!」
その場にいたほぼ全員(エリーゼ以外)の絶叫に智春は軽く驚く。
そんな智春の対応が気に食わないセリアが意外とうまい智春のマネを混ぜて問いをたたきつけた。
「へ?何をしたって、『無詠唱魔法』つまり『詠唱を用いず意識だけで魔術回路を作り出す技術』を使って『無属性魔法の『マジックアーム』』を使っただけなんだが。」
「『だけ』じゃないわよ!!『マジックアーム』云々は置いといて、『無詠唱魔法』って、そんな物までいつの間に作ったのよ!」
突っ込みに疲れたのかセリアの声はテンションダウンする。
「へ?この仕事が決まってから割とすぐに、でもエリーゼに見せてもそこまで驚かなかったから『難しい技術なだけで特に珍しくもないんだな』と思って、そのまま話すのを忘れてた。」
「え?エリーゼなんでそんなに驚かなかったの?」
「・・だって、トモハルは何でもできる・・・有能な私の旦那様・・・」
「あ、もういいわ。はあ、トモハル説明を続けて・・・」
セリアは疲れたように智春に促した。
周りは皆同じような表情を浮かべていた。
このとき、奇しくもこの会議室に集まったほぼ全員の心は一致した。
『もうトモハルの事では驚かない・・・・』と・・・
その後、智春による『マジックガン』の説明が終わると、ビビアにより当日の警備の割り当てが発表された。
ちなみに智春はメイアと一緒に皇帝、皇女の護衛、ギルド代表だ。
これには式典が終わってから学院に通うことになっている皇女陛下に早く馴れて、友好的な関係を結ぶため、と、ちゃんとした理由があるのだ。
また、セリアはレイラと一緒に会場内の警邏班でエリーゼは智春の進言で兎人族としての索敵能力をいかして建物の上から場内を監視する警戒班である。
「じゃあ、また明日に実際に現場に行ってからの打ち合わせ、明後日は皇帝陛下御一行の到着だから護衛騎士との打ち合わせ、そして、明々後日が式典当日だから。このスケジュールで行くわよ!異論をある?」
「わしらわ無いな。」
「俺らもだ。」
「私たちも。」
「右に同じく」
「よし、じゃー今日はかいさ~ん!」
「ちょっと待った!!姉さん、アレを忘れてるぞ!」
各リーダーの同意でお開きとなるところにバローナが待ったをかけた。
ビビアはアレという言葉に一瞬首を傾げるが、ハッと何かを思い出した表情をした。
「えっと、ごめんね~、一番大事な事を忘れてたよ~。」
ビビアが珍しく本当に申し訳なさそうに謝る。
「実は、今回の式典で『虹龍教』が事件を起こす可能性があるから警備を厳重にしてほしいんだよ。まだ可能性ってだけだけど私の『器官』が『暗黒卿』のような人物も目撃してるから多分、いや絶対に来ると思うから、警備の強化をお願いね。」
「『虹龍教』か・・・また厄介な奴らが来たもんだ・・・・」
「『暗黒卿』がいるとは、最悪じゃな・・・・」
ビビアの言葉を聞き各々が難しい顔をする。
智春も場に合わせて難しい顔をする。
「じゃあ、これで今日は本当におしまい。じゃあ解散!」
皆神妙な表情なまま、ビビアの号令で会議室を辞した。
智春たちは寮に帰ると智春の部屋に全員集まった。
「で、『虹龍教』ってなんだ?」
「はあ、やっぱり分かってなかったのね・・・何にも言わなかったから変だとは思っていたのだけれど・・・」
セリアはなんだか呆れたようなそして納得したような表情をする。
「っと、『虹龍教』だったわね。これは少し昔話からしないといけないのだけれど・・・」
「ああ、その昔話は聞いたぞ。『世界龍』をふらっと出て来た『勇者』が倒したって言う話だろ?」
「え?そうなの。まあ、それなら話が早いわね。『虹龍教』って言うのは、そのお話に出てくる『世界龍』の考え方が正しく、『世界龍』を復活させて再び天地鳴動の終焉を実現させようっていう狂信者の集団なの。」
セリアは苦々しい表情で話す。
「ふ~ん、じゃあ今回の襲撃はさしずめ皇帝陛下を誘拐したりしてこの国を荒れさせるのが目的かもな・・・」
「まあ、そこら辺が妥当でしょうね・・・」
「警備しっかりしないといけないわね。」
各々、今回の仕事の重要性を再確認する。
と、何かを思い出したようにセリアが智春に目を向けた。
「そう言えばトモハル。あなたこっちの世界の昔話なんていつ知ったのよ?」
「ん?そう言えばセリアたちが忙しそうに話してなかったな。実はこの前エリーゼとクラスの娘の三人でこの街の近くの森林迷宮まで『魔活祭』っで使う材料の採取に行ってたんだ。」
「え?ちょっと待ってください。それって『フルーツパラダイス』に行ったってことですよね?それならセリアやメイアが気付かないはずは無いんじゃないですか?距離的に。」
隣で話を聞いていたレイラが訝しげに聞いてきた。
「!、まさか、そんな言い訳考えて実は街で私たちに言えないようなことをしてきてたんじゃないでしょうね!!」
セリアは何か思いついたような表情を浮かべると、一転、鬼の形相を浮かべ智春に詰め寄る。
「なんでそうなる!ちゃんといって来たぞ!ほら、これが証拠だ『シャドウクローゼット』」
智春がそう言い返しながら影から若草色の宝珠を取り出そうとした。
「ぷはぁ、やっとでられたのう。」
智春が取り出した宝珠からさらに何か小さい生き物が飛び出した。
「なっ!お前はティターニア!!」
「ほう、わっちをお前呼ばわりかえ?まあよいか・・・っと、この姿の時は不完全なわっちゆえ『ティターニア』ではなく『ティッタちゃん』と呼ぶとよいぞ。」
宝珠から飛び出した三頭身の手のひらサイズほどの妖精『ティッタちゃん』が偉そうに胸をそらした。
「へ?え?なに?」
「ほう、最上位の精霊様かえ。申し遅れたの、わっちはこの近くにある森林型迷宮『森緑の迷宮』の番をしておる『樹木妖精』のティターニアじゃ。これからはこの智春に付き現世の見聞を高める旅をする予定じゃの。」
ティターニアの予想外の発言に場の空気が凍りつく。
「ねえ、トモハル、貴方がちゃんと迷宮の攻略に行っていたことは分かったわ・・・でも、これはどういうことかしら?」
「い、いや、どういうことと言われても・・・・どういうことなんだ?」
智春は怒気を振りまくセリアに怯えながら、自分も予想外の展開だったため発言の主に問い返す。
「どういう事も、この宝珠を渡したときわっちは言ったではないか、『わっち(の本体)はこの地に潜って(智春について行って)最近の人の動きを調べようと思う。』っとな。」
「わーかーるーかーー!!そんな重要な部分を省略した状態で分かるわけないだろ!!」
ティッタちゃんのあんまりな物言いに智春の絶叫が響く。
「そこは察するのじゃ。曲がりなりにもわっちの試練を乗り越えたのじゃからな。」
「いや、無理だろ・・・・」
智春の力ないため息が漏れる中、今までの智春たちの会話を聞いていたセリアが、その怒気を収めながら口を開く。
「はぁ、まあ何となく事情は分かったわ。その娘のことはなるようになるんじゃないかしら。でもどうして私とトモハルがそんなにも離れた状態でいられたのかしら・・・?」
「え?もしかしてセリアそれ本気で「なんじゃ、『インペデント』したからに決まっておろう。」」
セリアの疑問にメイアが驚いたように声をあげるが、ティッタちゃんがそれを遮るように聞きなれない単語を発した。
「へ?『インペデント』?、貴女が何かしたの?」
「何を言っとるんじゃ。わっちは何にもしとらん。主、『インペデント』を本気で知らんのかえ?」
「え、ええ?何のことかしら。」
「精霊と契約者の間に一定以上の交流と信頼がはぐくまれたときに精霊が一つの個として存在を確立する現状の事よ。」
ティッタちゃんに言葉を遮られて以来黙っていたメイアが口を開いた。
「主は変な精霊様じゃのう。今まで宝珠の中から聞いていた話の内容から見ると、主はまるで人間になるはずだったのに手違いで精霊にされてしまったような知識の偏り方をしておるの。」
「え、いや、その、私は『精霊図書』で世界の知識ばかり集めてたから・・・」
ティッタちゃんからの言葉にセリアはしどろもどろに答える。
「私も今までセリアのその話聞いたときよく違和感を感じていたのだけれど、ティッタちゃんのその言葉はその違和感にぴったりな気がする。」
「で、でも、私は精霊なのには変わりないわ。」
「まあ、そのことはよい。ここで話しておっても仕方ないことじゃ。」
「そ、そうね・・・私、今日はもう寝るわ・・・」
セリアはそう言うと足早に部屋を出て行った。
「はあ、ティッタちゃんのことは置いとくとして、二人ともセリアに言い過ぎなんじゃないか?いくらなんでもあれはかわいそうだぞ。」
「う、ご、ごめんなさい。ついしっくりきちゃったから・・・」
「うむ、悪気わなかったのじゃが・・・」
智春の言葉に肩を落とす二人。
「ああ、なら明日にでもセリアに謝っておくんだぞ。今は少しそっとしておいてやろう。」
「うん。分かったわ。」
「了解じゃ。」
「よし、じゃあ今日はこれでお開きにして明日に備えるぞ。」
素直に頷く二人に智春は苦笑を込めて頷くと解散の宣言をする。
「「おやすみなさい。」」
レイラとメイアは挨拶をして部屋を出ていく。
智春は机の上に居座る新たな小さな仲間に現在の最重要事項を尋ねる。
「で、お前はどこで寝るんだ?」
「ん?わっちか?わっちならまた宝珠に戻って休眠に入るゆえ気にするな。ではお休み。」
ティッタちゃんはそう言うとその場からフッと姿を消した。
「はあ、じゃあ俺も寝るか・・・って、エリーゼなぜ俺のベットに入ってる?」
「・・・夫婦が同じベットで寝るのは自然な事・・・問題ない・・」
「答えになってないんだが・・・」
「ん・・問題ない・・・」
智春はため息を深くつき、今夜はまだまだ続くことを覚悟したのだった。
夜中、何とかエリーゼを部屋に返して一人で就寝していた智春は何かの気配に目を覚ました。
瞼を開いた先には綺麗な翡翠色の瞳がこちらを見つめていた。
「ん?・・・セリア?」
「ごめんなさい、トモハル。起こしてしまったわね・・・」
智春の寝ぼけた声にセリアは申し訳なさそうに返す。
「え!せ、セリア!どうしたんだ!?」
意識が覚醒してきた智春は驚いて飛び起きた。
「ごめんなさい、トモハル。でも、今夜は一緒に居てくれないかしら?」
セリアは再び謝罪の言葉を告げると、とんでもない要求をしてくる。
「セリア、急にどうしたんだ?」
「いえ、その、メイアやティッタに言われてたことを少し考えていたの。私だって自分の不自然さには気がついていたわ。私は精霊なんだって言う確信もあるし、実際に私は精霊なのよ。契約だってできるし、『古代語』だって解せるし、精霊魔法だって使えるの。でも、どうしても時々、自分の考え方や習慣が精霊ではなく人間の物になっていることがあるの。そんなことを考えていたらどうしても眠れなくなってしまって・・・・ダメ?かしら?」
セリアは心の内の不安を吐露すると、最後にその翡翠色の瞳に甘えと不安を光らせながら首を傾げた。
そんな物を見てしまったら智春にはもう断るという選択肢は宇宙のかなたまで飛んで行ってしまった。
「セリア、メイアたちもそんなに深く考えて行ったわけでもないんだし、気にすることなんてない。それに俺はセリアがたとえ何者であっても別に気にしたりしないさ。だって、お前は俺がこの世界で最初に会った本当に信頼できるパートナーで家族みたいなもんなんだから。」
智春はベット脇に座っていたセリアを抱き寄せながらそう伝えた。
「ただ、一緒に寝るのは今日だけだぞ。」
「うん、分かったわ。ありがとう、トモハル。」
セリアはそう呟くと、ゆっくりベットの中にもぐりこんで来る。
智春はそんなセリアを抱きしめたまま再び目を閉じた・・・・・・・・・眠れん・・・
腕の中ではすでにセリアが安心した表情で規則正しい寝息を立てているが、智春は心拍数が上がりなかなか寝付けない。
この夜、智春は寝不足で過ごすことになるのだった。
それから二日間の間はとても忙しくなった。
現場での動きや役割の確認。
近衛騎士団たちとの警備の打ち合わせ。
学院での『魔活祭』の準備。
など、いろんなしごとをこなしているうちにあっという間に過ぎ去っていく。
そんな日々の中、セリアはもう不安を見せることもなく、メイアたちともちゃんと仲直りできたようでチームのメンバー全員で協力していろいろな準備に従事した。
そして、準備期間最後の夜、各々の覚悟や気持ちを胸にベットに入る。
しかし、そんな活気ある日々の裏側でとある計画が着々と進んでおり、ある男が野望を胸に闇夜に笑みを浮かべているのだった。
皆さん、ご無沙汰しております。外山です。
今回は二か月というとても長い期間を開けての投稿となってしまい申し訳なく思っています。
次話はもっと早く投稿したいと考えています。
引き続きこの『進異世界』の世界をお楽しみください。




