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2話:到着!こんにちは異世界

ついに異世界に来た‼

2話:到着!こんにちは異世界♪


異世界を旅するにあたって、青山智春あおやまともはるの『地球』での過去を語っておこう。

父の家系である『青山家』は代々医師の家系であった。

青山に産まれた子は皆医師になることを運命づけられているため幼いころから青山の経営する病院で救急時の応急処置から簡単な治療まで教え込まれ、特に優秀な子には手術をモニターして勉強させるといった英才ぶりである。

智春もその英才を受けていて、それが嫌で一時期家出をしたことがあった。

その時のことは今回は割愛しよう。

母、青山夏苗あおやまかなえ、旧姓『安元夏苗やすもとかなえ』は武家の出身であり、田舎にある実家は剣道の道場を経営しているが、家では古くからの殺人を目的とした剣術や槍術、体術などを日々改良を行いながら『安元流武術』として伝えてきた家系である。

現当主にして夏苗の父、安元義政やすもとよしまさは子供好きで智春もよくなついており、家出した智春を快く迎え、免許皆伝まで鍛えていたりもする。

その話は後々。

そして、その普通ではない高校生、青山智春あおやまともはる君は今異界の森で目を覚ました。

服装は制服のままだったが、あたり一面見慣れぬ木々や植物そして大型の生き物の気配と、地球では味わうことのできない新鮮な感覚に智春は笑みを浮かべた。

起き上がりあたりを見回すと、横に刀匠でもあった祖父義政が智春のために打った智春お気に入りの刀『雲雀ひばり』と何か色々入っていそうなリュックサックが置いてあった。

智春はとりあえずリュックの中を探って、感嘆の声を上げる。

「うおー、すげー干し肉じゃん。」

リュックの中には金貨が10枚と皮袋に入った水が1リットル?くらい、干し肉が数日分、サバイバル用のナイフ、あと手紙が入っていた。

『異世界に送るにあたって、人が急に現れるところを誰かに見られるとまずいので、人里離れた森の中に転移しました。頑張って人を探してください。

リュックの中の食料は10日分になっています。計画的にご利用ください。

では、異世界でより良い人生を           

                                     秘書係の天使より』

「あれ?のっけから遭難イベントじゃね?」

と、智春は焦ってあたりを見回した。

あたりには大小さまざまな生き物の気配を感じるが、人の気配を全く感じさせなかった。

数秒ほど考えて、智春は自分の勘を信じることにした。

智春は同じところを通れば分かるように、ナイフで木にバッテンを刻みながら森を歩いた。

陽は高く上り、太陽の位置からちょうど昼くらいであった。

智春は木陰で水分補給をし、干し肉を少しかじった。

「これじゃ、らちが明かないな。」

そう呟いて、智春は太陽を見ながら東の方へと足を進めた。

出会いは突然だった。

目の前に巨大な岩が現れたと思ったら、それは緑色の大きな熊だった。

智春は立ち止まり、熊の様子を窺う。

その熊は、立つと成人男性の優に二倍はあると思われる体躯に、額の真ん中から一本の角が生えている。と、とんでもない姿をしていた。

智春は本能的に「目をそらしたら死ぬ。」と理解して、後ろを向かないまま後退していった。

パキッ

後退する智春の足が小枝を踏み折った。

その音が引き金となり熊が襲い掛かってきた。

「うぉ!ぶねー」

熊の爪による一撃を智春は紙一重でかわす。

ドサッ

熊の爪が当たった木は、その衝撃で折れ、倒れる。

「やっべー、これ一撃もらったら死ぬな。」

予想外の熊の攻撃力の高さに智春は冷や汗をかく。

攻撃の外れた熊はこちらの様子を窺いながら円を描き追い詰めるように智春の周りを歩く。

智春もそれに合わせて移動し、ちょうど木を挟む位置になった時、後ろを向いて一目散に逃走した。

怒った熊が木をなぎ倒しながら追いかけてくる。

熊の走る速度は、その巨体から想像できないほど早い。

「やばい、これじゃ追いつかれる。」

焦った智春は足元を確認せず、速度を上げる。

熊が背後に迫り、もう少しでその角で突き刺される、といったところで智春は前に跳び、反転しながら刀に手をかけた。

もう一か八かである。

しかし、反転した智春を襲ったのは熊ではなく、浮遊感と闇であった。

足元を確認しなかった智春は、木の根元にあった人一人がちょうど入るくらいの穴に落ちたのである。

あまりの事についていけず、智春は意識を手放した。


ピチャン

水音が洞窟に響く。

『死んでなかったみたいだな。背負ってたリュックがクッションにでもなったかな。』

次第にはっきりしてくる意識の中、智春は違和感に気付く。

『あれ?妙にこの地面柔らかくないか?』

身体に伝わってくるのは石の固く冷たい感触なのに対して、頭には柔らかいまるで人肌のような感触が伝わってきた。

不思議に思った智春が目を開けると、綺麗な翡翠ひすい色の透き通った目と目があった。

「うわぁ。」

智春は情けない声をあげ飛び起きた。

目の前には、長い水色の髪に翡翠色の目、髪の色より薄く白に近い水色の西洋風ドレスを着て人形のような整った顔立ちをした少女が座っていた。

「驚かしてごめんなさい。でも、あなたが急に落ちてきてうなされてたから。」

小川のせせらぎを連想させる、透き通った綺麗な声だった。

「いや、ごめん。君が助けてくれたのか?」

「いえ、私はこの洞窟に転がり落ちてきたあなたが起きるのを膝枕して待ってただけよ。」

「そ、そうか。でも、なんで見ず知らずの俺なんかに膝枕なんてしてくれたんだ?」

智春は恥ずかしそうに少し顔を赤らめながら尋ねると、少女は少し悲しそうに少しうつむく。

「人間は倒れている者にそのようにすると聞いたから。嫌だったならごめんなさい。」

「嫌なんて、全然、ありがとな。」

そこまで言って智春は少女の言葉に違和感を覚えた。

「『人間は』なんて、まるで自分が人間じゃないみたいな言い方だな。」

「そうよ、私は人間じゃないわ、おそらくこの森で一番強い精霊よ。」

「せ、精霊?」

智春はいかにもファンタジーな事に驚きとともに少し喜びを感じた。

「ええ、この洞窟で生まれ、かれこれ数百年ここで暮らしてるのよ。」

「そんなにか・・・、森の外には出なかったのか?」

「精霊は例外を除いて、生まれた場所から出ることができないの。私はこの洞窟で生まれたからこの外へは行けない。でもさいわい、ここは『気力』であふれていたから消滅しないですんだわ。」

「そうか、なあこの洞窟、出口はあるのか?」

「ええ、案内するわ。でも、その前にお願いがあるのだけれど。いいかしら?」

「俺にできることなら。」

「そう、ならこっちに来て。」

そう言うと、少女は洞窟の奥に歩いて行った。

智春は一応、壁に立てかけてあったリュックと刀を手について行った。

奥に進むごとに肌寒さが強くなり、開けたところに着くときには、真冬並みの寒さになっていた。

洞窟はそこで行き止まりになっており、最奥には智春の身長と同じ大きさの氷の柱が立っていた。

少女はそこで立ち止まり、智春の方を向いた。

「お願いというのは、私を連れて行って欲しいの。」

「え?でも、精霊は生まれた場所から動けないんじゃなかったのか。」

「ええ、でも例外として、人と精霊契約を結べばその人と一緒ならどこへでも行けるようになるの。」

「せ、精霊契約?俺にできるのか?」

「ええ、あなたの『気力』の器の大きさなら問題ないは。了承してもらえないかしら。」

そう言うと少女は縋るような目で智春を見た。

身長的な関係から智春は上目づかいで見つめられ、顔を朱に染めつつ頭を縦に振った。

「ありがとう。では、契約の祝詞のりとを始めるわ。」

「おう、俺はどうすればいい?」

「その氷に片手をついて、もう片方をこちらに。そして目を閉じてください。」

智春は言われたとおりにすると、氷の柱を合わせた二人と一本で輪を描くような形になった。

すると、少女はさっきとは異なる言葉を紡ぎだした。

『我は氷、大河を凍らせ、すべてを冷やす冬の化身なり。今この者をわが主と認め、死に消ゆるまで仕えることを誓わん。我が名、セリア・ウォルトスールの名において我が魂をささげん。』

祝詞に呼応するかのように氷の柱にひびが入る。

少女、セリアは顔を智春へと近づける。

智春は唇に柔らかな感触を感じ、驚いて目を開けると、目の前にはセリアの顔があった。

「うぁ!」

智春は驚きのあまりセリアの手と氷から手を離した。

バリッ

そんな音と共に氷の柱は砕け落ち、セリアの体は虚空へと消えた。

「へ?ど、どこに行ったんだ?冷たっ。」

セリアが消えたことに驚き、あたりを見回す智春の左手に氷のような感触が襲った。

智春の手には今までなかった透き通った水色の石のはめ込まれた指輪があった。

『契約が完了したわ。ありがとう。』

「なっ。」

急に頭の中に響いたセリアの声に智春は驚く。

すると、目の前にセリアが姿を現した。

「ごめんなさい、あなたは『古代語エンシェントスペル』が使えそうになかったから行動による返答にさせてもらったわ。」

「それがキスか。」

顔を赤らめる智春に、セリアは事もなげに返した。

「ええ、そうよ。古来より上位個体による契約は接吻によって行われてきたものよ。」

「そうか・・・、で、どこに消えてたんだ?」

「指輪についている石の中よ。そんなことより自己紹介がまだだったわね。私はセリア・ウォルトスール、氷の精霊よ。」

「俺は青山智春、異世界からつい数時間前に転移してきた。」

「へ?異世界?馬鹿なこと言って私を騙しても無駄よ。」

「嘘じゃないって、本当なんだよ。」

氷のような視線でにらむセリアに智春は慌てて返す。

「じゃあ、確かめさせてもらうわ。」

そう言うとセリアは目を瞑って黙ってしまった。

黙っているセリアの顔を眺めていると、セリアは眉が上がったり下がったりと変化を続け、再びその翡翠色の瞳を開いた。

「ほ、本当だったようね。疑って悪かったわね。」

「ん?どうやって分かったんだ?」

智春は困惑した表情を浮かべる。

「契約による記憶の閲覧よ。」

「記憶の閲覧?ってことは、俺の記憶を見たのか?」

「え、ええ。でも知らない文字や言葉に不可解な物ばかりでさっぱりよ。」

「はあ、なんだ内容はわかんなかったのか。」

智春は自分の黒歴史を思い返し安堵の息を漏らす。

「ええ、この世界に私の知らない文字や言葉はないわ。だからあなたが異世界から来たって分かったの。でも、あまりそのことは話さない方がいいわ。面倒事はごめんよ。」

「あ、ああ、分かった。でも、セリアが俺の記憶を覗けるなら、俺もセリアの記憶を覗けるのか?」

「ええ、でももしやったら、凍死させるわよ。」

セリアの目は本気だった。

「ああ、分かった。しないから、殺さないでくれ。」

「ええ、では行きましょう。話の続きは歩きながらよ。」

そう言うとセリアは嬉しそうに歩き出すのだった。





どうも、このお話を読んでいただきありがとうございます。

今回は簡単なバトルシーンを入れさせてもらいましたが、分かりにくいところが多かったと思います。ですが、これからもっとわかりやすく書けるようにがんばりますので、生暖かい目で見守ってください。

では、また次のお話でお会いしましょう。

次は、土曜までには投稿したいと思います。

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