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死ぬまで生きてやる  作者: 楸 椿榎
第二章 オレと私
7/11

夏にゆらめく

 小川(おがわ)水面(みなも)(きら)めく。木漏(こも)()の下、白の短パンとワンピースから素足(すあし)(さら)して、水の中へ(ひた)してみると気持ちがいい。


「暑い夏でも、これは格別」

「あなた、本当にこれが好きよね」

「お前だって好きなくせに」

「誰かさんに似たのね」


 鼻で笑いながら、リィンはさらした足を()らめかせる。

 近くを魚たちが泳ぐ。二人に気付いて逃げる。


「取って食べたりしないのに」

(うそ)つけ、いつか木の枝と糸で釣竿(つりざお)つくってただろうが」

「いつの話よ」

「三年前……いや、五年だったか?」

「変わってないのね。私たち」

「そうだな」


 何も変わらない。(おだ)やかな日々。

 (はだ)の感触。水の冷たさ。


 けど、変わっている。

 この草木も、去年までと同じじゃない。

 さっきの魚も、いつか見たのとは別かもしれない。


 変わらないのは、私たちだけ。


 いや、

 私だけかもしれない。


───*───*───


 夏の暑さに目が覚めた、ということにした。

 (となり)で寝ているヤツの顔に目をむける。安心し切って、静かに胸が上下している。

 (つな)いだ手から熱が伝わる。生きているっていう熱が。

 オレがこいつを殺すんだ。他の(だれ)かではなく、オレが。


 ……なんで。


 キョウは自身の思考に(おどろ)いた。そんな言葉が自分から出てくるのが不思議だった。

 でも、なんで、と思った。

 考えようにも考え方がわからず、答えは出ず。

 考えなくても、「それがリィンの望みだから」というのは思考の(すみ)にちらつきながら。

 決めなきゃいけないその時に決めればいいと、眠りに逃げた。


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