夏にゆらめく
小川の水面が煌めく。木漏れ日の下、白の短パンとワンピースから素足を晒して、水の中へ浸してみると気持ちがいい。
「暑い夏でも、これは格別」
「あなた、本当にこれが好きよね」
「お前だって好きなくせに」
「誰かさんに似たのね」
鼻で笑いながら、リィンはさらした足を揺らめかせる。
近くを魚たちが泳ぐ。二人に気付いて逃げる。
「取って食べたりしないのに」
「嘘つけ、いつか木の枝と糸で釣竿つくってただろうが」
「いつの話よ」
「三年前……いや、五年だったか?」
「変わってないのね。私たち」
「そうだな」
何も変わらない。穏やかな日々。
肌の感触。水の冷たさ。
けど、変わっている。
この草木も、去年までと同じじゃない。
さっきの魚も、いつか見たのとは別かもしれない。
変わらないのは、私たちだけ。
いや、
私だけかもしれない。
───*───*───
夏の暑さに目が覚めた、ということにした。
隣で寝ているヤツの顔に目をむける。安心し切って、静かに胸が上下している。
繋いだ手から熱が伝わる。生きているっていう熱が。
オレがこいつを殺すんだ。他の誰かではなく、オレが。
……なんで。
キョウは自身の思考に驚いた。そんな言葉が自分から出てくるのが不思議だった。
でも、なんで、と思った。
考えようにも考え方がわからず、答えは出ず。
考えなくても、「それがリィンの望みだから」というのは思考の隅にちらつきながら。
決めなきゃいけないその時に決めればいいと、眠りに逃げた。