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精霊憑きの冒険譚  作者: きりくま
変わる世界
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3つの道:遭遇戦


 手を組む?

 ・・・こいつは馬鹿か?

 何を戯言をほざいているんだ?

 気でも狂ったか?


 「貴方のその頼み・・・私が聞くとでもお思いで?答えの分かってる質問をするよりも、この状況を抜け出す算段を考えるべきでなくて?」


 再びチャリティリィに襲い掛かるが、彼女はそれを受け止める。


 「まぁまぁ、イルバニアさん?落ち着てください。今の私は貴方達と敵対する意思はありませんよ?むしろ、アンジュさんの為にここまで頑張っているんですから。考える余地位はあるんじゃないでしょうか?」

 「あるわけ・・・ねぇだろうが!!」


 力任せに吹き飛ばし、霊力を練り上げる。

 チャリティリィの影が鎖に変わり、彼女を拘束・・・が、既にその場に彼女はいない。

 距離を離した彼女は苦笑いを浮かべていた。


 「いやはや・・・困りましたねぇ?話だけでも聞いてはくれませんかぁ?」

 「ジャーバスを殺しておいて・・・アン達を騙しておいて・・・よくそんな言葉が吐けるもんだな」

 「それは前にも説明したじゃないですかぁ。う~ん・・・まぁ、いいです。私は今から独り言を言いますから、聞くだけ聞いてくださいね」

 「だから―――っ!?」


 再び襲い掛かろうとするが、背後から接近する気配を察知。

 振り返るとそこには複数の魔物。

 どこから湧いた!?

 考える間もなく交戦開始。

 猛攻を防ぎ続ける中、忌々しい声が聞こえる。


 「最初はヘンベルさんを仲間にしようとしたんですよ。アンジュさんが私達の仲間を殺しちゃうから・・・まぁ、別にそれはいいんですけどね。だけど、ヘンベルさんったら何回も断るんですもん。力づくで仲間にしようにもいつも逃げちゃって・・・面倒だからもう放置してたんですよ。でもですね?彼ったらあろうことかアンジュさんの故郷に手を出そうとしている事が分かっちゃって。私としても今アンジュさんに精神的な負荷をかけるのは困るんですよ。彼女にはもっと力をつけてもらってからの方が都合がいいですからねぇ。だから、わざわざそれを防ぎにここまで来たんですよ?まぁ・・・失敗しちゃいましたけど。ね?イルバニアさん?貴方は確かに私を憎んでるかも知れないですけど、ヘンベルさんも随分と酷い事していますよ?敵の敵は味方ってよく言うじゃないですか?彼を殺すまでは一時休戦といきませんか?互いに疲弊したらヘンベルさんだけが得しちゃいますよ?」


 激しい猛攻を捌ききり、距離を離す。

 取り囲まれた2人をヘンベルは静かに見つめる。


 「彼女の言う事を真に受けてはいけない。確かに私の行いは君達にとっては理解しがたいものだろうが―――世界の為だ。この世に生きる全ての者の為ならば、私は喜んで汚れ役を演じよう。だがもしも君に覚悟があるのなら、私と共に彼女を討て。彼女達『ハイエナの牙』の蛮行は知っているだろう?彼女達は悪だ。このまま生かしておく事は出来ない。君と君の仲間の為に・・・私に手を貸してくれ」

 「あ~らら・・・随分とまぁ、勝手な事を言っちゃってくれますねぇ?私達こそ世界の為に動いているんですよ?それを邪魔する貴方の方が悪に決まっています。う~ん・・・まぁ、好きに言ってくれて構わないんですけど。どうせ貴方はここで死ぬんですから。さぁ、どうします?イルバニアさん?どうしても嫌だって言うなら仕方ないですけど・・・流石にこの数と私を相手にするのはきついんじゃないですか?」


 決断を迫られるイルバニアは―――笑っていた。


 「・・・上等ですわ。結局のところ殺す対象が増えただけ・・・全員まとめてあの世に送ってあげますわよ!」


 言うや否や、チャリティリィめがけて剣を振り払う。






 「どうだ?那智?」

 「・・・やはり先と変わりません。アンジュ殿達と思われる気配は大樹方面で魔物と交戦中、イルバニアと思われる気配は・・・感知できなくなりました」


 くそっ・・・どうなってんだ?

 ここまでは順調だった。

 魔物との遭遇は無く、村まで後半分といったところ。

 そこで1通の紙を見つけた。

 見覚えのある文字・・・恐らくイルバニアのもの。

 内容はこうだ。

 霊域の主は大樹にいる可能性が高く、チャリティリィの存在を確認。

 自分はこれから彼女を殺しに行く。

 判断は委ねるが、第一に優先するべきはキトとマリーの安全。

 確信が持てずに那智に索敵してもらってはいるが、大体は合っている。

 だが・・・イルバニアの気配が無いのは何故だ?

 霊域外に出たのか?

 これは・・・どうする・・・?

 1人がキトとマリーを連れて離脱、1人がアンジュ達の援護、1人がイルバニアの捜索。

 ・・・これが一番か?

 いや、ここで戦力を分散するのはどう考えても悪手だろ?

 ここまで無事だからと帰りも無事とは限らない。

 だとすれば・・・

 悩み続けるランセを余所に、マリーは無邪気に周囲を走り回る。


 「マリーちゃん!待って!危ないよ!」

 「大丈夫、大丈夫!キトちゃんも一緒に遊ぼ!追いかけっこ「マリー殿!!」

 

 那智が叫び、キトの制止も聞かずに走り回り笑顔を浮かべるマリーに―――1つの影が襲い掛かる。

 躊躇いも無く迫りくる凶爪。

 だが、それはマリーにはとどかない。

 間一髪でマーゴットが防ぎ、振り払う。

 ランセが気が付いた時には既に那智も交戦していた。

 2体の魔物!?

 ここまで接近されてたのか!?

 それにこの魔物・・・どっかで見た事が・・・

 考えるよりも先に身体は動いていた。

 キトとマリーを守る様に陣取る・・・が


 「・・・いや!いやあああああああああああ!!」

 「マリーちゃん!」


 錯乱したマリーは突如走り出し、それを追ってキトも走り出す。

 嘘だろおい!

 即座に後を追う・・・が、それは叶わない。

 マーゴットを抜けた魔物はランセに襲い掛かり、道を阻む。


 「てめぇ・・・どきやがれ!!」


 ランセが怒りを露わにすると同時に―――那智は呟く。


 「・・・バッツ?」


 3人に対するメメとバッツは咆哮を上げる。

最後までお読み頂きありがとうございます。もしよろしければ、いいね・評価頂けたら幸いです。

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皆様が読んでくれることが何よりの励みになりますので、至らぬ点もございますがこれからもよろしくお願いいたします。

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