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精霊憑きの冒険譚  作者: きりくま
旅立ち
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村の娘・アンジュ

初投稿です。至らぬ点も多々ございますがよろしくお願いします

 「森の奥には行くんじゃないぞ」


 父親が仕留めたイノシシを縛りながらぶっきらぼうに言い放つと、森の奥を覗いていたアンジュは苦笑いを浮かべる。


 「わ、わかってるよ。冒険者の人しか行っちゃダメなんだよね?」


 父親は黙って頷く。


 この世界には突如として迷宮・遺跡・洞窟などが現れる。

 これらの物は一般的には霊域と呼ばれているが、未だに多くの謎に包まれている。

 日々それらに挑み謎を解明する為に奮闘している者達を―――冒険者と呼ぶ。

 父親が忠告した森の奥にも先日、新たな霊域が出現していた。

 

 「さぁ、今日は帰るぞ」

 

 父親の言葉に返事をし、親子は帰路へ着く。

 小鳥がさえずり、柔らかな風が吹く小道を父親が引く荷車を後ろから押しながら考える。

 

 (何であそこにできたんだろ?あの辺りは絶好の散歩道だったのになぁ・・・)

 「止まれ!」


 突然の父の言葉に一瞬で現実に引き戻され、一気に緊張が走る。

 何?

 どうしたの?

 ただならぬ雰囲気に困惑しつつ父親に目を向けると、既に弓を構え小道脇の林に狙いを定めている。

 何がいるの?と、視線の先に目を向けるが・・・何も見えない。

 緊張が解けぬまま父親に視線を戻す・・・と、同時に父親が矢を放った。

 美しい軌道を描いた矢は木々の向こうで何かに命中。

 呻き声が聞こえたと同時に、その何かが勢いよく飛び出してくる。


 「っひ・・・」


 思わず小さく悲鳴を上げた。

 彼女が悲鳴を上げるのも無理もない。

 その生き物は獣でも人間でもない異形の物だったのだから。

 緑色の肌、真っ赤な巨大な目、口から飛び出ている牙。

 気味の悪い容姿・・・だが、それに反して額には見た事のない奇麗な石が付いていた。

 今まで見てきたどんな生き物とも違う醜悪な姿に恐怖と嫌悪が心の中に渦巻いていく。


 「・・・ゴブリンか」


 父親が放った矢が右目に当たり、出血しているゴブリンと呼ばれる生物は獣の如く雄たけびを上げ・・・怒りに身を任せ父親に向かって突進してくる。 

 迫りくる異形の化け物とその雄たけびに怯えるアンジュとは対照的に父親は冷静だった。

 彼は集中し矢継ぎ早に次々と矢を放つ。

 放った矢の1本が的確に頭に命中。

 勢いそのままにゴブリンはその場に転倒する。

 父親は警戒を解かずに少しの間弓を構えていたが・・・微動だにしない姿に安堵し歩み寄る。


 「もう大丈夫だ」


 父親は動かなくなった生物の額の石に指をかけ力を込めて引き抜く。

 生々しい音と共に石が引き抜かれ、ゴブリン身体が少しずつ霧散を始める。

 今までも父親の狩りは何度も見てきたが・・・これは明らかに異質な光景だ。

 恐怖を克服できず、父親に尋ねようとするが・・・なかなか声が出てこない。

 必死で振り絞りやっとの事でか細い声で尋ねる。

 

 「お、お父さん・・・ど、どういう・・・?」

 「まだ近くにいるかもしれない。とりあえず帰りながら話すから押してくれ」


 それだけ言い残し、父親は何事もなかったように荷車に戻り引き始める。

 アンジュも父の言葉に従い慌てて荷車を押す。

 

 少し時間が経ち、落ち着いてきたところで父親に改めて尋ねる。

 

 「ねぇ、お父さん・・・あの生き物は何なの?」


 魔物だ。と、だけ父親は答える。

 魔物・・・聞いたことのない名前だ。

 未だに嫌悪感はあったが、好奇心には勝てずに質問を続ける。


 「あんな生き物・・・この辺りで見たことないよ?」


 父親曰く、魔物は基本的に霊域に存在するが、極稀に霊域の外に現れることもあるらしい。

 つまり、先ほどの生物は先日できた霊域の影響で現れた存在ということだ。

 あんな生き物がこの辺りをうろついていると思うとあまりいい気はしないな。と、僅かに気が滅入る。

 

 「あの魔物はなんで消えちゃったの?」


 先ほどの出来事で一番の疑問を父親に聞く。

 額の石を外した時に徐々に霧散していく魔物の姿・・・この地上に生きる生物はあんな事には普通はならないはず。

 

 「あれは精霊の元に還ったんだ」


 予想外の答えに少し戸惑う。

 精霊・・・その存在は目には見えないがこの世界を導いているといわれる存在である。

 この世界は6の大陸に分かれており、1つの大陸には1体の精霊が宿っていると言う伝承もある。

 しかし、精霊と魔物が霧散したことの関係が何もわからず父親に聞き返す。


 「死んじゃったから?」

 「そうだな。だが、死んだというよりは精霊石を外したからだ」


 納得だった。確かに頭に矢を受けた時点で魔物は絶命していた。しかし、まだ姿はあった。

 石・・・いや、精霊石を外した瞬間に身体が霧散し始めたということは・・・あれが魔物にとっての生命線なのだろう。

 だが・・・『精霊の元に還る』とは?

 次々と出てくる疑問を父親に尋ねようとした時、2人は既に村の入り口まで来ていた。


 「着いたな。先に帰っていいぞ。俺はこれを解体してから行く」


 わかった、と返事をすると父は荷車を引いて村の奥へと消えて行く。

 聞きたいことはまだまだあったが・・・しょうがない。と、一旦家路につく。

 すれ違う人々と挨拶を交わしながら歩いていると、見慣れない服装の旅人らしき人物が何人か見えた。

 ほかの大陸の人だろうか?と、沸き上がる好奇心を抑えながらも横目で見るとそのうちのひとりの女性と目が合う。

 女性は20代前半くらいだろうか?空のように澄んだ青い髪を靡かせ、アンジュに向かって歩いてくると笑顔を向ける。

 

 「こんにちは、この村の子?」


 突然のあいさつに驚いたが、返事を返す。


 「村長さんの家どこかな?」


 少々不審に思いつつも場所を答えると


 「ありがとう。助かったよ」


 そう言って女性は優しげな笑みを浮かべて仲間らしき人たちと教えた方向へと歩いて行った。


 (誰だろう・・・?綺麗な人だったなぁ・・・)


 ほかの大陸の人間など見たことないアンジュにとって、彼女たちと出会い・会話したことが嬉しくて少し頬が緩む。

 その気持ちが冷めないうちに上機嫌に家へと駆け足で戻る。


 「お母さん、ただいま」


 家の奥から母親のおかえり、と言う声がする。

 父親の所在を聞かれ適当に返事をし、自室に戻る。

 ベッドに腰を下ろし、横になりながら今日の出来事を振り返る。

 

 初めて魔物と遭遇した事・異国の旅人と会った事・・・その一つ一つに思いを巡らせるうちに、アンジュは眠りに落ちていった。

最後までお読み頂きありがとうございます。もしよろしければ、いいね・評価頂けたら幸いです。

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続きが気になる方がいらっしゃいましたらブックマークをよろしくお願い致します。

皆様が読んでくれることが何よりの励みになりますので、至らぬ点もございますがこれからもよろしくお願いいたします。

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