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続きです!攻略キャラの一人の設定も出てきますよ!
誤字脱字があるかもしれませんが暖かい目で見てくだると幸いです。
数日間の療養の末、ようやくベッド生活が終了しお父様から貰った本を持ちながら大きな庭でお散歩中です。
毒草はないだろうけど、普通の花も見たいので庭師に頼み込んでお仕事を拝見させて貰うことになりました。
「アナベル様、いきなり仕事をみたいなどどうなされたのですか?」
「おとうさまからおはなのほんをもらったからきょうみがわいたの。それじゃ...だめ?」
初老の庭師は、「そんなことはありませんよ」と微笑むと庭の手入れをしはじめた。
流石お父様が見込んだ庭師、あっという間に庭はそこらへんの貴族でもかなわないだろうと言う程綺麗になった。彼は今、花の水やりをしている。
私はもっと近くで見るために、庭師の方へ歩き出した。
彼は私をチラリと見ると何事も無かったかのように再開した。
水やりが終わった彼は今度は何故か花を取り除いていく。
「ねぇ、」
「はい、なんですかな?アナベル様」
「どうしておはなをとりのぞくの?もったいないわ」
アナベルがもったいない、という言葉を使うことに彼は少し目を見張ったがすぐに答えを教えてくれた。
「アナベル様、こちらをご覧下さい」
「...ちょっとしおれている?」
「はい、朽ちてしまった花は摘まないといけないのです」
「...だから、どうして?」
「朽ちてしまった花が腐り、病気になって他の花に病気が移らないようにするためですよ。種を作る際も他に栄養が行き渡らなくなり新たな花を咲かせなれないのです」
庭師はそう言うと、私に見せてくれた朽ちかけた花を取って捨ててしまった。
私は庭師の隣で呆然と立ち、考えていた。
ゲームのアナベルはまるで先程の花のようだ。
彼女にもう振り回されないように、ヒロインと攻略キャラは『ジュエあな』から『アナベル』を取り除く。
アナベルは、前世ではあまり好きでは無かったキャラだった。
でも、彼女は必死だったのではないのか。一生懸命、愛しい人を奪われないために、自分の世界を守るために、『朽ちないように』。
取り除かれるのが怖かったのではないのだろうか。
そう思うと、とたんに悲しくなってきた。
庭師は未だに朽ちた花を取り除く。庭を綺麗に保つために。
と、まぁ...シリアスさを出してみたが、もう私は『アナベル』なので今後は好きにさせてもらう予定だ。
申し訳ないが、前の『アナベル』の心情はライターさんしか分からないのでそっとしておこう。
今はどうやって生き延びるかどうかが問題である。
庭から帰り、部屋でノートにガリガリと『ジュエあな』の攻略キャラの事を思い出しながら書く。
まずはアナベルに関わるキャラ、アナベルの『執事』と『婚約者』だ。
白の宝石の持ち主、
専属執事の『ディラン』
彼は、アナベルが十三歳になった誕生日にお父様がプレゼントと称してくれた執事なのだ。
だが、執事としての腕があまり良くないディランはよくアナベルに平手で殴られていたような。
アナベルは小さなミスでもその度にヒステリックになり「能無し」「クズ」「落ちこぼれ」など暴言を吐いていた。彼も、次第に自身の事を自傷するようになっていた。
そんな時、ヒロインがディランを肯定する言葉を掛けてくれた。最初は信じなかったディランだが何度も根気よく、ここが良い、あれが凄いなどディランに伝えたためか、次第に心を開いていくのだ。
我儘で暴力暴言も平気で行う主人と、優しく他人に対して敬意を持つ可愛らしい少女...どちらを選ぶなんて分かりきっている。
そしてディランはアナベルがヒロインを殺そうと企んでいることを知り、国に報告するのだ。
男爵令嬢とはいえ、貴族。そしてアナベルの数々の行いにアナベルは牢屋に入れられ、功績を讃えられたディランは執事と貴族という身分違いの大恋愛をしてハッピーエンドになる。
「...私からしたら全然ハッピーじゃない」
執事に裏切られるとかもう仲間なんていないようなもんじゃん。
ここはやはり改善したほうがいいな。
でも、お父様からプレゼントとして来るってことは回避なんて出来るのだろうか。
執事なんていらないって言う?いや、どっちにしろこの世界では十三になったら専属の執事を付けなければならないのだ。アッ、回避無理だ。
でもよく考えたら、私はゲームの『アナベル』ではないので大丈夫なんじゃないか...?
いや、油断してはいけない。万が一に『ディラン』がヒロインに恋したら真っ先に邪魔な『アナベル』を殺すのでは...?
専属の執事というものは主のすぐ近くにいなければならない。すなわち、殺す機会なんて沢山あるのだ。
背中からゾワゾワと悪寒が走る。
うん、やはり攻略キャラには関わらない方向で...。
すると、扉を小さくノックする音が聞こえた。
急いでノートを鍵付きの引き出しにしまい、「どうぞ」と声をかける。
扉をノックしたのは、お母様のようだ。
あれ?お母様が直々にくるなんて...私がなにかしてしまったのだろうか。
だが何故かお母様はいつも以上にご機嫌だ。
「おかあさま...?どうし...」
「出掛けるわよ、アナベル!支度をしてちょうだいな!」
そう言うと、更にニコニコになり部屋から出ていってしまった。
...それだけ!?だったら使用人にでも伝えて私に言えば良いのでは...?
お母様が去った後には、お母様付きの使用人が慌てたようについていた。
そこで私はお母様のマイペースさを思い出した。
...お母様、もしかしてさっき思いつきました?
アナベルのお母様はマイペースの行動型です。
それに振り回される使用人達...。今後はアナベルも振り回されます。