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突然!箱型サイボーグ

 目を覚ますと箱になっていた。

 

 いや正確には箱としか言いようのない謎の物体。

 

 ガラスに反射して映るのは四角い鉄の箱に細い金属パイプのような手足の生えているような物体、右手を動かすとガラスに映る箱も体から生えたパイプを振り回す、足を動かすと箱を支える支柱の一つが動く。

 

 それが自分自身の姿であるとは頭では理解できても心が理解できず暫く呆然としてしまう。


「どうなってるんだ」


 思わず出した声はスピーカー越しのようなノイズ交じりに聞こえる、というか実際に胴体の正面部に配置されているスピーカーから声が出てる、スピーカーの配置やら金属パイプの手足の動かし方が理解できてしまう。


 なんでこんなことになっているのか、思い出そうとするが記憶がはっきりしない。


 混乱し呆然としていると、急にガラスだと思っていたものに映像が表示される。


 表示されたのは安っぽいCGのキャラクター、企業の受付の人っぽいポリゴン人形。


『おはようございます、森井様』


 ポリゴンキャラに名前を呼ばれた、そうだ俺の名前は森井晶、名前を思い出すと連鎖的に他の事柄も思い出せてくる。


 俺は都内に住みコンビニでアルバイトをして生計を立てているフリーター、バイトして動画見てゲームして飯食って寝て、そんな変わらない日々を送っていた筈。


 それが何で今こうして箱に!?


『記憶に混乱が見られますね、簡単に説明いたします、あなたは未知のウィルスに感染し死亡しました』


「は?」


『その後遺体は検体に回され、あなたの遺体からウィルスの特効薬が開発されます』


「ちょ……」


『その特効薬により世界中で何億人という人々が命を救われ、その功績を称えてあなたの遺体は永久に冷凍保存される事になったのです、もう脳みそぐらいしか残っていませんでいたが』


「えぇ……」


『その後、まあ色々あって解凍されてこうやって活動可能な義体に搭載され覚醒された、という事態です』


「解らん解らん、死んでて脳だけで生き返ったけど箱で?」


『まあ一度終わった人生に続きがあったと思えば儲けたものでしょう』


「整理できない!」


『物わかりの悪い方ですね、この後もっと大事な話があると言うのに』


 突拍子も無さすぎる、これは俺の物わかりが悪いのか、そんなことないだろ。


「何?もっと大事な話って」


『折角生き返った所あれなんですが、あなたは2度目の死を迎えるかどうか瀬戸際に立たされています』


「どういう事!?」


『あなたの遺体が保存されていたこの施設、地下保管庫に泥棒が侵入してきている状態です、防衛用のシステムも壊れており誰かが助けてくれるアテも無い状況です』


「泥棒!?警察は?」


『そんなものはとうの昔に存在してません、自分の身は自分で守るしかない世の中です』


 何が起きたって言うんだ、俺が死?んでその後に政府が崩壊するような事が起きたか?どっかの国が攻めてきたとかか、胡散臭い情勢だったからあり得るな。


「そんな泥棒の相手なんて俺できないぞ」


『大丈夫です、武器は用意してあります』


 そう言うとモニター前のテーブルの天板が開き何かがせり上がってくる、そこに置かれていたのは銃。


「いつから日本は拳銃の所持が可能になったんだ!?」


『だいぶ前からですよ?』


 鎮座する銃を俺のアームが掴む、このアームを操作する感覚も何故か理解できてしまう。


『それと拳銃とはちょっと違います、ビームガンです、撃ちだされるのは鉛玉ではなくビームになります』


「は?」


 どんだけ未来!?聞いてないけどどれだけ経ってる?どれだけ未来?


「あの、今ってさ……」


『時間がありません、こちらの映像をご確認下さい』


 モニターに銃を構える男が映る、2メートルはありそうな筋肉ムキムキの大男、壁か扉のようなものにビームを撃ちまくっている、ほんとにビームだ。


『侵入者の画像です、ほかに3名の計4名が侵入してきています』


「あんなハリウッド俳優みたいなのの相手無理だろ、どっかに逃げ道とかないの」


『奴らが狙っているのは金目の物、つまりあなたの体が目当てですよ』


 言い方!


『この部屋は施設の一番奥で逃げ道はありません、生きて出るには侵入者を全員始末する必要があります』


「始末って、そんな簡単に人殺しなんかできる訳が無いだろ!」


『大丈夫です、脳の分泌物や電気信号で罪悪感など感じないように対応しますので』


「全然大丈夫じゃない!倫理観どうした?ロボット三原則的な物無いのか!?」


『そのようなもの錆びて剥がれ落ちて行きましたよ、この施設に最後に残された収容物であるあなたを守るためには若干のルール無視も許されます』


 どうなってんだ、夢にしても悪夢すぎる。


 モニターの画像が切り替わり先程とは違う人間が3人映される、どうも全員様子がおかしい。


 まず男が一人、目にペットボトルのキャップをはめている、え?義眼?


 次に女、短めのツインテールの幼い顔立ちだが両手両足がゴリっとしたロボットみたいになってる、昔ロボットプラモデルとフィギュアを差し替えてあんな感じにした画像が流行ったよね。


 最後にもう一人女、一見パンクファッションの普通の人間のようだが、体のあちこちに分割線が走っている、美少女プラモかなんかか?


 モニターの画像が最初の男に切り替わる、よくよく見るとコイツもおかしい、両手が銀色だ、アメコミマニアか?


「なにこいつら?」


『当施設に盗みに入った泥棒です』


「いやそういう事じゃなくて、見た目というか構造というか」


『あなたと同じサイボーグですね、大柄の男は両手を機械化、中肉の男性は両目とあとは恐らく脳の一部を機械化、バランスの悪い女性は両手両足を機械化、一番普通そうな女性は全身を機械化していますね』


「サイバーパンクな世界になってる!?」


『サイバーパンク、データベースに存在する言葉ですね、概ねその認識で間違いないかと思います』


 もう訳が分からない、だが今しかないこれはチャンスだ【人生で一度は使ってみたい日本語ランキング1位】を使う。


「今は西暦何年だ?」


『西暦で言うと2502年になりますね』


 思ってたよりもだいぶ未来!?あまりの衝撃に言葉が出なかった。

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